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恋のチカラ ~奇跡のひだまり~  作者: 小林汐希
第1部 いつか並んで歩いた道
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第18話 顔を上げてください




「お夕食の前に、せっかくですからお風呂入りませんか?」


「そうしようか」


 チャイムが鳴ったので、部屋付きの露天風呂の準備が整った合図だ。


「一緒に入りませんか? せっかくですし」


「俺はいいけど、ひなちゃんは大丈夫なのか? 頑張りすぎてないか?」


「大浴場だと怒られちゃいますけど、お部屋の風呂だったら浴槽の中でタオルを使っていいと書いてありましたから」


 そこまで陽咲が調べてあるのであれば構わない。


 先に陽咲を入れ、彼女の心の準備が出来たら呼んでもらうことにした。もちろん無理なら無理で構わないからと。


「剛さん、どうぞ。私の準備は大丈夫です」


 声が聞こえ、俺も服を脱ぐ。もちろん前はタオルで隠してだけど。


 陽咲は岩風呂の一番奥に座っていた。彼女も胸元にタオルを当てている。


「のぼせないように、早く洗うからな」


「大丈夫です。露天のお風呂なので湯あたりしませんから」


 自分も頭から体全体を洗い終えて、陽咲の隣に並ばせてもらう。


「初めて一緒の風呂だよな?」


「はい。もっと早くしたかったですね」


「俺たちの部屋の風呂じゃ狭いしなぁ。スーパー銭湯に行ったとしてもどうせ男女で分けられちゃうし。こういうところが一番だ」


 横に並んでいても、二人とも視線がいつもとは違うところに行っているのはお互いに気づく。


「剛さん、やっぱり男の人ですね。腕も太くて頼りになりそう」


「見た目だけな。陽咲ちゃんはちっちゃくて可愛い」


 そう、あっさりと話しているものの、入浴というシーンだとしてもお互いの裸を見たのは今回が初めてだ。


 衣服を全て脱いでタオルで隠している胸元は、手であっさり隠せてしまうほどの膨らみ。


 ウエストはやはり服を着ているときよりもさらに細く見える。あれなら普段見慣れた足の細さにも十分納得がいく。


「ひなちゃんは、怖くないかい?」


「私にもっと勇気があればなぁって思ってしまいます。逆に、剛さんは私の体を見てがっかりしませんでしたか?」


 服の上からだってあんなに華奢なんだ。今はタオルを1枚だけの姿なのだから、ほぼ無防備に近い。


「がっかりしてたら、こんなふうに隣に座ってないよ」


 正直欲求をこらえている方が大変なんだから!


「そろそろお夕飯の時間なので、私お部屋の中片づけてきますね」


 陽咲が立ち上がって、背中から後ろ半身が無防備になり、俺は思わず顔を伏せた。


「剛さん。私ね、剛さんが本当に信頼できる男性だって、今改めて思いました」


タオルを絞った水が床ではねる音がする。


「いい夕焼けです。下を向いていてはもったいない景色ですよ? 顔を上げてください」


 言われたとおりに顔を上げたとき、《《景色》》は俺の顔を上げさせるのが理由だとすぐに分かった。


 さっきまでタオルで隠していた部分も全てが俺の視界に飛び込んでくる。


「ひなちゃん……」


「ふふっ。この小児体型どうにかしたいんですけど、もう無理ですかねぇ」


 きれいな茜色の光に照らされて、それは全くいやらしさを感じさせるものではなかったし、なにより陽咲が安心した顔で笑っている。


「ひなちゃん……」


「はい?」


「きれいだ……」


「お部屋で浴衣用意しておきますね」


 満足したような、それでいて少し恥ずかしそうな声の調子で、彼女は部屋の中に入っていった。



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