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少しオレンジがかった黄色のそれは、気泡が入って琥珀みたいで綺麗だった。
「ハチミツ?」
「そうよ。私の家は、ここから少し離れた村にあるんだけど、養蜂をしているの。とは言っても、知り合いに少し売る程度で、大きな商いはしてないの。もしハチミツが欲しいなら、セレン村を訪ねてみてね。」
「セレン村ね、覚えておきます。ありがとう。」
女性客がくれたのは、ハチミツを冷やし固めた飴らしい。その小さな塊を口に放り込むと、甘いそれがトロリトロリとゆっくり溶けていった。
「出発するぞー!」
8人乗りの馬車は、最後の1人の客が乗り込んだところで、御者の声がかかって動き出した。
ガタンッと大きく揺れ、危うくソフィアから落ちそうになったけれど、ソフィアがしっかりと抱え直してくれたので助かった。
馬車の車輪が何かに乗り上げるたびに、馬車が縦揺れするので、しっかりとソフィアの腕に捕まった。自分の足で踏ん張れないし、ソフィアの膝に乗っているので更に身体が揺れる。
揺れるたびに、お尻が膝に当たって痛い。
目的地につく頃には、ふらふらだった。揺れるわ、痛いわ、気持ち悪いわで、しばらく馬車には乗りたくない。
「さようなら、お嬢ちゃん。」
蜂蜜飴をくれた女性客が、私に手を振る。私は馬車から降りてもまだ身体が揺れているような感じがして、手を振り返すのがやっとだった。
私の身体を支えているソフィアの、服の袖を引く。
「気持ち悪い………。」
そのまま俯いていると、スッと横から白い何かを差し出された。
「大丈夫?」
少し高めだけど、少年の声。
恐らく青白くなっているだろう自分の顔をあげると、金色の髪に少し茶色がかった琥珀色の瞳の男の子が、私にハンカチを差し出していた。
私より少し身長が高いその子は、心配そうに私の顔を覗きこんだ。
「気分が悪いの?」
聞かれたけれど、これ以上口を開くと吐きそうだ。反応できずにいると、ソフィアが代わりに答えてくれた。
「馬車に酔ったようで……。」
「なら、水を貰ってきてあげる。待ってて。」
男の子は、ソフィアにハンカチを預けるとそのまま背を向けてどこかに走っていってしまった。
そのハンカチをソフィアから渡され、口元に当てる。ほんのり、甘い花の良い匂いがする。
その匂いを嗅いでいたら、少し気分が落ちついてきた。
「少し楽になったわ、いい匂いがするの、これ。」
私がソフィアに差し出すと、ソフィアはそのハンカチの香りを嗅ぎ、ややあって口を開いた。
「庶民でハンカチに香り付けをする者など、おりません。オーク街は貴族の住宅が多くある貴族街とも言われている場所です。もしかしたら、良家のご子息かもしれません。」
言われてみれば、ハンカチはシルクのような滑らかな肌触り。隅に青い糸で、R.Aと刺繍されている。
あーるえー?
金持ちの子息、R.Aのイニシャル、金髪に琥珀色の瞳。唐突に思い当たる人物が頭に浮かび、大声を出しそうになるのを堪えた。
ライアン・アンテレード。
アンテレード王国の第一王子。
ゲームで二周目にならないと攻略できないキャラクターだ。
なんでこんなところにいるの!!!




