俺、死にます
「初心者なので、誤字脱字、矛盾などあります」
「もーう嫌だ、仕事辞めてなー」
このセリフを言うのは、何回目だろ。
そんな独り言を言い、つまらないことを考えながら会社から近くのアパートへの帰路についている。
俺の人生は、至って平凡だろう。
そこそこの大学をでて、そこそこの会社に就職した。
そして10年が経ち、今では32歳と、そろそろおじさんと呼ばれる年代に成った。ある程度の役職に就き、上司や部下との板挟みでろくに有給も取れず、嫁さんや彼女のいないアパートへ帰る頃には時計の針が天辺を過ぎているという、大勢の人が歩んでそうな人生。
まぁ、そんな人生でも人間という生き物は順応していくものだ。
いや、順応えではなく、思考放棄、諦めに近いだろう。詰まるところ自分の
自分の人生に見切りを付けているのだろう。
まぁでも、別にこんな生き方でも、悪くないと最近思い始めてきた。
自分の人生の解釈について考えていると、前方の横断歩道でスーツ姿のOLがフラフラしながら信号待ちをしている。
「あのクソハゲ係長が、何がお茶を汲んでこいだ。茶ぐらい自分で汲んでこいっつんだ!」
上司の悪口を言っている、かなり酒の匂いがする若いOLと少し距離を取りながら俺も信号待ちをする。
「クソハゲガッパ係長が、気持ちの悪い目でこっち見やがって、キモい髪型しやがって!」
可哀想に、余程ひどい上司なんだろう。だけどね、そこまで髪を貶さなくてもいと思うよ。毛だけにね!
「仕事辞めようかなー」
そんな悲しいこと言うなよ。もう少し頑張ってみろ。
諦めんなよ!!
自分のことを棚にあげて、心の中でOLを励ましていると信号が青に変わり、OLが俯きながら横断歩道を渡り始めた。
俺もそれに続こうと思っていると、左側から物凄いスピードでトラックが来ていた。
明らかにスピードが出過ぎている。居眠りでもしてんのか?
前方に視線を戻すと、横断歩道の中程でOLがヒールの踵が折れ、倒れこんでいた。
その瞬間、例えるならそう、「考えるより先に体が動いていた!」だ。
OLを抱えあげて、歩道まで渾身の力で放り投げた!
怪我したらごめんね、死ぬよりはマシだろ。
そして自分の火事場の馬鹿力について考える間もなく、眼前に死神がほくそ笑むかのように、トラックがあった。
「(あ~あ、会社に迷惑かけちまうな)」
次の瞬間、猛スピードで鉄の塊が俺の体を見事にぶっ飛ばした。
そんな、仕事のことを考えながら走馬灯なんぞ見ることもなく、俺は死んだ。
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