王都までの道中
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正午に村を出て、大体三時間が経過した。前に薄らと森が見え始めた。
「王都までどのくらい掛かるんですか?」
「予定通りに行けば三日かな、今日は前に見える森の入り口で野営して、明日の朝森に入る感じかな」
王都までは基本、東に真っ直ぐ行くだけだよ。と続けて教えてくれた。更に二時間経ち、やっと森の入り口に着いた。
「何か手伝いますか?」
「おぉ、頼めるかい?じゃあ、これで火を起こしといてくれ」
と火の魔道具を手渡された。燃やすための薪を手に入れるため軽く森の中へと入る。手前の森には魔物はいないそうだが念のため警戒をしながら薪を拾い始める。
「よっと、これは...これを押せばいいのか」
抱えていた薪を下ろし、渡された火の魔道具が家にあったやつと少し違うタイプだったので戸惑ったが無事火を起こすことができた。
「お、火を起こせたみたいだね。もう日も沈み始めたからご飯にしよう」
気付くと日が暮れて辺りが暗くなり始めていた。意識すると確かにお腹が空いていた。気を抜くとお腹がなりそうだ。
「まあ、野営だから豪華なご飯じゃないんだけどね」
「いえいえ、乗せてもらっているのにも関わらずご飯まで...ありがとうございます」
「しかし、君も災難だったね」
「...はい?」
「いやなに、間違っていたら悪いけど村を追い出されたんじゃないかなと」
「....よく分かりましたね」
商人...アベラルドさんには王都まで乗せてくださいとしか言っていなかったのだが、村を出る際誰も見送りに来なかったために分かってしまったのだろう。
「けれど、こんな言い方は悪いけれど奴隷として売られなくて良かったね」
もし、もっと貧しい村であれば奴隷として売られていただろう。確かにそこに関しては良かったと不幸中の幸いだろう。
「そうですね。でも両親は小さい頃に亡くなって、育ててくれたおじさんとおばさんには挨拶してきたので悔いはありません」
「そうか...ほら、出来たぞ」
アベラルドさんが話しながら作っていた、野菜スープと干し肉とパンを渡された。
「美味い!」
優しい塩だけで整えられた野菜スープとちょうどいい、塩辛くなくかつ薄くもない絶妙な塩加減の干し肉とパンがよく合う。
「口にあって良かった」
お互い完食するまで無言で食べ始め、俺は初めての野営なので見張りなどはどうするのかを聞いた。
「あぁ、見張りはしなくても大丈夫だよ」
「あれ?そうなんですか、野営は見張りが必須と聞いたことがあるのですが」
「それは、ダンジョンやもっと深い森などの場合だよ。ここは森の入り口だし、強い魔物もいないから大丈夫。それに、これがあるからね」
と馬車の中から、拳大の紫色の水晶を取り出した。
「それは?」
「これは、魔物除けの魔道具だよ。これを中心に半径七メートル以内に魔物が寄ってこないんだ」
魔物が嫌がる魔力波を出して近寄らせない仕組みなのだとか。強い魔物だと効かない奴もいるらしい。しかし、この辺はいたとしてもゴブリンやコボルト、ウルフと比較的弱い部類の魔物しかいないので、大丈夫なのだとか。移動の際もこれを起動していけばいいのではという質問をしたら、予め特殊な魔力を込められた魔道具だそうで、簡単に言えば使い捨ての魔道具なので、普段使いはせず野営をする時のみ使うのが常識なのだとか。ちなみに結構なお値段がするらしい。
「そんな魔道具まであるんですね。でもダンジョンとかもこれを使えば見張りはいらないのでは?」
「ダンジョンだと何故か効果がないんだよ」
「へえ、なるほど」
「という訳だから、気にせず今日はもう休もう」
「はい、自分も初めての旅で少し疲れました」
「寝袋はこれを使っていいよ」
「何から何までありがとうございます」
早朝、朝日が昇るとともに目が覚めた俺は昨日川に寄った時に汲んだ水を一口飲む。アベラルドさんももう起きていたらしく、こちらに気付いて挨拶をしてきた。
「ミズキくんおはよう、早いね」
「アベラルドさんも十分早いですよ」
「私も五分前くらいに起きた感じだよ」
この後昨日の野菜スープの残りを食べ、森へと入っていった。初めて森に入ったこともあり、変な緊張をしていたが何事もなく杞憂に終わった。森を抜けた後はただひたすらに東、王都まで続く馬車などが何度も何度も踏みしめ自然にできた道をいくだけとなった。二日目はあと半日で着くという場所まできたが日が暮れ始めこれ以上進むのは困難になってきたため道の脇に逸れ野営を行った。三日目も早朝に移動を開始し、無事昼頃に王都に着いたのだった。




