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助けたギャルが高嶺の花だった  作者: 大豆の神
そして二人は――
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#83 一人じゃないから

 弥勒寺先輩は、最初から小野寺を狙っていた。おそらく蓮の秘技に頼ったところで、彼の盲目は打ち破れなかっただろう。そのことが分かっただけでも大きな前進……のはずなのに、俺の胸中は全く穏やかではなかった。


「私ね、弥勒寺先輩の恋路をどうしても邪魔したいの。捨てられた女の恨みは怖いって教えてあげなきゃ……!」


 闘志に溢れる花森先輩は、俺達の力になってくれるらしい。それでも、警鐘のように鳴り響く鼓動を抑えることができなかった。

 これまで、小野寺を好いている人はいても、それが恋愛感情だという人はいなかった。そして俺は、自分自身が許婚という噂を立てられたことで、小野寺の横にいるのが当たり前だと慢心していたのだ。

 だから今回、足元をすくわれた。――弥勒寺先輩という、ライバルの存在に。


「邪魔するって、具体的にどうするつもりですか?」


「そうね……とりあえず、小野寺さんと弥勒寺先輩がくっつかなければそれでいいかな。ほら、あなたが彼氏のフリをするとか色々方法はあると思うし」


 少し前の俺だったら、この提案に舞い上がっていたかもしれない。疑似とはいえ、小野寺の彼氏役として振舞うことができる。それはきっと夢のような時間だ。

 けど、偽物じゃダメなんだ。だってすでに、弥勒寺先輩は行動を起こしている。好きな相手を自分のものにする為に。ただ隣にいるだけで満足していた俺が、偽物として立つだけじゃ意味がないんだ。


「ひ、光君……どうしたの?」


 黙りこくった俺の名前を、不意に小野寺が呼ぶ。

 ……そうだ。幸い、俺は一人ではない。相談できる人、力を貸してくれる人、そして何より――俺に『助けてほしい』と願ってくれた人がいるのだ。勝手に抱え込んで諦めるのは、もう終わりにしなきゃいけない。


「ありがとう、小野寺。もう大丈夫だ」


 この言葉の真意が、本人に届いたかは分からない。でも、どうしても口に出しておきたかった。


「花森先輩、偽彼氏作戦は多分無理です。弥勒寺先輩もきっと許婚の噂は知っています。ということは、今は偽許婚作戦の最中とも言えるわけです」


「それなのに、弥勒寺先輩は行動を起こしてる……」


「その通りです。実際、許婚とは言われてるものの、付き合ってるという話は一切出回ってませんから」


「じゃ、じゃあ、弥勒寺先輩を騙すのは無理ってこと……?」


「成功する可能性は、ほぼゼロだ」


「なら、他の角度からの作戦を考えないといけないわね……」


 ここまでは客観的な現状分析だ。そして、ここからは俺のわがまま――プライドを通す時間だ。


「そこで一つお願いがあります。俺に、弥勒寺先輩と戦う機会をください」


「戦う? 間宮君、それってどういう……」


「全校生徒の前で弥勒寺先輩に勝って、小野寺のことを諦めさせます」


 言い訳するつもりはない。俺は自分勝手な目的の為に、弥勒寺先輩と戦おうとしている。小野寺を取られたくない、小野寺の隣に立つのは自分だと証明したい、そんな男としての本能に身を任せていた。


 俺は小野寺を助ける。そして、この気持ちを彼女に伝えるんだ。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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