あれから三年が経ち
新章突入です。
『ゾンビが出たぞーっ!』
ケロックがゾンビになってから、三年の月日が流れた。
いつもケロックの後ろにくっついていたフニラン・クロムハーツは、12才の立派な乙女へと成長を遂げた。
茶色の長い髪をストレートに伸ばし、同性同年代の子たちよりも少し背が高い彼女は、年齢よりも少し大人っぽく見えており、村人からは注目の的となっている。
そんな彼女がカゴ編みに使うワラを集める手を止めて、物騒な叫び声が聞こえる方向をキッと睨む。
もう一年以上前から、領地の森の外れでそんな叫びが聞こえてくるのだ。原因がフニランの「兄」であることは、村の誰もが知っていることだった。
「____お兄ちゃん」
覚悟を決めた顔で槍を握る。練習用のもので穂先まで木製だが、狼よけにも使われているので先端は鋭く、殺傷性も低くはない。しかし、それを向けることにもためらいはない。
なぜこんなことになってしまったのか。兄がゾンビになって誰も近寄らない森の中に潜み、このような事態に陥ったのは、妹である自分の責任であると、フニランは思っている。いつもひっついていたのに、止めることができなかった。そのことを思うと、今でも胸が痛む。
そうして一年以上が経つ今も、この戦いに決着がついたことはない。
「そうだよね、今度こそ終わらせなきゃ」
だから今度こそ、本当の意味で兄を救うために、少女は走る。
「おいクラァあああああ!!!お兄ちゃんをいじめんぢゃねぇええええ!!!!!」
「出たぞ! 妹ゾンビだ!!!」
「石投げろ石!!!」
(はいっ、『ガキ大将に踏まれる兄を救う妹』の図)
『情けないことこの上ないですね』
(いつものことなのに未だ辛辣なコメント、恐れ入ります)
ちなみにケロックは14才になっていた。もともと背が低い上に成長まで止まり、ついには背がぐーんと伸びた妹にまで抜かされた。
さらに顔色の悪さも生来? の無口さも影響し、周囲を見るその目はまるで死人。「一度死んで蘇った」程度の事情を知る村の大人たちは変わらず接してくれるが、ヒーロー願望あふれる直情的な男の子グループにとって、迫害すべき『人ならざるもの』である。
また、「騎士とか名ばかりの身分のくせに、苗字持ちで偉ぶっている」という偏見もあわさって、ケロックはいじめっ子たちの恰好の餌食となっていた。
彼らと顔を合わせるたびに、突き倒され、引き倒され、土に塗れ、足蹴にされる。
常にそばにいたのに、そんな兄の様子を見ている事しかできず、己の無力を思い知ったフニラン。
ただくっついていてはダメだ、甘えているだけでは兄を守れない。
詳細な経緯は省くが、何を思ったのかフニランは急に槍の訓練を始め、今ではこうやって駆けつけてくるようになるまでたくましくなってしまった。
(妹の目覚ましい成長に、全僕が泣いた)
『そう思うのならあなたも頑張ってください』
(こうやって妹の勇姿を眺めていたい。どうせ痛覚も感じないし)
『クズ兄極まってますね』
「ウワァアあこの女! オレらの投げた石ぜんぶ弾いた!!」
「盾持ち早く前立て!」
「あいつ本気で突いてくるんだよ、お前からもなんとか言ってくれ」
妹の本気度が増してくるに連れて、悪ガキ達もだいぶ本気で困り始めている。彼らの中で比較的体格の良いリーダー格のヤン君なんかは、いじめ相手であるケロックに対してこのように頼んでくるようにもなった。
話し方がフランクになり態度が軟化したのは、ある意味フニランの功績かもしれないと、ケロックはしみじみ思うのであった。
一応、主人公の精神が汚染されていくモンスター化ルートも考えてあります。書く機会あるかな?




