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#61 立会演説会、開始

 木曜日、ついに演説会が幕を開けた。

 体育館に全校生徒が一堂に会し、次期生徒会に相応しい生徒を見極める。そんな仰々しい説明は、この際不要だろう。なぜなら――


「皆! よく集まってくれたね! これより、待ちに待った生徒会選挙立会演説会を開催する!」


 全校生徒の注目を全身で浴び、マイクなしでも大きすぎるくらいの声を発するステージ上の人物――最上総一郎先輩が、選挙管理委員長を務めているのだから。

 おそらくこの選挙も、文化祭同様に盛り上げようとしているに違いない。


「この選挙は、学校の未来を決める大事なイベントだ! だからこそ皆には、今日の演説会と投票を全力で楽しんでもらいたいと思う! 特に一二年生は、まだ投票権を持っていないからね! 貴重な経験になる!」


 拳を固く握り、力強さを感じさせる最上先輩の語りに、体育館中の空気が飲まれ始める。

 ……やっぱりな。少し強引な感じもするが、最上先輩の行事に対する思いは紛れもなく本物だ。それは文化祭を通じて分かっている。


「推薦者の演説、立候補者の演説という順で全役職登壇していただき、演説が終了次第、投票に移ります。投票に関する詳しい説明は、演説終了後に行います」


 ステージ前の綾音先輩が最後にそう締めると、立候補者が階段前に整列する。ここから一人ずつ、壇上に上っていくことになるようだ。

 俺は、列の前方に佇む矢野と小野寺に目を向ける。横顔しか見えないが、二人ともリラックスしているようにも見える。それに反して俺が緊張してしまい、前に立つ翔太に声をかけてしまう。


「(な、なぁ、大丈夫だよな……)」


「(光、今さら緊張しているのかい? 今日まで準備もしてきたんだ、何も心配はいらないよ。それに、光は演説するわけじゃないだろう?)」


「(そうだな……。二人の方が、よっぽど緊張するよな……)」


「(案外そうでもないってことを、今さっき確認してたんじゃなかったのかい……?)」


 俺がしきりに候補者の列を見ていたことは、翔太にはバレていたらしい。……大人しくしておかないとな。

 もしかしたら、子どもの発表会を見守る親というのはこういう心境なのかもしれない。そう思うと、翔子さんも今日は不安なのではないだろうか。


 ――せっかくだ、明日の為に土産でも拵えるとするか。

 俺は、演説会終了後にするべきことを心に決める。為すべきことを意識したおかげか、気付けば緊張はどこかへ飛んでいた。


「それでは、まず会計の候補者から登壇してもらおう! 一人目の候補者は水元玄貴君! 推薦者は――」

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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