第2話 無双スキル習得!
家に帰った総理は、カップラーメンにお湯を注いだ後わずかな待ち時間にWFOのパッケージをビリビリと引きちぎって、本体ハードをガチャガチャとモニターに接続し始めた。
「ちくしょう、なんでこう機械って設定が色々面倒くさいんだろうな」
ラーメンが出来上がる前に設置を終わらせようとしたのだが、さすがに無理があった。
リョウに電話して色々教えてもらいながら数時間掛けてなんとか機器の設置を終えると、慣れない手つきでコントローラーを握った。
この時、コントローラーの上下が逆だったことは内緒だ。
ようやくゲームのスタート画面までたどり着いてサッカーの練習を始めた総理。
対戦相手のコンピューターは初心者向けレベルだったが、それでもだいぶ苦戦していた。
それもそのはず、家電も含めて説明書なんぞ、10年このかた読んだ事がないのだ。
『適当にボタンを押せばなんとかなる』を繰り返してきた彼にとって、WFOはハードルの高い遊びだった。
さらに練習を続ける総理。
なんとかパスを繋げようとボタンを押すが、全てのボールが放物線を描いている。
(この選手、随分とボールをふかす癖があるなー)
独り言を呟くが、それは総理がロングパスボタンしか使っていないからだった。
本来なら、近くの味方へはショートパスのボタン、遠くの味方へはロングパスボタン、とボタンを使い分けなければいけないのだが、機械音痴の彼は〇〇の一つ覚えみたいにロングパスボタンばかり使っていた。
しばらく練習を続けていると、やがてヘロヘロの球筋のロングパスが近くの味方につながるようになった。
『ロングパスボタンの超瞬間2度押しで、キックミスした球が近くの味方にコロコロ転がっていく』という離れ業を体得したようだ。
現実的にはショートパスボタンを押す方がはるかに効率はいいのだが、とにかくパスが通るようになり始めた。
さらにしばらく練習を続けていると、
派手な効果音と共に、画面に特殊スキル習得の文字が表示された。
≪ピンポイントロングパス≫ のスキルを習得しました!
これは『ロングパスボタン使用率70%以上』『成功率70%以上』の達成で習得できる超レアな特殊スキルだったのだが、総理はその重要性に気が付いていない。
「あれ? なんかパスが通りやすくなったような気がするなー」
と、漠然と感じているだけだった。
≪ピンポイントロングパス≫を使い続けたおかげで、重要局面でたまに発動する≪地を這う超高速ロングパス≫が発生した時も、(俺の並外れたパスセンスがようやくゲームに理解された)と、通常ありえない勘違いをするのであった。
そんなこんなで、まんまとWFOにハマってしまう総理でありました。
≪次回予告≫
翌日、総理はJ2クラブの練習を半分うわの空のまま切り上げると、ゲーム機・ソフト・モニターの3点セットを持って、いそいそとリョウの家を……