秋 ~意外にも心配症~
陽古の友人の正体を知ったところで、空虚が無くなるわけでもなく。気が付けば、紅葉がすっかり赤く染まっていた。いつか見ようと約束した紅葉は、今年も綺麗に色付いていてそれが時雨を辛くさせた。
遠くで紅葉を見ていると、後ろから声を掛けられた。
「お、時雨じゃん」
久しぶりに聞く声に気怠けに振り向くと、優が怪訝な顔をして時雨を見据えていた。
「時雨…?」
「ゆう…」
彼の通称を呼ぶと、優は時雨の許に駆け寄る。
「どうしたんだよ。なんか、魂が抜けたような顔しているけど」
「別に…」
「別に、じゃないだろ。お前がそうだと、調子が狂うんだよ。何があった? 言ってみろ」
どうしたのだろうか。優が自分に気に掛けるなんて。
ぼんやりとした思考で、少しだけ明日の天気が心配になった。
「話すことなんてない」
「話してくれるまでストーカーするぞ」
本当にどうしたのだろうか。いつもなら、あっそ、と不貞腐れて去ってくれるのに。
「もししたら、警察に電話するぞ」
「お前は電話しないだろ」
「……」
優の眼は本気だった。
諦めたほうがいいのだろうか。
頭が麻痺していたのだろう。
話しても信じてくれないだろう。それでも、まぁ話そうか、という気になったのは。
気の迷いだったのかもしれない。
「…ここだと人が通るかもしれないから、移動するぞ」
田舎だから人なんてあまり通らないが、念の為場所を移動したほうがいいだろう。
優が頷いたのを見て、時雨は歩き出した。




