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隠し事

「…さて、と。この都市管轄の警察は追い払ったんだけど…。」

マチルダさん、こうなった理由とか話してくれるね?

いつも通りフランクなコーディネーターに戻って砕けた口調のシンさん。

でも、笑顔なのに圧力がすごい…。

今のシンさんには逆らえない。


「ここでは少し…。仕方ないので、滞在先に来てください。」

明るい表情でごまかすのも難しくなってきた。

事情聴取の途中から微かにだが足に痛みが出はじめてきた。

逃げる途中に転んでいたから、その時に傷めたのだろう。


「…こちら…です。」

…どうしよう?歩けない?力が入れられない。

だけど、嘘ついちゃった…。

怪我なんてしてないって。心配させたくなくて。 

今さら、歩けないなんて言えないよ。


「…マチルダさん?…あっ。」

ルー君、ルビー君を預かるから、マチルダさんを抱えるか背負えるかい?

不服そうにできると答えるルーに抱え上げられる。

慌てて降ろして欲しいと伝えるけど、降ろしてはくれない。


「それも後で診てもらって被害届出しておこうね。

あ、滞在先はお店だよね?場所わかってるから。」

シンさんがサラッと言ってくれたけど一拍の間何を言っているのか分からなかった。

マチルダが歩けない怪我をしてることとか、滞在先がなにかのお店であること。

言われてみれば、マチルダのことを何も知らない。

ただ、このProjectで出会って過ごすようになって…。

このProjectより以前のことは多くは語らないし、基礎的な情報には内定してから目を通して知ってるけど、それだけ。


「…シンさん、ここの鍵は一世代前のホームシステムになっているので…。」

警察手帳が効力を示さないんです、すみません…。

鍵の解錠をしながら、背中から降りて寄りかかるマチルダを支える。

今の、山田さんのシステムが最新のものだとすれば、警察手帳への対応がないこのシステムは一世代前、時代で言うと10年ほど前の代物であろう。



「ホーム、ただいま。」

無機質な声でおかえりなさいませ。さく様、と返ってくる。

システムを変更していないのか…。無言のシンさんの問いかけを躱す。

ホームにお茶の用意と医師の手配を頼み、店舗のイートイン部分に落ち着く。

店内を見渡せば、幼い頃の遠山 さくのポスターが並ぶ。


「さて。ホームの言う通り、私、遠山 さくなの。」

お茶の用意も整い、医師の到着を待つ間にこれまでルーにあえて話してこなかったこと。

隠し事ともとれるそれを話すことになる。

彼に受け入れられるか不安ではあるけれど…。

受け入れられなければ、きっと、もう帰ることはできない___。


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