聖女の最後の願い。
「この日が来た」
のんびりとした声で彼女は話す。
作り物めいた聖女の顔が、くしゃりと歪んだ。
「品格を落とさないように、ってのも大変なのです」
はぁ、とため息を吐く彼女に、俺は笑いかける。
「フィールの世話は任せておいてくれ」
クシャミを一つした彼女は、言葉を返す。
「ショルダーバックにいつも入れておく……だっけ」
「ン……そうだ」
でかいが、所詮猫だ。それくらいならできるだろう。
「あぁ、でも、時間がないな」
りんごのように赤い彼女の瞳を覗きながら俺はそう言った。
「実験だって?」
際限なく続く廊下の果てのこの部屋にふさわしい言葉に、俺は苦笑する。
「の、予定。という名前の建前だ」
人の悪意を込めたような廊下に、俺は目を伏せる。
「物騒な話ですね。少し前なら違った?」
「団決を謳っていた頃のお前なら違ったかもな」
体を見れば、あばらが浮かぶ彼女を俺は見つめる。
企てというのは、時に容赦なく誰かに牙を剥く。
「業というか、性というか、きっと私は次も変わらないです」
とうとう、俺たちは二人そろって黙り込んだ。
「はぁ……」
一つのため息で、俺たちは見つめ合う。
切れ味の良さそうな銀色が、俺の目の端に写る。
「関わりが、私達にあるなんて、あいつらには思いもよらなかったわけ……」
係官である俺と聖女の彼女、関係は薄い。
あまりにも薄い関係だったために、俺たちは最後の時にこうして話している。
「りゆうは、どうでもいいわ、最後の思い出に、私を抱いて」
まるで聖女然としないで、彼女は娼婦のように誘ってきた。
「せっかくのお誘いだけど、時間だ」
「ん」
そうして、彼女はギロチンに首をはねられた。
とりあえず縦読み。
あと、聖女様のセリフの最後をつなげると?
これ以上のストーリーはとくには考えてないけど、多分新興宗教が暴走して聖女が捕縛され、見せしめでギロッたんやろなって。