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隣人

「昨日、隣に越してきた浅倉と言います。

僕はルー。妻のマチルダと息子のルビーです。

ルビーの泣き声でご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします。」

山田さんのアドバイスに従って隣人に挨拶をする。

隣人はルビーと同じ年頃の子供のいる若夫婦。

わかってはいるけど俺たちより10は年上だ。


「お二人はどちらでお知り合いに?」

隣人が尋ねてくる馴れ初め。

えーと。どうしよう?

あぁ、私たちは生まれた病院でです。

生まれた日が近くて、WCCの通知を見た両親が驚いたらしくて。

それから幼なじみとして育ったんですよ。

ありもしないでっち上げをさも本当かのように話すマチルダの頬は赤らんでいて。

この表情も演技だと言うなら末恐ろしい。

中等教育を終えてすぐに、結婚したんですよ。

ルビーを抱くマチルダはどう見ても、幸せだと言う表情。

この子にも友達と言うか、幼なじみは大事だと思いますしお隣同士仲良くしましょう。


「お帰りなさいマシ。

マチルダさマ、見事なエンギ、や・まだカンムリョウでござイマス。」

山田さんの熱烈の挨拶の中、部屋に入る。

流石、エンギのクイーんデシね。

えっ?驚いた顔でルーがあたしを見る。

それは、そうよ。

だけどあの事は未來projectとの契約で言えない。

ならば。女優になるまで。


「ねぇ、ルー。あなた、部活は?

高等教育都市でいたときに入ってたでしょう?」

ああ、プログラミング部に。

もしかして?

シナリオ通りだわ。

ええ。演劇部でクイーンの役が似合うからクイーンよ。

部員からのログを拾ったみたいね。

あなたもそうだったでしょ?

ここに来る前に調査をされたことを暗に示す。


「ああ、どおりで演技が板についてたわけか。」

ええ。これで、projectのことは誰にもばれないわ。

最後は離婚して、私がルビーを引き取る形にすれば。

projectの最後のシナリオまで書いてやがるのか。

この生活に対する全てが偽りなんだと心が冷えた思いがした。


「未来確定通知のせいで普通の人生ではなくなっていっているな。」

正直な感想だった。

国は、WCCのこの致命的欠陥を直すつもりも公表するつもりもないらしい。

とんだ茶番劇だな。

シアンの瞳を伏せ目がちに物思いに更ける。

このときは、彼女が捨ててきたものを考えもせずに。


西暦9900年WCC法が制定される。

人々はこれにより人生を自分で決定することをしなくなる。

人々が幸福に豊かに暮らせる未来を願って人類の未来をコンピューターに託すことになるが、これは叶わぬ泡と消え去る。

それを壊すのは、WCCから不要な選択肢とされたルートから生まれ出でた子供たちであったこととは誰も知らない───。




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