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黒のシャンタル 第一部 「過去への旅」 <完結>  作者: 小椋夏己
第一章 第三節 動き始めた運命
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17 運命

「なんだなんだ、シャンタルの次は俺が怖くなったか、ベル」

 

 ふざけるようなトーヤの言葉を聞いてもベルは返すこともできず、ぼろぼろ流れる涙を拭くこともできなかった。


「だからいじめてやんなって、こいつ結構繊細(せんさい)なんだからさ」


 泣きじゃくる妹の肩を抱いて(なぐさ)めてやる。


「だからな、さっきも言ったけどトーヤはトーヤだろ? おまえ、そりゃ最初は凶悪(きょうあく)で怖かったも知れんが、嫌がる女襲ったりもしない結構いいやつだって分かってるだろうが、もうそんなに泣くな」

「って、おい、えらい言いようだな」

 

 2人がふざけるように言い合うがベルの涙は止まらない。


「ベル、大丈夫だから」


 シャンタルも言葉を添える。


「呼び方が呼び方だから怖いように思うけど、言い換えれば神様に選ばれた人間ってことになるんだから大丈夫だよ?」

「だって、だって……」


 しゃくりあげるようにようやっと言葉を口にする。


「でもなあ、神様ってのもひどいよな、1人を選ぶために残りを殺すのかよ」

「ああ、それもちょっと違うかな」


 アランの言葉にシャンタルが答えた。


「お、神様直々(じきじき)のお言葉かよ。どう違うんだ?」

「そうだね、殺すって部分がちょっと違うかも知れない」

 

 シャンタルが言葉を選ぶ。


「冷たい言い方かも知れないけど、その人たちは最初からその時に命をなくす運命だったんだ」

「運命?」

「うん。だから1人のために全員を殺したのじゃなく、その運命の人たちと同じ船に選ばれる人を乗せたって言うのがいいのかな」

「なんでわざわざ集める必要あんだよ?」

「なんでだろうね、私にもよく分からないけど……」


 シャンタルが少し黙って考える。


「もしかしたら、残った1人に運命を知らせるため、かも」

「どう言う意味だ?」

「もしもね、何も起こらなかったら、選ばれた人はどうする?」

「そうだなあ、何も気付かなくてなんもしねえかな」

「だろ? だから、やるべきことをやらせるためにそういうことをするのかも知れないね」

「神様自身にも分かんねえのかよ?」

「神様と言っても私は神様の入れ物みたいなものだからねえ」

「なるほど、言われてみればちょっと違うのか?」

「かも?」

  

 シャンタルがクスッと笑い、アランもつられたように笑う。


「だってよ、だからもうそんな怖がるなって」

「う、う……頭では分かってんだけどよお……」


 ベルはまだしゃくりあげが止まらない。


「ほんっとにそういうのだめなんだな、おまえ。おかしいよなあ、あんだけばんばん人が死んでる戦場にいてよ、そんなん見たことあるか?」

「ねえよ!」


 大きな声でトーヤに言い返す。


「見たくもねえよ! 怖いよ!」


 ようやく怒鳴り返すぐらいには元気になったようだ。


「だけど、それだと村の方は不思議だよな。その一家の男たちが全員死ぬ運命で、残った1人も残り続けたら同じように死んで、その次は他の家族だろ? それもそういう運命だったってのか?」

「多分ね。残酷(ざんこく)なようだけど」

 

 アランの言葉にふうっとシャンタルが息を吐く。


「本当に不思議なぐらい色んなことが見えないところでつながってるんだよ。見えないだけであるんだよね。私は、シャンタルは、託宣を通じてそれをその通りに、運命のままに流れるようにしてただけだった。時々あるんだ、流れが(とどこお)るような、運命を変えてしまうような出来事が起きる可能性。それを正す、運命からはずれて本来なら起きなかったはずの悲しい出来事を止める。そのために知らせるのが役目だった。神様だって言われて大事にされてたけど、しょせん私にできたのはそのぐらいのことなんだよ。その時には分からなかったけど、離れてみてよく分かった」

 

 久しぶりの沈黙が部屋を満たした。

 すでに時刻は薄明に近くなっている。朝が来る前が一番暗い、その時刻になっている。


「まあ、そういうわけだからよ」


 トーヤが始めた。


「おまえらがこうしてこの時期に一緒にいるのも運命じゃねえのか? ってシャンタルに言ったわけだ。ベルが怖さを忘れてシャンタルにすがったのも、そうしてアランが助かったのも、そのまま一緒に行動することになったことも、運命だと思えば不思議でもねえよな」


 だがな、とトーヤが続ける。


「運命だ? そんなもんに振り回されるのは俺はごめんだ。例えそれが本当に運命ってのの仕業だとしても、俺は最後まで自分で考えて自分で動いてやる。結果的に動かされてるとしてもな。自分の頭で考えて自分で選ぶ。その結果、神様に逆らうことになっても、運命を変えてしまうことになってもな。それすらも運命だって言うのなら上等じゃねえかよ、俺はそのもっと上をいってやるよ」 

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