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助けたギャルが高嶺の花だった  作者: 大豆の神
そして二人は――
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#88 その思いは横並びに

総合評価200突破、ありがとうございます。

 俺の聞きたいこと、それは”弥勒寺先輩の噂について”だ。

 矢野が以前耳にしたという男女での顔の使い分け、今年まで隣にいた花森先輩なら知らないはずはないだろう。


「うーん、そうね……たしかに弥勒寺先輩は女の子にだけ優しい人だったわ」


 俺の質問に、花森先輩はそう返す。

 すると、蓮がおずおずと手を上げてから言った。


「失礼を承知でなんですけど……そういう人と分かってて付き合ったんですか?」


「私、告白なんてされたことなかったから舞い上がっちゃって……。それに、弥勒寺先輩のその話を知ったのは、告白を受け入れてからだったから」


 花森先輩からすれば、弥勒寺先輩は上級生にあたる。当時、他学年の噂を耳にしていないのも無理はない。現に俺も、弥勒寺先輩に関する情報は一切知らなかった。


 過去に思いを馳せるように、花森先輩は胸に手を当てる。その姿を見てか、矢野が前のめりになって尋ねる。


「会長は、弥勒寺先輩のこと好きだったんですよね?」


「私に接する彼はとても紳士だったわ。だから好きだったはずよ……あの時の私は」


 そう呟いて花森先輩が見せたのは、恋する乙女の顔。実際、それがどんなものかは分からないし、見たこともない。それでも、そう形容したくなるほど美しい表情だった。

 だからこそ、改めて確認しなければいけないと感じた。


「……本当にいいんですか? 俺達に協力してしまって」


 花森先輩の話を聞いて、彼女の弥勒寺先輩に対する思いは本物だったと知った。

 今、折り合いが悪い状態でも、いつか近しい仲に戻れる日がくるかもしれない。その時に敵対していた過去があっていいのかと、俺は問いたかった。


「私は本気よ。弥勒寺先輩は女の子にとっては最高の男だと思うわ。でも、それに熱を上げて傷つく人をこれ以上増やしたくないの。その為に、恋人を捨てることの恐ろしさを教えてあげなくちゃでしょ?」


 花森先輩は私怨で俺達についてくれているわけじゃない。もっと先の、これからを守る為に力を貸そうとしてくれているのだ。そしてその動機は、俺も抱えていたものだった。

 自分達の手で、望む未来を勝ち取る。これがアニメなら、最終決戦に相応しいシナリオだと思った。


「分かりました、ありがとうございます」


「ううん。間宮君が話を持ってきてくれなかったら、私も行動を起こせなかったわ。こちらこそありがとう」


 心が通じ合った。そんな錯覚と共に、俺は差し出された手を取り、固い握手を交わす。


「それで、相談したいことっていうのは?」


「えっと……今、小野寺が弥勒寺先輩と昼食を取ってて……」


「……あぁ、風の噂で聞いたわ。朝、昇降口で誘ったとかなんとかって」


「そうなんです。もし、これからもずっと誘われるとなると、小野寺の負担が大きくなりそうで……」


「弥勒寺先輩のことだから、僕達が昼休みに中庭にいることは知っているだろうしね。逃げるっていっても、そう簡単にいかなさそうだ」


「それなら生徒会室で食べたらいいわ。ここなら、弥勒寺先輩も来られないだろうし」


 俺が頼みたかったことを、先んじて花森先輩が提案してくれた。……もしかしたら、会話の流れで察してくれたのかもしれないけど。


「できれば俺達も一緒に食べたいんですけど、いいですか?」


「もちろんよ。生徒会長になって、ずっと一人の昼食だったから賑やかになりそうで楽しみだわ」


 皆の分のカップも用意しないとね、と言って花森先輩は鼻唄を歌い始める。

 その鼻唄に小野寺を重ねながら、俺は明日からの昼食に期待を膨らませていた。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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