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#53 石橋に責められ迫られる

「俺は大丈夫だけど、蓮は部活があるだろ?」


「休むから問題ないわ。じゃあ、いつもの公園でいいかしら?」


 蓮の目的は分からないが、今日は小野寺とは帰れなそうだ。ちょうどいい、今のうちに伝えておくか。


「あぁ。小野寺――」


「ちょっといいか」


 しかし、その呼びかけは思わぬ人物によって遮られる。


「石橋……だったか? 何か用か?」


「間宮、お前に用がある」


 石橋は俺の周囲――蓮や小野寺、翔太を一瞥すると、俺の腕を掴み、ばつが悪そうに言った。


「……外で話がしたい」


 石橋に連れられるがまま、俺は放送室の外へと出る。そこで、俺と石橋は相対することとなった。大げさな表現な気もするが、なぜか石橋からは敵意に似た何かを感じるのだ。


「――それで、話ってなんだ?」


 刺激を最低限に抑えることを心がけ、俺は重々しく口を開く。

 すると石橋は、先ほどまでの挙動不審な態度から一変、腕を組んだ不遜な姿勢を見せた。


「とぼけるな。この色情魔が」


「……は?」


 口から漏れたのは、「何言ってるんだ、こいつ?」という呆気に取られたもの。

 石橋の第一声は、おそらく俺と無縁の言葉だったはずだ。だが、その言葉は間違いなく俺に向けられたものだった。


「とぼけるつもりか? 小野寺さんの許婚でありながら、それだけじゃ飽き足らず他の女にも手を出しておいて……!」


 他の女って蓮のことか? それとも矢野か?

 この時俺は、自分の感じていた石橋からの敵意が、本物であったことを悟る。それと同時に、厄介なことになったと実感したのだった。

 

 ……あの噂がこんな形で火種になるなんてな。どうする? おそらく石橋は、見た通りの石頭だ。説得はするだけ無駄だろうけど……


「その、悪いんだけど……誤解してると思うぞ……。俺は小野寺の許婚じゃ――」


「なら、なんで一緒にいるんだ?」


 それでも話して分かってもらえるなら、という希望はあっさり砕かれる。


「それは友達だからで……」


「それにしたって、随分と女子の比率が多いよな。榊原がB組の牧野と付き合ってることは知ってる。それにしたって、友達の男女比が一対三は有り得ないだろ」


 有り得るからこうなってるんですけどね……。あれか? 男女の友情は信じないとか、そういうタイプか? ……いや、今の俺の状況を考えると、男女の友情ってないのかもしれないけど。


 それはともかく、だ。どうしてこんな難癖を付けられなきゃいけないんだ? 俺に男友達がもっといれば、こんなことにはならなかったのか……? ……待てよ、蓮が翔太と付き合ってるのは知ってたんだよな。ってことは、石橋の言ってた『他の女』って、もしかして――


「――矢野のことか?」


「……!」


 ビンゴだ。石橋の表情に皺が寄る。


「……いきなりなんの話だ?」


 声を僅かに震わせ、石橋が不敵な笑みを浮かべる。


「石橋、お前矢野のことが好きなのか?」


「くっ……! 勘のいい奴め……!」


 ……いや、見てたら分かるだろ。矢野と目が合ったら勢いよく逸らしてたし。単純な動きだったけど、そこは恋する男同士。直感がそう訴えかけていたのだ。


「それが分かったからっていい気になるなよ!」


「おわっ!」


 カッとなった石橋に詰め寄られ、壁際まで追いやられる。気が付くと、石橋の顔が目と鼻の先にあった。

 逃げようにも顔の両端に手を置かれており、身動きが取れない。


 ……これって、ひょっとして壁ドン?


 ――キュン

 いや、キュンじゃねぇよ。


「間宮……」


 石橋の熱い吐息が、顔にかかってくすぐったい。

 ……なんなんだ、これ? 拷問か? そうなんだな! 許して! 許して石橋! 野球のレギュラーすごいから! ね!


「俺が書記に当選したら、矢野から離れてもらう」


 顔をさらに近づけ、俺を口説かんばかりの体勢で石橋はそう呟いた。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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