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2.日常になりつつある。

大変な時間かかってしまいました。

 

「でも、『魅了』に掛かったのなら言いなりになるのでは?それなら結界を維持させる勉強をやれと言えば良かったんじゃないですか?」

 アヤネさんの言葉に、国王様とサリュウスさんは顔を見合わせて首を横に振った。


「『魅了』に掛かったのは一瞬のことで、すぐに正気を取り戻しました。それから彼女は私を避けているのです」

「次代とはいえ聖女が『魅了』に掛かったのなら、私たちも同じことになりそうですが、なぜ私たちは掛からなかったのでしょう?」


 疑問に思って言うと、枢機卿のラフォル様が説明してくれた。


「聖女には、魔力と神力が巡っておる。神力とは神からの加護で、邪なものを弾くことができるのじゃ。遠い昔、当時の王が国を傾けそうになった。悪しき女のせいでな。それを防いだのが最初の聖女だと言われておる。おそらく、二人とも初代聖女と同等の力を秘めておるのだろう。だから『魅了』魔法を無意識に防いだのだ。次代聖女については、嘆かわしいかな、神力を上げるための祈りの儀を放棄して遊び呆けている為、神力が減っているのだろう」


 枢機卿はそう言って、ため息を吐いた。


「今日、お二人をお呼びしたのは力の使い方を覚えてもらう為のカリキュラムを説明するためでもあったのですが、リリアンネ様と同じような結果になりはしないかとの懸念もあったので、その確認目的でもありました。何も言わずに試すことをして、申し訳ありませんでした」


 サリュウスさんはそう言って頭を下げた。


「あのっ!わかりました!謝罪を受け入れるので頭を上げてください!」

「ありがとうございます」

「それでは、カリキュラムの話をしようか」


 その後、カリキュラム通りに魔力操作や、そもそも魔力と神力とは、などの座学を受けた。

 別々に受けることがほとんどだったが、アヤネさんと一緒に受けることもあった。時々二人でお茶を飲んでおしゃべりしたり、何故か国王様と王妃様とお茶をすることもあった。そのときは緊張しすぎて、お茶の味もお菓子の味も覚えていない。

 王妃様はとても気さくな人で、嫁いで行った王女様のドレスをいただいたときは、本当に恐縮した。


 そんな日が続き、私たちがこの世界に来てから一ヶ月が過ぎ、国王様と王妃様とのお茶会もそんなに緊張しなくなったころ兵士が一人、慌てて駆け込んだ。

「どうした?」

 国王様が表情を厳しくして兵士に問いかけると、兵士は私たちに困惑した視線を向け、国王様を見た。

「よい。申せ」

 国王様から許可をもらい、兵士は背筋を伸ばした。

「はっ!王都郊外の森にて魔物の発生を確認!現在第三騎士団が討伐にあたっていますが、負傷者多数。応援を要請とのことです!」

「なんだと!?すぐに応援を送れ!指揮は騎士団長に任せる。すぐに大臣たちを集めろ。私もすぐに行く」

「はっ!」

「畏まりました」

 兵士と侍従たちが慌ただしく動き出す。国王様は心配そうに見つめる王妃様の手を握り、優しく微笑んだ。

「大丈夫だ。我が国の騎士団が魔物如きに負けはしない」

「陛下…」

 愛おしく見つめ合う二人の邪魔をするのは申し訳ないが、アヤネさんと頷き合い、ゆっくりと挙手した。

「あの、すみません」

「っ!ゴホン!突然のことですまぬが、二人とも部屋に戻っていてくれるか?」

「それはいいのですが、結界が張ってあるので、魔物の侵入は防げるのではないのですか?」

 国王様と王妃様は困ったように顔を見合わせて、話してくれた。

 結界は魔物の侵入を防ぐが、万能ではない。攻撃を受けるとその場所の神力が薄くなって破られ易くなるのだとか。聖女様がいたときは、都度張り直してもらっていた。しかし、現在では聖女様は亡くなられ、次代の聖女様は遊び呆けていて結界を張り直してくれず、そのため、神力が薄くなった場所が多数ある。このままではいずれ国に張られた結界は粉々に砕け、街に

魔物が溢れ出してしまう。


「そんな…っ」

「今すぐ、というわけではないから、心配せずとも大丈夫だ。そのために騎士団と魔術師団が魔物を倒しているのだから」

 安心させるように笑みを浮かべる国王様に、奥歯を噛み締める。

「あの!私、ラフォル様から癒しの術を学んでいます!大した力になれないかもしれません。でも!少しでも力になりたいんです!私も連れて行ってください!」

 アヤネさんの言葉に、国王様も王妃様も目を丸くしたが、国王様は真剣な眼差しでアヤネさんを見つめた。

「気持ちは有難いが、あなたを守るための兵を割けない。申し訳ないが…」

「それなら、私がアヤネさんを守ります!」

 国王様の言葉を遮って申し訳ないが、私だって何か力になりたい。せっかく学んでいる力があるのに、待ってるなんてできない。

「足手纏いには、なりません!」

 二人分の視線を受け止め、国王様はため息を吐いた。

「わかった。騎士団長に同行することを伝える。しかし、無茶はしないことを約束してくれ」

「はい!」


 支度をするため席を立つと、王妃様が私たちを順番に抱きしめてくれた。

「気をつけて行ってらっしゃい。帰ってきたら、またお茶をしましょう」

「はい。行ってきます」


 そして私たちは、この世界に来て初めて魔物との戦いの場に乗り込んだ。

 



 




 

ありがとうございましたっ!

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