初対面
「…はじめまして。高等教育都市フェルネウス家政学科の浅井 マチルダです。」
彼女と初めて会ったのは夏の暑さが引いた頃、高等教育都市フェルネウスの面談室においてだった。
彼女は未来Projectにおいて国が定めているうち、養育惑星イオネウスでの養育を受けないままで高等教育都市に入り、未来Projectに関わることになる。
機械の通称で、“例外”と規定される人物、彼らを導いていくコーディネーターを集めて組織化した国の組織が宇宙警察特別捜査課特例係。
宇宙警察の組織内でコーディネーターを一定期間務めていた経歴を持つ人間が配属されるそれは、マチルダのような例外を導くこととなる。
「宇宙警察特別捜査課特例係E12銀河系担当のシンだ。
来春から君たちの未来Projectをコーディネートすることになる。」
見目はさすが、子役時代から芸能の道を歩んできただけあって整っている。
和やかに顔合わせは進んでいって、あとは彼女の希望を聞くだけ。
「そうですね…。私の事情でパートナーに危害が加わる可能性があるとき。」
もしも、そのようなことがあれば私から話せる場合は話します。
ですが、万が一私の口が利けなくなった場合は…
「彼女はとある人物に追われているんだ。」
彼女とルビーを保護できる人間が居るのなら、僕のところに危険を知らせる警告は来ない。
彼女はそのことを知っていて、ルビーだけでも保護できる可能性がある人にルビーの居場所を伝えた。
ルビーが保護されるまでの時間を稼ぐために自らを囮にしてこの街を逃げ回っているのが今の現状だ。
「…それでっ、どこへ向かっているんですか?」
シンさんに導かれるままにルビーを抱えて走る道中。
かなり息苦しい中で伝えられたのは彼女に迫った危険について。
「…それは、マチルダさんから話があるだろう…」
彼女の過去のことを伝えるのは今じゃない。
まだ彼女は生きているし、この最悪の事態を回避するために、そのためにここに来たんだ。
彼女は向かっているのだろう。
遠山 和音が事故に遭った現場へと。
遠山 和音が育てた唯一の娘、遠山 さくとして。
「彼女は大切な人が亡くなった場所へ行っている可能性が高い…。」
その場所は僕なら彼女のデータとして持っているし、緊急時にそのデータの閲覧も許されている。
彼女はきっとそこにいる…推測だけを頼りに向かっていたのだが…。
どうやら推測は当たっていたということである___。