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ふたりぼっちは何も見えない  作者: 怠惰なペンギン
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変化

推敲に推敲を重ねた結果、元々書きたかった事を忘れてしまって、結局納得のいかない出来になってしまうのです。そのせいで無駄に時間が掛かってしまいます。難しいですね。


毎日投稿してみた時なんか生活リズムが崩れまくってホラー映画の音楽みたいになってましたし。(雑な例えですいません)


とまぁ綺麗に三日坊主をキメたということで、週一投稿に直して行きたいと思います。

 涼介が家に帰る頃には時刻が9時半を回っていた。この家には門限はないが、帰りが遅いと心配されるのは当然だろう。涼介がドアを開けるとこちらに向かってくると思わしき足音が聞こえる。

 

「涼介おかえりなさい。遅いじゃない。何してたのよ。」

 

 涼介は頭の中で必死に言い訳を考える。いつもは遅くて夜の8時には家につくが、今日はいつもより2時間程も遅くなったのだ。怪しまれても仕方がない。


「た、ただいまお母さん。ちょっと自転車のチェーンが壊れちゃってさ、歩いて帰ってきたんだよ。あ、暗くて直せなかっただけだから、明日自分で直すよ」

「それならそうと言ってくれれば迎えに行ったのに。まぁいいわ」


 理由が弱かったせいか涼介の母は怪訝な顔をしていたがひとまず納得したようだ。そのあとは夕食を先に食べてしまったことだけ伝えて寝室の方へ言ってしまった。


 涼介は深い溜め息をついて安堵した。

 両親は大体放任主義なので大したこと以外には首を突っ込んで来ない。それはそれで自由なのだが、それが今の怠惰な涼介が生まれてしまった一つの要因でもある。


 涼介は風呂で体を綺麗にしてから一人でご飯を食べた。いつもは風呂すら面倒だと思っていた涼介だが、今日は違った。


(小白ちゃんに汚いなんて思われたくないもんね)


 それから夕食を済ませて自分の部屋に戻った。

 それからいつもとは違って椅子に座り、机に向かい合った。そしてカバンからメモを取り出して中を開いた。そこには宿題などのやるべきことが期限とともに箇条書きで記入してあった。学校でのやる気がひしひしと伝わってくる。今まで家でこのメモを開いたことなんて数えるほどしかなかったのに。

 

(提出期限が明日のやつがこれか。そして……期限遅れのやつ多くね?)


 それもそのはず、いつもやっていない宿題を休み時間や授業中に急いでやっていたのだ。すべて終わらせる程の時間があるはずない。

 涼介は未提出の宿題を見て意を決した。


(課題は出すことが大切だとうちの担任も言ってたし、うん。取り敢えずもう期限が切れているのは適当に終わらせて、明日までの宿題はちゃんとやるか)


 涼介はあくびを押し殺し、両頬を叩いて活を入れた。

ペンを握る。ノートを手で抑えて文字を書く。変な汗が出てきたが我慢する。邪念が滝のように流れてくるが首を振って集中する。夜は深まっていった。







 扉に背を預け、微妙に荒くなった呼吸を落ち着かせる。紅潮した頬もだんだんと元の雪のような白さに戻っていった。

 

 だが、ついさっきの光景が脳裏をよぎった。


「――っ//」


 白坂小白は、再熱した頬と胸を打ち始めた心臓に苦しみながら後悔の念に駆られる。


(変に思われてないかな…)


 ここ数年受け答え程度でしかまともに人と話したことがない小白は、人との距離感をもわからなくなってしまっていたのだ。

 

 だがここは家なのだ。こんなところを彼らに見られたら不審がられてしまう。とにかく平静を装わなければ。


 暫くうずくまりながら落ち着きを取り戻した小白は静かに靴を脱いで、音を立てずにフローリングの床を歩く。

 リビングへの扉をそっと開いて中の様子を恐る恐る確認する。


「小白、帰ったか。結構長かったな」

「あんまり遅いといけませんよ」


 小白は少し心配そうに自分を見る夫婦を、感情の色が微塵もない真っ黒な目で見る。


 いつもは部活もやっていないので大体5時には家に着いている。あつしは部活、あゆむは塾で二人は大体7時に家に帰ってくるので七時に夕食を食べてから散歩に行くといって家を出たのだ。


「おじさん、おばさん、心配かけてごめんなさい」


 小白は頭を下げて、やはり感情のない謝罪をしてから踵を返そうとしてリビングのソファーを見た。

 そこでは敦がソファーに寝そべりながらつまらなそうにテレビを見ていた。

 こちらを一瞥もしないその様子はまるで本当に小白の存在に気づいていないようだった。

 長年の弛まぬ努力ゆえの空気感である。

 もちろん小白もそこに何もいないかのように無表情のまま視線を外して、自分の部屋がある二階を目指した。


 自分の部屋についた途端、小白はベッドに飛び込んで枕を抱きしめた。


 これほど明日を望んだことなんて一度もなかった。ただ切実に、自分が今まで心底待ち望んでいたものを躊躇いなくくれた、あの人に、ただ会いたいと、そう思った。


 一人になってより一層、鮮明に浮かんでくる。あの感触が、暖かさが、声が頭を離れない。考えるだけで幸せな気持ちが胸の内から溢れだしてくる。

 今まで曖昧で、うろ覚えだった感覚。本当はないのかもしれないと一度は疑っていたもの。

 それが確かに存在して、それを自分が享受することができる喜びを噛みしめる。


 目を閉じて、頭の中で記憶を反芻する。頬が緩み、ぽかぽかと体が熱に包まれる。そのまま深い霧がかかったかのように意識が朧げになって、底なし沼に沈んでいった。

 

 

 






 

 




 



御拝読誠に感謝致す。

些細な事でもご指摘してもらえると嬉しいです。

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