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 ソフィアのコートの内側に身体を入れられ、ほぼ、顔だけ出している状態。実はすごく暑いけれど、出してくれなんて言えなかった。

 ソフィアが私を隠そうとしていることに、気づいているからだ。

 手を引かれて歩いているときも人目を感じたけれど、ソフィアは私を庇うように私を影にして歩いてくれていた。

 理由はこの髪だと思う。



 この国は、信仰として祀られている神様がいる。その神様の髪の色が綺麗な銀髪だったとされていて、建国王がその神様の導きを受けていたという伝承がある。どういうわけか、まれにこの国には銀に近い髪色の人が産まれるらしく、そういう人は慈しまれるらしい。



 視線の数が6に減っただけでも、御の字だ。

 私は構わずにキョロキョロと馬車の中に視線をやっていたら、隣に座っていた年嵩の女性と目があった。



「こんにちは、お嬢ちゃん。おいくつ?」



 笑うと優しげな笑い皺ができる。親しみやすそうなその様子につい口を開きそうになったけど、助け船を求めるように、後ろのソフィアを見上げた。



「5歳になります。」



 私の代わりにソフィアが答える。女性の質問は更に続いた。



「あら、そうなの。えーと………姉妹ではなさそうね?」



 姉妹というには、私とソフィアはあまりにも似ていないし、無理がある。

 他の5人の乗客も、興味を持ったのかこちらに視線を送ってきた。

 探るような視線に、ソフィアが更に答えた。



「この子は私の姉の子どもです。この子は父親似で……。姉がオーク街の療養所にいるので、お見舞いに往くところです。」


「あぁ、教会の療養所………お気の毒に……。」



 更に聞かれるまえに、話してしまうのが得策だと思ったのだろう。ソフィアが前もって考えていた設定だろうか。ちょっと気になったことがあって、ついソフィアに聞いてしまった。



「教会の療養所が、なんでお気の毒なの?」



 私が質問すると、隣の女性客以外がさっと目をそらした。隣の女性客も、この子は何も聞かされていないのねとでもいう風な、憐れむように視線を向けてくる。

 ソフィアも何も言わないので、なんとなく察した。

 教会の療養所というのは、治る見込みのない患者が入っているような療養施設なのだろう。



「ほら、これでも食べなさい。」



 なんだか場をごまかすように、女性が私に紙に包んだ何かを手渡してきた。

 紙包みの中に、オレンジ色のような黄色のような小さな塊が入っていた。まるで飴みたいな。

乗り合い馬車は、辻馬車とか駅馬車という呼び方もあります。

バスみたいなもので、決まった路線を走るんだそうです。

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