表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風に散る  作者: 紫乃森 統子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/98

第十六章 波乱の幕開け(5)

 

 

「貴様、一体瑠璃様の何を暴こうとしていた。事と次第によっては直ちに瑠璃様の指南役を撤回するぞ」

「待たんか鳴海。銃太郎殿は私の行いを窘めてくれただけじゃ! 責めるのは筋違いじゃ」

 瑠璃が慌てて鳴海と銃太郎の間に滑り込み、庇うように両腕を広げる。

「窘める? 銃太郎に窘められるようなことをなさったと?」

 詰め寄る鳴海に、瑠璃は堂々深々と肯く。

「そうじゃ! ちょっとばかり直人殿と、……まあ、うん」

「まあ、うん!? そんな、暈さねばならないような破廉恥なことが……!?」

 大層な衝撃を受けたらしく、鳴海は両手で頭を抱える。

 瑠璃も瑠璃で踏ん反り返って力強く話し始めたくせに、急に声を萎ませるものだから、一層鳴海の心証を悪くしたらしい。

「その直人とか申す者、どこの倅ですか!? この私が直ちに引っ立てて──」

「アワワワワワ待て鳴海!」

 何を想像したものか、鳴海は血相を変えて瑠璃の肩をがしりと捕まえる。

「大谷殿! 直人とは少し話をしていただけです! 何も疚しいことはありませんでした。そうだな、瑠璃?」

 見るに見兼ねて口を挟むと、瑠璃は慌ててこくこくと繰り返し頷く。

 勿論、疚しいことが本当に何もなかったかどうかは知らないが、鳴海も鳴海でいくら側近とはいえ、肩を抑え込むなど不躾にも程がある。そう思うと考えるよりも早く声が出てしまったのだ。

「何も……? ほう。銃太郎、貴様、何もなかったのに瑠璃様を詰っていたと申すのか」

「ですから私は、若いおなごが物陰で男と二人きりになるのは良くないと、そう話して聞かせていたんですよ」

「くっ……そうか、それは良くないな。銃太郎がまともなことを申すとはどうも納得がいかん」

「大谷殿!? いやそれどういう意味ですか、大谷殿よりはまともなつもりですよ!?」

「瑠璃様、甚だ無念ではございますが、ここは銃太郎の申す通り、改められませい」

「お、おう……そのつもりじゃ」

 銃太郎を妙に敵視するのと瑠璃への過保護ぶりは健在だったが、幸いそれ以上の追及もなく、鳴海は改まって瑠璃に目を向けると、声を潜めた。

「……実は少々困ったことになっておりましてな。すぐにご同行頂きたい」

 珍しく静かに困惑している鳴海の様子を、さすがの瑠璃も怪訝な眼差しで見返していた。真実、困り果てているのだろう。

 瑠璃は訝りながらも了承すると、去り際に銃太郎を見遣る。

 また何事かに巻き込まれかけているのに、その顔はにこりと微笑んでいた。

「また明日な、銃太郎殿」

「え、ああ……。また、明日」

 軽く手を振る瑠璃に対し、銃太郎もまた思わず片手を上げたその時、城壁の向こうから、下城の太鼓が打ち鳴らされるのが聴こえた。

 常に多くの人物に囲まれて慌しく、その分自由も制限されているであろう瑠璃と、明日の約束を交わせることは幸いなことのように思える。

 向けられた笑顔につられて、自身の顔も大いに緩んでいることに気が付いたのは、瑠璃が鳴海と共に去って暫く経ってからだった。

 

 

【第十七章へ続く】


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ