仲直り
「喧嘩の理由?それはルーが…。」
え?俺?何かマチルダにしたっけ?
一方的に特別講義のスケジュールを投げつけてきて、マチルダの予定を無視して勝手にルビーの面倒を見ると考えたこと。
スケジュールの変更に何も気にかけずにいたこと。
マチルダがその態度に耐えかねてルーを連れて故郷である育英都市トロントへ戻ってしまったこと。
それなのにそのこと全部に気付いていない態度にイラついてしまう。
「まぁまぁ、マチルダさんはルビーちゃんを寝かせておいで?」
ルー君と華音くんは食後のコーヒーに付き合ってよ。
2人のカップにおかわりを注ぎつつ、どう話そうか思案をする。
マチルダさんに分かるようにこっそりこの会話を中継するつもりである。
「ルー君、夏休みに入る前に君に特別講義を案内したよね。
君たちみたいに若年者で子供がいる家庭のために今から学びながら目指す仕事のことを知る講義だ。」
あ、そうか。旦那さんが講義を受けられるのなら、さくも条件は同じ。
つまり、さくも受けたかった講義があるんじゃないか?そして、そのことを刑事さんは言ってるんじゃないか?
「さくも同じように特別講義を履修している?」
素晴らしいですね。本当は気づかなきゃいけないルー君が気付いていないようですが。
マチルダさんにも同じようにパティシエと経営学の特別講義の履修をお勧めしました。
ルー君が知らないのは彼女との対話が不足して欠けているから。
「そんなことだったら言ってくれればよかったし、勝手に予定に追加してくれてれば。」
夏休みは保育施設を使えないからと、夏休み始まった頃にルビー君を公園の噴水で遊ばせていた彼女にルビーちゃんを預けるか連れて講義に出ろと?
勝手に予定を追加、じゃなくて話を聞いて予定をすり合わせることが大切だったと思うよ。
「確かに、マチルダさんも言わなかったことは悪かったと思うけど。
君が講義を受けている間保育施設も使えない中で彼女に負担をかけるつもりだった?」
そんなこと、考えも至らなかった…。
(確かに、高等教育都市で関連法学を学んでいた時にそんな条文があった気がする…。)
夏休みなどの長期休暇時は保育施設の利用を中止する。
被験者が家族と過ごした時間を作るための決まり。
Project自体の本来のあり方が疑似家族と過ごす時間の体験を元に将来的に高等教育都市を出た後の進路に多彩な選択肢をもたせるための…。
「いいえ、でも。今度からマチルダの幸せが実現できるように俺も手助けしていきたい…です。」
だ、そうだけどどうする?マチルダさん?
うーん。そうですね。ルビーにパパは必要だと思うし、ケンカしてても危険なことに巻き込んでしまうかもしれない…。
許すしか、ないですね___。




