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第4話 モンブラン参戦

 オンライン対戦で中々結果が出せない打倒メッシ。

 頭を抱えたリョウが導き出した答えは『メンバーが少ないから』

 彼は知り合いでメンバーになってくれそうな人を頭に思い浮かべたが、いくら考えてもサッカーが得意そうな人は浮かんでこなかった。

(この際サッカーの知識は無くてもいい。とりあえずサッカーボールとバスケットボールの区別がつきそうな人に声を掛けよう)

 リョウは自分を担当している機能訓練士に声を掛けることにした。

 彼女の名前はモンブラン。

 モンブランは、今年で社会人2年目になるセミロングの黒髪が似合う若い機能訓練士だ。

 少し控えめだがマジメで会社や顧客からの評価も高い。

 彼女にとってリョウは、旧知の仲であると共に機能訓練士を目指すキッカケとなった人物でもある。

 ある日彼女が打ち合わせでリョウの家を訪れると、リョウはコントローラーを握ってWFOを楽しんでいた。

「リョウ君こんにちは! 今日はちょっと打ち合わせに来たんですけど……。 あれ? 夢中になって何をしてるんですか? サッカーゲーム?」

「あ、モンちゃん。そうそう、今サッカーゲームにハマってるんだ。モンちゃんはゲームやるんだっけ?」

「はい、昔よくお兄ちゃんがやってるのを横に座って見てました」

「そうなんだ。実は……」

 リョウは、自分が今オンラインで対戦ができるサッカーゲームにハマっていること、チームのメンバーが少なくて試合に中々勝てないこと、モンブランに自分のサッカーチームに参加して欲しいことを伝えた。

 それに対して

 モンブランの心の声(これって、確かオンラインでゲームの他にもショッピングとかできるやつよね。はぁぁ、私昔ネットショッピングで10万円分くらい洋服を衝動買いしちゃったことがあるのよね。その時パパにめっちゃ怒られて、それ以来メタバース恐怖症になっちゃったなんて、リョウ君にはとても言えないわ。もし言ったら確実にダメ女認定されちゃうもの)

「え、えっと、私、オンラインで色々やりとりするのが苦手なの。前に少し嫌なことがあったから……」

 と、斜め下に視線をそらした。

「どんな嫌なことがあったの? 良かったら教えて?」

 モンの心の声(く、食い下がって質問してきた~。でもここで私の秘密を暴露するわけにはいかないわ。どうする? そうよ、こんな時は当たり障りのない回答をして無難に話を終わらせるのよ)

「カ、カ、カジノよ! ネットカジノ! ネットカジノで大損したことがあるの!」

 モン(しまったーっ 焦って事実よりももっとタチの悪い回答をしてしまったじゃないの。もう少し考えてから発言すべきだったわ~)

 噴き出した冷や汗を拭うモンブラン。

「ああ、ネットカジノね。最近流行ってるらしいね。僕もゲームのガチャには結構熱くなる方だから気持ち分かるよ」

 モン(セ、セーフなの? 私のカジノ問題セーフだったの? っていうか、こんな発言を受け入れてくれるなんて、さすがリョウ君、もしかしたら私がリョウ君のことを思ってるみたいに、リョウ君も私の事を特別な人って思ってくれてるのかしら♡)

「で、サッカーゲームの件だけどさ、どう? 一緒にやってみない?」

 モン(ハッ、キタ。これってやっぱりデートのお誘いよね? あ~一緒にゲームしたいわ~。確かにメタバースの住人になるのは不安だけど、これは又とないチャンス。逃す手はないわ。でも簡単に引き受けてはダメ。軽い女だと思われちゃう。ここは仕方なく引き受ける風を装うのよ)

「私、サッカーは日本代表の試合を見るくらいであまり詳しくないけど大丈夫? もしかしたら足を引っ張っちゃうかもよ?」

「大丈夫。サッカーのことは僕が色々教えてあげるから」

「え、教えてくれるの? ありがとう! あと、WFOの中で参加するのはゲームだけでもいい? バーチャルシティとか行くと知らない人に話しかけられたりして怖いから」

「うん、いいよ。もし、WFOのことで心配なことがあったら、その時は僕が相談に乗るから安心して」

 モン(や、やったわ! リョウ君に私専属のナイト(護衛騎士)になる約束までとりつけた! ウフフ、そろそろ頃合いね。後は一緒にサッカーゲームしながら徐々に親密になっていくだけ……)

「リ、リョウ君がそこまでいうなら、私サッカーゲーム一緒に……」

 ここまで言うとドアが『トトトン』とノックされ、ガチャリと勢いよく扉が開かれた。

 そこに姿を現したのは、ゲーム機が山盛りに入ったおもちゃ箱を抱えた総理大臣。

「おーい! WFOやっとるかーい? お前んちのかーちゃんが勝手に上がっていいっていうから、お邪魔させてもらったぞ」

 ビックリして総理を振り返るリョウとモンブラン。なぜか背筋が伸びている。

「おっとっと、モンちゃん居たのか。リハビリ中か? どうした2人とも、水飲み鳥みたいなポーズして。目がマメ大福の黒豆みたいになってるぞ?」

 総理の大きめの声がリョウの部屋に響き渡った。

 リョウは総理に向かって

「く、来るときは連絡くらいしろよな。急にビックリするじゃないか?」

 と言うと、それに続いてモンブランも心の中で

 モン(そうよそうよ! せっかくリョウ君といい感じになってたのに。後はサッカーやる! って言うだけだったのに言えなくなっちゃったじゃないの。ていうか、水飲み鳥って何?)

 と思った。

「連絡ならしたぞLine見ろよ」

「あ、そういえばマナーモードにしたままだった。っていうか、総理からもモンちゃんにお願いしてくれないか? 一緒にWFOやろうって」

 総理はモンブランに向かって、

「え、モンちゃんサッカーゲームに興味あるの? いいね! 一緒にやろうよ! 戦術のことは、このJ(2)リーガーの俺様が指導してあげるから」

 と胸を叩くと、モンブランはモジモジしながら

(総理に頼まれなくたって、もうすでにやる気満々なんですけど)と思いながら、

「た、試しに少しだけやってみようかな?」と答えるのであった。


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