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三話:測定と講義と地獄と告白

 禅を組み、目をつぶりながら、全身に力を入れる。


「そうだ、その状態で目を開けてみろ」


 目に刺さる太陽の光を煩わしく感じながらも、俺はゆっくりと目を開く。


「おぉ…」


 そこには、緑色の靄のようなものに覆われた自分の手があった。


「《■■》………これは…また…」


 思わず、といった風にこぼれ出たネビアの言葉が印象的だった。







「では次に、魔法のランクについての講義を行う」

「は、はい!」


 ネビアが切り出してくれた木板に、羽ペンを用意して俺は人生で初めて教わる、ということをしている。


 ネビア曰く、魔法使いになるのなら最低限度必要な知識、とやらをだ。


「まず、魔法のランクというのは9個の位階、と言うものに分けられる、第1位階から第9位階だ」

「たしか…第1位階が一番弱いんでしたね」


 しかしこの、覚えるべき最低限度の知識が……凄まじく多い。

 もう既に11からなる属性魔法の特徴やら、戦闘が始まる前がいかに重要なのか、とか拘束などに代表される正常ではない状態に対する予防策やなってしまった際の対処法やらと、はっきり言ってメモを取るので精一杯である。 文字を教えてくれた今は亡き母に今、今までより一層感謝したい。 もし文字を覚えていないとどうなっていたのか………考えたくもない。


「そうだ、そして勿論、上の位階になるほど魔力も多く消費するし、覚えるのにも苦労する。 後でお前の属性である風と基本の無属性の魔法一覧をやるからきっちり第一位階から練習するように」

「はい!…………俺の属性?」


 さも当然のように、話の中に属性という概念が入ったことにコルヴォは困惑した。


「ん? あぁ、まだ言っていなかったか、まあちょうどいい、講義するとしよう」

「はい!」



「つ……疲れた………」


 木版を横に退けて、コルヴォは机に突っ伏す。

 ネビアの説明は丁寧で分かりやすいが、いかんせん今回は一気に詰め込んでいるためとても長いので疲れるのだ。


「あー…指が痛い」


 そしてそれを全て書き写した指は、きりきりと痛みを訴えていた。


「ふふ、なかなか根性があるじゃないか、そんな貴様に何故私がお前の属性を知っているか、種明かしをしてやろう」


 それを見てか、ネビアが話しかけてきた。


「え? 俺の血か何かを冒険者ギルドに持っていったんじゃないんですか?」


 属性や魔力量等は冒険者ギルド等で鑑定することが可能だと、そういう話だった筈だ。


「そんなクソめんどくさい事など一々していては手間がかかって仕方ないのでな、魔法使い、特に弟子を取るような奴は同じ効果の魔法である《全解析/オールアナライズ》という第5位階魔法を覚えることが最低限度の実力の証明、ということになっている。 覚えておけ」

「な、なるほど……


 考えてみれば道理だ、確かに毎度毎度自分の実力を確認するためだけに施設まで行かないと行けないのは面倒臭い。

 

「それでだ、その結果を踏まえてお前の修行をどうするか決定した、早速始めるぞ」

「はい!…ん? 早速?」

「そうだ、とりあえずランニングをするぞ」


 その日から、地獄が始まった。


 ~


「《衝撃玉/ショックボール》」


 ネビアがなにやら呪文を唱える。


「えっと…なにを」

「うむ、一言で言うとだな……これから逃げろ」

「え? 逃げrガァッ!?」


 爆発音が響き渡る。


「これは第一位階魔法でお前も覚えるべき魔法だ、当たると軽く押されたくらいの衝撃と爆発音が響く、一時間位にしてやるからしっかりと逃げるのだぞ」

「ひいいぃ!!………あっ」


 また、爆発音が響いた。


 ~


「なんですか …このクソ重い剣」

「うむ、それは鍛練用の木剣に重量を重くする魔法を使ったものだな、大体15kg位にしてあるからとりあえず500回程素振りを行うように」


 ネビアはそういうとすたすたと何処かに行ってしまった。


「え?………マジ?」


 そして、何とか終わらせたと同時に倒れてその日は終わった。


 ~


 そんな生活が続いたある日。


「あぁ……痛い……」


 ついに俺は筋肉痛で動けなくなった。


「はぁ………」


 コルヴォは少しだけ後悔していた。 魔法を覚えたいと、ネビアに弟子入りしたにも関わらず気づけば肉体的なトレーニングばかりで魔法は座学しか進んでいない、この現状に。


「ああ、時間になってもこないと思ったらとうとう限界が来ていたか」


 それを知ってか、ネビアがコルヴォの部屋を訪れた。


「あ、師匠…」

「よい、寝ておけ、あと師匠はむず痒いからやめろ」


 起き上がろうとするコルヴォを止め、ネビアはベッドに腰かける。


「………」

「………」


 沈黙が気まずい。


「コルヴォ」

「は、はい!」


 見れば、ネビアは何時もより少しだけ自信がなさそうな、そんな顔をしていた。


「これは言っていなかった事なのだが……」


 そして、罪悪感を抱いている事を感じさせる口調で、驚きの事実を語った。


「私はな、厳密には魔女じゃないんだ」

「………は?」


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