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波止場より

「…承認しました。」

アンドロイドの人工的な声。

ここは養育惑星イオネウス。

未来通知によってこの地に導かれてきたが。

今日、この地を出る高等教育都市フェルネウスへ向かう船団に紛れ込む手はずになっている。


「あたしは、今日までここにいた。」

心のなかで呟き、演じることを定める、いつものおまじない。

大丈夫、シナリオ通りにやれる。

いつも台本通りに演じてきたじゃないの。


「わあっ。…いたた。」

船団の整列の近くでとても自然に転ける。

今、注目を浴びておけば私がこのイオネウスにいなかったことなんて誰も気づかないだろう。

運悪く転んでしまったという表情を作る。


「おい、これ。飛んできたぞ。」

やけに乱暴な子ね。仕方ないわね。

今にも泣きそうな顔を見せる。

本当は、こんな演技したくないんだけど。

遠山 さくの本気の演技。

若干6歳と思えない演技力と評されていた。

騙されない人はいない。


「おい、お前。

名前は何て言うんだよ。」

さっきの乱暴な子。

本当の名前は教えない方がいいでしょう。

遠山 さく、よ。

なんとなく、芸名の名前を答えてしまう。

この先、芸能活動を復活させるかはわからないけれど。


「さくちゃん、いいよ。目線こっちねー。」

結局は高等教育都市で芸能活動を再開させてしまった。

私はどうやら表現者としての想いを捨てきれずにいるみたいだ。

さすがは和音さんが育てただけある。


「さくちゃーん!」

あぁ、またうるさいのが出た。

ファンをうるさいとも言えないから、適度にファンサはするけれど。

高等教育都市を出たあとは育英都市に行くことになるからそれまでは。


「さようなら、フェルネウス」

偽装される経歴のため、一つ下の学年の卒業生に混ざって近隣の育英都市へ向かうためまた、波止場に立つ。

高等教育都市を卒業後は各自、最適な運命に向かって進んでいく。

私達このprojectに関わることになる人間でも最適な幸福な人生とやらは待っているのだろうか?

私達に育てられる子供は幸せな未来に進んでいけるのだろうか?

考え始めたらきりがないけど。


「はじめまして。私達の赤ちゃん。

今日から私があなたのママよ。」

資料によると、このprojectでは子供の選定は暫定的に仮親になる予定の二人の容姿を参考にして選ばれるらしい。

容姿が似ていないことで愛着が湧かない、周囲からの疑いを避けるためだという。

たしかに、腕の中ですやすやと眠る赤ん坊は私に似ている容姿をしている。

似ていないのはパートナーの特徴だろうか?

考えても仕方がない。あとはこの波止場から旅立つだけである___。



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