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2-37 神々の動向、次への転換②




「おい! あれ見ろよ!」



 南の大陸のとある国、見張りの兵士が指を指す方には、“巨大な人型の山”が立っている。

 天高く雲を冠に佇むその山は、実はゆっくりと歩いている最中である。


 この山は旧き神であり、“大地”の事象存在として【“超移動型迷宮”モンテクリスト】と呼ばれ畏れられる巨人山だ。

 この山の内部空間はサイズ以上に拡張されたダンジョンとなっており、独自の生態系が組まれ統率されたモンスター達がひしめき合っているらしい。


 見張りの兵士たちは、30年周期で数十km先を通るこの山を監視する役目を担っていた。



「んん……あんだよ、交代までまだ時間があんだろ?」


「いやいや、おかしいんだって。モンテクリストが進路を変えたんだ」


「はぁ?」



 酒を飲んで心地良さそうに眠っていた兵士は、同僚に促され双眼鏡を覗いてみた。

 確かに、海岸線に沿って森を踏みつけるだけだったモンテクリストは、踏み出す左足をわずかに砂浜へ落としていた。



「んだよ……ちょいフラついて森からはみ出ただけじゃねえの?」


「いやいや、ここ数百年は足跡一つズレなく周回してたんだぞ? 普通におかしいじゃねえか」


「んな事言ってもなぁ………………あれ?」



 途方もない時が立ち過ぎて、違和感を感じつつもいまいち実感が湧かない様子の兵士達。実際、この山が大陸を一周して再び同じ場所を通る様子を、人間の寿命で3回見れた者は少ないだろう。


 それでも、違和感が確信に変わる瞬間はある。





「____右足上げんの、早くね?」









 ドッ   ズズズズゥウウウウウンン!!!






「あががぎごががぎががが!!!!!」


「おべべべべばばべべべべ!!!!!」






 モンテクリストはその巨体を左へと向けて、それまでからは想像つかないペースで右足を踏み出した。

 その勢いと地響きは小規模の津波を巻き起こし、数十km離れたはずの見張り台まで珊瑚礁の破片がパラパラと降り注ぐほどだった。



 現代日本では、“力のある存在が満を持して行動する事”を『山が動いた』というらしい。


 その山は海を渡り、東の大陸を目指すだろう____“母”の気配を追って。




























『ウフフフフ、やあねぇあの(ひと)ったら』




 大渓谷の奥深く、光も届かぬ大地の裂け目の深淵に、それはいた。



 闇と同化していて、目視する事は叶わないだろう。

 しかし、少しでも目が慣れれば、吹き溜まりの中で無数に光る赤い蛇の眼が、爛々と輝いているのを感じるかもしれない。

 人間がこの目を直視すれば、ほんの数秒で複数の状態異常と疾病を負わされる事になるだろう。“彼女”の【厄災の魔眼】による視線は、ほとんどの生物にとって致死性の猛毒になり得る。



 旧き神、“暗黒”の事象存在【“深淵蛇”アンラマンユ】。

 形無き影蛇の集合体である、魔眼を司りし暗黒の女帝は、今日も光を嫌い谷底に引きこもっている。



『いくら“お母様”の気配があったとて、“我々”が光の下に身を乗り出すわけがないじゃないの。

 ……でもそうね、何十年も足踏みしてたはずの帝国軍が、私のお膝元(大渓谷)をスルーして隣国に攻め入るっていうのも癪に障るかしら』



 闇の中に光る赤目の全てが、何かを思案するように考えを巡らせ、やがてつぶやいた。



『眷属でも作ろうかしら? 確か、この間“我々”に噛みついてきたイキのいい小ヘビちゃんを捕まえてたはずね』



 影蛇の触手の末端が闇の中に飛び込み、やがて何か大きなものをずるずると引っ張り出してきた。


 それは、瀕死の重傷を負っているであろう、不恰好な蛇。手足のない太ったトカゲのような見た目をしており、日本のツチノコを想起させる。

 何より特徴的なのは尾の先についた大剣型の突起である。刃渡りがその身と同じだけあり、刃は欠けたり潰れたりとボロボロになっているが、芯までに影響はなく折れる事もなさそうだ。

 全長にして6m。亜竜に匹敵する危険度を持ち、大渓谷で出会ってはいけないモンスターの中でもトップを争う種族【ブレードクロウラー】である。



『ああ、いたいた。この子ったら、襲いかかりながら“前世の記憶がある、その通りの力が欲しい”って思念で訴えてくるのよ。可愛くてついつい嬲っちゃったわ』



 無数にある影蛇の口が、幼い少女のようにコロコロと笑う。その様子をブレードクロウラーが虫の息で睨みつける。魔眼によって動けない身体でありながらも、未だに闘志は止まないようだ。



『この子を育てて、望む姿に変えてやろうかしら。“上”で人間が戦争やってるみたいだし、突っ込ませたら面白いわよね? 長引いて疲弊したところに魔王級の怪物が暴れたら……ウフフフフ』




 旧き神は、その意思を何者にも縛られない。

 塵芥に等しい他の生物たちにどんな影響を与えるかなど、彼らにとっては些末な事である。






























「……あ?」



 とある森の中。枯れかかって苔むした古木から、掠れてしゃがれた男の声が聞こえてくる。



「懐かしい気配だな……『次元門』か? 今何年だ? 年号は変わったか?」



『次元門』はこの男にとって、非常に縁が深い代物のようだ。男は長い眠りから覚め、眠気で重い思考を巡らせる。


 他国の政府の要人たちは『次元門』の事を、「威力ばかりが戦術級にバカ高い消耗品の兵器」としか見ていない。

 しかしその本質は「異世界から勇者を召喚するための、生け贄を捧げるアイテム」である。


『次元門』に呑まれた魂10人につき、王族が管理する魔法陣と連動して1人のチート持ち勇者が召喚される仕組みになっている。

 兵器は兵器でも、「優秀な兵隊を作る兵器」である。「空間を削る」などはぶっちゃけオマケだ。



「感覚的には、まだ百年ぐらいか。やっぱり約束なんざ、時間の中で風化しちまうよな。よいしょっと」



 軽いかけ声と共に巨大な古木の幹が盛り上がり、そのまま破裂したかと思うと、中から髪と髭を長く伸ばした全裸の男が現れた。

 立ち止まり、髭に絡みついた木屑を振り払いながら、男は大きくあくびをする。



「あふぁ……んん、まだ身体が硬いな。

 さて、誰と盟約を交わしたか、アホ王族の血に思い出させてやんないとな。

 ……………あれ? 俺の剣は?」



 “不死”の事象存在【“初代勇者” ラス】は、最も若い旧神としてこの世に復活したのだった。


 ちなみに愛剣はまだ木の中である。






























 異世界でも、星は例外なく丸い。

 ただし地球と異なるのは、星の中心で渦巻く熱に、意思が宿っているところだ。



 “火”の事象存在【“炎陽玉”クトゥグア】。

 全てを燃やし全てを活かす、形なき生命体である。


 地上に行方不明だった母の気配を感じた気がしたが、彼は特に動く気がないようだ。


 彼とて既に理を超えた存在だ。自分が今いる場所から離れたとて、その熱を奪うような事はしない。

 せいぜい大地と海がひっくり返る程度の影響しかないだろうし、兄弟達もその程度で滅びるほど柔ではないはずだ。


 しかし今のクトゥグアは、金属で出来た星の核と、岩石で出来たマントルに宿っている。

 この二つはクトゥグアと共に生まれ、共に過ごして来た。意思はないが、彼にとって三つ子の兄弟のようなものだ。とてもじゃないが、離れて様子を見に行く気にはなれない。

 


 悪戯好きの母の事だ、人間にちょっかいでも出しているんだろう。

 自分もまぁ……人類からコンタクトを求めたら、力を貸してやらんでもない。



 何よりクトゥグアには、母が呼ぶなら真っ先に駆けつける自信があった。



 “魔力”の事象存在であるギャラクシーサーペントを除けば、ほぼ最初の旧神の1柱であるクトゥグア。

 そんな彼でもそこに意思が宿るなら、孤独とはやっぱり寂しいものになるのだ。


 その熱は揺らめき、再び深く眠る。

 母の気配が近づくのを、ただ静かに待ちながら。





























「【勇者召喚】だと?」



 北のノーザント大陸、さらに北方の鉱山地帯の地下に広がる、地底人達の国。

 ドワーフの王は、国唯一の神殿に足を運び、そこで得た情報に耳を疑った。



「なんだ、ワシが知らないだけで、西の大陸には危険な魔王でも出たのか」


『わかりません。しかし、気になる事があるのです』



 穏やかな女性の声で答えるのは、輝く金属の肌を持った女性型の人形だった。

 無機質かつ人間性離れした美貌を持つ彼女だが、流麗な所作と鈴のような声で、すれ違う人全てを惹きつける不思議な魅力があったのだ。


 “機械”の事象存在【“傀儡霊姫”マキナ】。

 地底王国で唯一信仰される神格の彼女は、外部デバイスである女性型ゴーレムを通しドワーフ王の対応に当たっていた。



『まず、私は旧神の中でもあなた達ドワーフのご先祖様方から作られた、後発の神格です。他の旧神のように『次元門』の発動や【勇者召喚】に感応する能力を持ち合わせてはおりません』


「まあ、お主は本体が神殿と融合しておるがゆえに、自ら身動きの取れない“引きこもりの神”だからな。外を知る手立てはあるまいて」


『ひと言多くないですか?』


「あいやすまぬ。それで、お主はどうやって察したのだ?」



 旧神は、世界から恒久的に不滅であると認められた絶対存在だ。ほとんどは創造神から直接生まれた者を指すが、稀に人類や自然現象の中から発生する事もある。

 彼女はこの内の後者であり、古の学者達が生み出そうとした“人造神格”のなれ果てだ。


 あらゆる『神とはこうである』という概念が詰め込まれた機械の塊は、気づけば全ての機械に意思を移せる“思念体”へと変化した。

 本体が壊された事は無いが仮に壊されたとしても、どこか適当な機械の中で目覚めるであろう事が理論上証明されており、やがて他の旧き神々からも同胞と認められるに至ったのだ。



『まず一つ目。召喚された勇者の中に、私が乗り移れそうな機械の気配を感じました』


「機械? 勇者は生物ではないのか? というより、勇者が複数いるというような口ぶりだが……」


『わかりません。そんなような気がする、というだけです。今言ったような事以外の情報は、そこからは得られませんでした』


「そのぶん確かな情報なのだろう? 内容が曖昧なだけに、扱いに困る……」


『二つ目は、全く同じタイミングで私の眷属から“焦り”の感情が送られた事ですね』


「【“骸骨人形(スカルゴーレム)”デウス】殿か……やけに説得力のある情報だな」


『あの子は何と言うか……トラブルに巻き込まれやすい体質ですからね』



 どれも「そんな気がする」程度の曖昧な情報だが、このマキナの神託と歴代ドワーフ王の政策により、地下棲息種族全体が大きく発展して来た歴史がある。

 なんてったってマキナは、この世界で唯一の『コンピューター』なのだから。



『そして最後……私が感知できる機械の中から、“原初の炎”の揺らめきが確認されました』


「“原初の炎”……クトゥグア、か。偶然じゃなければ、他の旧神も反応しているだろうな」


『これは、今回の【勇者召喚】が只事でない事の証明になり得ます。あくまで可能性の話ですが』


「いや、良い。充分にわかった。急ぎ世界情勢を諜報機関に探らせよう」



 そう言って王は立ち上がり、ドワーフとは思えぬ巨躯で足早に宮殿を後にする。

 その背を見送りながら、マキナは思う。自らを信奉する可愛い信徒達を守るために、自分が出来る事はあるだろうか、と。

 これは“神”として創られた彼女の命題であり、自分を自分たらしめる存在価値の思想である。



 実は、ドワーフ王には伝えていない“四つ目の情報”がある。


 “焦り”の感情のみを訴えて来た、我が子のように可愛い眷属であるデウスの存在。

 ____その影に、もう一つの気配をわずかに感じていた事を。



 だからこそ、考えてしまう。


 人を傷つけるために生んでしまい、離反されて存在を感じ取れなくなった、もう一つの眷属【“剣豪雨(ソードレイン)”エクス】の行方を。過ちを犯す前に、処分するべきか否かを。


 ____もし彼が再び現れるのなら。

 その時は、母としてではなく“神”として裁かなければならないのだろうか。




 彼女は優しすぎるのだ。“神”である事を求められ、その為だけに生まれたがゆえに。
































 ケロックが、その空間に入った瞬間。

 一歩も踏み出せぬまま、上下も前後も崩れ落ちた。



 かつてケロックが【バロック】と出会った場所、【真理の渦(ナーガリー)】は、漆黒の虚空に散りばめられた輝きの“美しさ”が印象的な場所だった。

 物理的な距離の概念は無いものの、全てが規則性を持ち、輪郭も輝きもはっきりとしていた。冷たくも整然としたその世界は、見上げる者の心を静かに凪がせる。

 「これが世界の外縁だ」と錯覚させるほどの、分かりやすい“宇宙”だったのだ。



 対して、ケロックが今いる場所は【真理の渦(ナーガリー)】と似て非なる空間だ。


 光は曲がり、影は裂け、存在しないはずの「背後の視界」が無理やり開かれる。

 目が眩むのではなく、脳が揺さぶられる。

 既に見たことがあるような、しかし一度も経験していない感覚が、吐き気とともに押し寄せた。


 それは「宇宙空間」ではなかった。むしろ宇宙という言葉を使うことすら、許されない場所。



 何より、【真理の渦(ナーガリー)】には無かった“物理干渉”がそこにはあった。

 光が歪むほどの空間の捩れ、極限まで引き伸ばされる現象が、そこにある物質の全てにまで影響するのだ。




 前後上下左右の感覚が混ざり合う中で、ケロックはスキル【五感】をフル稼働し、それでも足りない部分を【第六感】で補って、自分の肉体を保てる場所を見出した。

 重力の方向性を【重力魔法】で制御し、自らを轢き潰さんとする力場の渦をいなしていく。常に変動していくルートも【全人未踏】を使えば対応できる。



 ばら撒かれた針が地に落ちる前に、その穴を狙って糸を通すかのごとく。

 精神をすり減らし肉体を酷使しながら、ギリギリで生存ルートを踏み出して行く。




 突然吹き出す鼻血と血涙。どうやら気圧と酸素濃度が極端に低い領域に踏み込んでしまったようだ。

 人間は数十秒呼吸しなくとも問題ないし、ゾンビであるケロックならなおさら不要である。しかし、彼が無意識に使っていた【呼吸法】により、酸素濃度6%以下の空気を吸引してしまった。常人なら即気絶に至る猛毒である。


 空気だけではない。そもそもこの空間では、存在するかどうかもわからないような無数の環境が渦巻いている。






 高速化した意識の中で、この空間で生き残るほど、過酷さを理解するほど、思い知ってしまう。


 先に呑まれた故郷が、村人が、母が_____無事では済まない事を。





 背後で閉じようとする力場に巻き込まれ、右足が粉砕される。再生されるまで左足で渡らなければならなくなる。


 音の乱流に呑まれかけ、【音魔法】で即座に無音の結界を作るが間に合わず、左の鼓膜が破裂する。


 大気の断裂が迫っていたことに気づかず、左肩に裂傷が刻まれる。


 コンマ0秒にも満たない閃光を浴びて、視界の7割を奪われる。




 傷を負い、追い詰められていくごとに、動きに精細さが失われていく。






(_____今も、みんなここにいるだろうか)



 ケロックの思考速度が過去最高になった瞬間。

 それはケロックだからこそたどり着けた、正しく“走馬灯”だった。



(潰されて、膨張し、圧縮し、引き伸ばされて、分解される。物質が十も空間を跨がないうちに、分子・原子・素粒子レベルに至るまで分解される。

 つまり、村のみんなは……今もこの空間を漂っているのか)



 ケロックの進行方向では、目に見えない力場が三重に交差し重なっている。

 あそこを通れば、彼の肉体は瞬時に消滅するだろう。それでもケロックは、抵抗する気が起きなかった。



(野良のデブ猫。近所のおばちゃん。

 魚屋のムンチャゴじいさん。粉屋のグレースさん。

 鍛冶屋のガントルさん。狩人のシュペイリクさん。

 いじめっ子のヤン、エド、サンテ、グルーシャ。

 生ける屍だった僕が、人間らしい選択をした事を、村のみんなは認めてくれるだろうか?)



 徐々に引き寄せる速度が上がっていく。どうやら、力場の中心の質量が上がり、極小のブラックホールを発生させているようだ。

 目で見えなくても【第六感】でわかる。これがケロックを“点”に変える、不可視の墓標であると。



(母さんは、褒めてくれるだろうか。傍観者じゃなくて、女の子を守るヒーローになれた僕の事を)





『・・・フニちゃんの事、しっかり守りなさい。お兄ちゃんなんだから』







(_____まだだ)




 既に、抜け出せない位置まで来てしまっている。

 重力と圧力と質量が、抵抗を許さない。


 それでも、“魂”は諦める事を許さない。



(最後まで、この身が潰えても、魂が消滅するその瞬間まで_____僕がフニランを守るんだ。ルイの隣に立つんだ。

 ここで諦めたら、僕は“人間”をやめてしまう!)



 ケロックは気づかない。その発想と執念が、既に多くの人間を超えている事を。


 1%……0.1%……0.01%…………極端に下がっていく生存率の中で、それでも0%にならない限り。





 最後までケロックは、自分を轢き潰さんとする“点”から、目を離さなかった。














「_____捕まえた」




 囁くような、あどけない少女の声。


 直後、巨大な異形の手が進行方向に割り込まれ_____あんなにも絶望的だった“点”が霧散した。




 ケロックは、目以外の全ての感覚で、救世主の姿を捉えることができた。







 100mはあろうかという、犬と馬を混ぜたような全身骨格。しかしその本質は、無数の直線が編み込まれた幾何学の集合体だ。胸部に風船のような張力を維持した、物質を否定するようなエネルギーの塊が内包されている。

 その手には五指があり、ケロックを優しく受け止めて、瞬時にセーフティゾーンを展開してくれた。



 “空間”の事象存在【“次元竜”ティンダロス】。

 【“炎陽玉”クトゥグア】に並ぶ、最も旧き神々の一柱である。



 しかし“幼い少女の声”の発生源は、この神ではない。





「よーし、いーこいーこ」




 ケロックは、ボロボロの姿のままぺいっと放り出され、怪物の背中にべしゃっと不時着する。


 果たして声の主は、ケロックの霞んだ視線の先から、ぺたぺたとあゆみ寄って来る。










「ようやく会えた。よく頑張ったね」





 裸足の足元スレスレまで伸びた、長く青い髪。

 焦点が合ってるかも怪しい、ぽやんとした半目の青い瞳。

 全身を包み込むような、真っ黒な外套。


 そのままへたり込むように腰を下ろすと、青い髪が糸のようにふわりと広がっていく。


 そして、袖が余るような短い腕をめいっぱいに伸ばし、傷だらけになったケロックの頭をその胸に引き寄せた。






「初めまして、可愛いデラキアの使徒。

 デラキアが_____【混沌の青】が、あなたの魂を掬いに来たよ」





 優しく包み込むような抱擁なのに。

 胸の奥を氷の指で直に撫でられるような感覚が走る。


 ケロックにとってその腕の中は………やけに冷たく感じてしまうのだった。




ここまで読んで下さった方へ


2025/08/19から

諸事情により更新を停止しております。


わずかにでも読者がいた事を

活動への励みにしてきました。


必ず続きを書きますので、

ぜひご感想をお聞かせください。

お待ちしております。

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