犯人
「やっと見つけた、さくちゃん…。」
先にたどり着いたのは、遠山 さくの熱狂的ファンの男の方だった。
篠さんには、ルビーの居場所とシンさんにの連絡先を送ったけれど、確実ではない…。
だけど、今の私は遠山 さくであってそうじゃない。
それを認められないからこそこんな危険なことになっているんだけど。
「…だから、私は、遠山 さくじゃないわ。」
芸能のお仕事をしていた遠山 さくはお仕事として演じていた別人に過ぎない。
本当に遠山 さくとして生きていたのは和音さんと一緒に居るときだけ…。
ただの虚像に恋をして追いかけられても迷惑なだけ…。
「マチルダさん…。」
遠くからシンさんの声。
篠さんがシンさんに連絡をしてくれたのだろう。
と、シンさんに連れてこられたのかな?ルーも居る。
とりあえずこれで、危険なことからは脱せられる。
「あれは、あたしの夫なの。
彼らが呼んだようにあたしはマチルダよ。あなたが言うさくちゃんじゃない。」
わかったらつきまとわないでくれない?
そう言う前に、切りつけられそうになる。
演技のお仕事でこういう役も演じたことがあったから避けられたけど。
まともに当たっていたら…。
「マチルダさんに何するんだよ…。」
直後にどこから飛んできたか分からないくらい素早い動きでシンさんが飛び蹴りを決める。
相手の手から離れたナイフをルーが追ってきている方向に蹴飛ばして制圧してしまう。
一瞬で圧巻の制圧を見せられて腰を抜かしてしまうが…シンさんの言葉でルーの方へ逃げる。
「マチルダ、無事か?」
弱々しく頷いて見る限り力が抜けている様子以外はなんともない様子に安堵の息を漏らす。
見た目にも怪我はなさそうだけれど、いつもは強そうな彼女なだけにこの姿を見ることが辛い。
こっちだ。と、この街の警察機構の職員が駆けつけてくる。
「あぁ、応援か。
お疲れ様です。とりあえず、被疑者の身柄確保お願いします。」
警察手帳を見せながら事態の収束を目指す。
さすがに未来Projectに携わっていることは極秘任務になるわけで。
こっそりマチルダさん達には話を合わせてもらうよう頼んだ。
「…ええ、そうなんです。非番だったので、娘がハマっている女戦士の特撮モノのヒロインのグッズを探しに…。」
とりあえず。非番中に偶然マチルダを探しに来ていたルー達と知り合い行動を共にしていた。
色々と聞いていくうちに事件性があると考えて応援を呼んでいたことに。
その場は何とか切り抜けて犯人を見送ることとなった___。