#25 文化祭二日目・終
「文化祭楽しかったね」
「そうだな」
閉会式を終え、俺と小野寺は撤収作業の後に下校した。
約束をしたとはいえ、こうして文化祭が終わっても一緒にいられるのは嬉しいことだ。
「そういえば閉会式のあれ、すごかったよな」
「うん。いきなりだったから、私びっくりしちゃった」
首謀者である最上先輩を除いて、おそらくあの場にいる全員が驚いたに違いない。
「まさか登壇して告白するなんてね」
閉会式の山場である実行委員長の挨拶。そこで最上先輩は、大胆にも従者に愛を告げたのだ。
『綾音君! 僕は君を愛している! 高校生活最後の文化祭を、君と一緒に過ごせて最高に楽しかった』
マイク越しではなく、肉声で伝えられたその言葉に、綾音先輩はただ一言『仰せのままに』と答えた。
主と従者に、それ以上の言葉はいらなかった。
「近くにいた人の話だと、綾音先輩も涙目になってたらしい」
「なんだかロマンチックだね」
小野寺も、そういう劇的なシチュエーションを求めるのだろうか。
ふと、そんな疑問が頭に湧く。
「でも、私は恥ずかしいかな。……大勢の前での告白なんて、考えただけで熱くなっちゃうよ」
そう言って小野寺は、言葉の通り耳の端を赤くした。
あれは最上先輩だからできたものであって、俺がそれを追いかける必要はない。俺は俺のやり方で、思いを伝えればいいのだ。
「……参考になる」
「え?」
「いや! なんでもない! あー、文化祭も終わったし、二週間後は中間テストだな」
「私、勉強には自信あるから任せて」
翔太としては、小野寺の加入は心強いだろう。自分の勉強をしながら、俺と蓮の面倒まで見ていたのだから、かなりの負担だったはずだ。
「お世話になります」
深々と頭を下げ、小野寺に誠意の姿勢を見せる。
「……私の為にやってることだから気にしないで」
「それって、誰かに教えるのも勉強になるってやつか?」
翔太も最初はそう言っていたが、さすがに一対二は厳しかったらしく、早々に発言を撤回していた。
「ううん、違うの。もし、放課後に補習が入っちゃったら、間宮君と一緒に帰れなくなっちゃうでしょ」
少し照れ臭そうな小野寺の姿に、なんとしても平均点は取ろうと心に誓った。
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