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信念の土

作者: 超伝説巨匠じゅんぶんが君

挿絵(By みてみん)


その瞬間は

信念の土となれ


土の湿り気を想ったか

青草の匂いはよみがえらないか

信念の土となれ


乾いた突風に顔を背けたか

硬い踵で踏みにじられたか

信念の土となれ


爪に食い込んだ砂にあきらめを感じたか

涙は枯れ果てたか

信念の土となれ


想いは伝わらなかったか

砲撃は止まないか

信念の土となれ


瓦礫の山を登ったか

砂埃で息ができないか

信念の土となれ


ママと泣き叫んでいたか

泣いていた子が静かになったか

信念の土となれ


砂交じりの涙の跡は頬にこびりついていたか

おまえの胸にこびりついたか

信念の土となれ


あの娘の乳房の匂いがしたか

失ったものは取り戻せないか

信念の土となれ


柔らかな唇が恋しいか

爆音に震えているか

信念の土となれ


地鳴りはいつまでも続くのか

夢はあったか

信念の土となれ


怖いのに「進め」と言われたか

「なぜだっ」と思ったか

信念の土となれ


神の名を口にするものは遠くにいたか

神の名を口にしたか

信念の土となれ


地面から湧き出す蟻を、片っ端から潰したことはあるか

指先で、苦しそうに蠢いていたか

信念の土となれ


「チクリ」と噛んだか

甘美な痛みだったか

信念の土となれ


おまえを見ながら息絶えたか

少年の心は泣いていたか

信念の土となれ


やさしく髪を撫でられたことはあるか

永遠を感じたか

信念の土となれ


銃の重みが肩に食い込むか

疲れているのか

信念の土となれ


信ずる者は救われるか

蒸れたブーツの中が、痒くてたまらないか

信念の土となれ


灼熱に倒れたか

誰かに抱き起こされ、また歩かされたか

信念の土となれ


口にしたことは遮られたか

臆病者と罵られたか

信念の土となれ


うつろな瞳の老婆とすれ違ったか

振り返って投げかける言葉はあったか

信念の土となれ


人は無力か

うつむいて地面ばかり見るようになったか

信念の土となれ


喉が渇いても、察して水筒を投げた友はあの空のむこうか

味方はいないか

信念の土となれ


砂丘の先は血色の砂嵐か

哀しみの槍が飛んできたか

信念の土となれ


誰かに撃たれたか

撃ったのはおまえだったか

信念の土となれ


誰かを護るためと戦ったか

誰かを護れたか

信念の土となれ


答えは見つからないか

ため息が友となったか

信念の土となれ


強大な正義に、従わされたか

伝えたい心さえみつからないか

信念の土となれ


後ろ手にしばられて、地面に転がされたか

突っ伏した身体に罵声の蹴りがめり込むか

信念の土となれ


頭を押さえつけられ、苦い砂を噛んだか

絶望色の瞳に、砂上の蟻は映ったか

信念の土となれ


「チクリ」と噛んだか

生の瞬間を感じたか

信念の土となれ


首筋に、冷たい刃の切先を感じたか

救いを求めるか

信念の土となれ


初めて自転車に乗った時を覚えているか

父はその背中を支えてくれたか

信念の土となれ


ケンカにまけた帰り道、夕陽で涙を乾かしたか

泥だらけの半ズボンを、母は黙って洗ってくれたか

信念の土となれ


言い遺す言葉はあるか


これでいいのか

これでおわりか

殺したかったか

殺されたかったか

叫びたいことがあるだろう

叫ばなければならないことがあるだろう

叫べ

叫べ

愚かなおまえの為に

愚かなすべてのものの為に


もう

聞こえないか

もう

見えないか

もう

叫べないか

もう

なにも感じないか


その瞬間

信念の土となれ


永遠となれ



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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦争とはなんぞや。命とはなんぞや。大きなものに従わされ、意に染まない殺戮を強いられる。愚かな人類。
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