救出作戦
「さすが、マチルダさんだ。」
街中、人がいるところを選んで移動して人目があるから安全を確保している。
先ごろ、花屋で買い物をした履歴がある。
そして、彼女の向かう方向で関連のある場所は…。
「…和音さん。ずっと来れなくて、ごめんなさい。」
和音さんが事故死したあと、届いた通知に従うと決めてから。
色々なことを決定したり、片付けたりを国から派遣された人間やロボット主導で予定に組み込まれて。
結果的に一度も自由に過ごす時間がなく、こうして事故現場に来ることもなかった。
「あれから色々あったけど、あと何年かすればこの街でお店を再開できるからね。」
和音さんと過ごしたお店の再建が今の私の夢。
和音さんが残したお店をもう一度だけ…。
もう二度と和音さんに会えないことはわかっているけれど、それでも。
和音さんが見ていた景色を見てみたい。
あのとき、決まっていた未来を捨ててまで選んだ未来を見て和音さんは何を思ったのだろう?
「マチルダさんの居場所がわかった。」
緊急時用の許可を取って、マチルダさんのIDの使用履歴を辿った。
マチルダさんの過去については資料である程度は読み込んでいた。
マチルダさんに関連する場所で花に関連するであろう場所はこのあたりではただ一箇所。
「これから、マチルダさんと国の契約が介在する場所に向かう。
今から見聞きすることは、彼女からの発言がない限り何も見なかったことであり、聞かなかったことだ。」
彼女が国と契約する過程で捨て去ることになったものに片鱗とは言え触れようとしている。
彼女が言葉にしない限り、知らせなくていいコトだろう。
彼女が望む未来のために…。
「シンさん、万が一のときはマチルダを頼みます。」
どう考えてもシンさんのほうが大人で、マチルダのことも知らないことも知ってる。
マチルダを守りきれる自信ないから。守りきれそうな、信頼するシンさんに託したほうがいい。
それに、ルビーも居る。ルビーも守らなくちゃいけないから。
「もちろんだ。そのためにここまで来たんだから。」
ルー君は典型的な機械が育てた子供だと思っていたけれど。
考えを改めなければいけないかもしれない。
この状況で頼れるのはもう、ルー君しかいないわけで。
とりあえず、どんな手を使っても彼女、マチルダさんを守らないといけない…。
マチルダさんが幸せになれる未来を機械と一緒に紡いでいくのが、宇宙警察未来project課特例係の僕の仕事だから___。