#39 羞恥心は倍にして返す
累計PV10000超え、ありがとうございます。
ユニークは3000を超えたところなので、今後も精進していきたいと思います。
そして、土日を跨いだ火曜日。立候補者の書類提出の期日が、二日前に迫った日のことだった。
「あ、えーっと……久しぶり……」
中庭に矢野が姿を現した。
「麗奈ちゃん、久しぶりだね」
「うん。……皆は元気してた?」
矢野は落ち着かなそうに、俺達――彼女の選挙に協力する面々に目を向ける。
「もちろんだよ。皆、矢野さんの力になろうと、いつもより活力に満ちているくらいだ」
「……っ! 本当に協力してくれるんだね……」
目を丸くした後、はにかんだように笑う矢野。その目元は太陽の光を受けて、きらきらと光を放っていた。
「前にも言ったでしょ。私達、麗奈ちゃんの友達なんだよ」
「そうよ。今さら他人行儀なんて、むしろ気持ち悪いじゃない」
二人はそう言って、矢野の手を取る。困った時、こうして手を握ってくれる人がいる。そのことがどれだけ心強いか、俺は知っている。
温かな空間を眺めていると、俺の視線に気付いたのか蓮がこちらを見てきた。そして、口の端を持ち上げ、「そういえば」と話を切り出した。
「光ってば、私達に頭下げてきたのよ。『矢野の力になりたいんだ』って」
「お、おい! いきなり何言ってるんだよ! そういうのは普通、秘密にしとくもんだろ?!」
「あんたの普通なんて知らないわよ。それに、秘密にしといてほしいなんて頼まれてないもの」
蓮は、さも当然かのようにそう述べると、べーと舌を出した。
こいつ……! 俺のさっきまでの感動を返してくれ!
……とは言うものの、俺がカッとなっているのは辱めを受けたからだ。俺は、友達の為に頭を下げたことを恥じる必要はないと、自分に言い聞かせた。
「まぁ、その……なんだ、蓮が言ったことは嘘じゃ……ない」
なんだ? ただ事実を肯定しただけなのに、身体がむず痒い。反射に身を任せて、俺は頬を掻いた。
「そっか……そうなんだ……」
そう呟きを零す矢野とは、目が合わない。それもそのはず、矢野と俺の目線は、人ではなく大地に向けられていたのだから。
その空気にうんざりしたのか、蓮は呆れた様子で言った。
「急にイチャイチャしないでよ」
「は、はぁ? イチャイチャなんてしてないし? それで言うなら、お前らの方が人前でイチャイチャしてるだろ!」
俺の反撃に、蓮は動揺を露わにする。
「ひ、人前って、私そんなエッチな子じゃないわよ!」
命拾いしたな、蓮。これでさっきの辱めはチャラにしてやる。これに懲りたら、二度と俺に歯向かわないことだな。
「あははっ」
矢野の口から、聞き馴染みのある声が漏れる。転校してきて日は浅いが、それでも全校生徒に彼女という存在を印象付けた、弾ける笑み。それを見て、俺達は安堵したように顔を見合わせた。
「……それじゃあ、聞いてくれるかな? 私が、生徒会に入りたい理由」
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