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「白銀くん!レディ=スカーレットがいない!!」
ビーストマスターに操られている乙姫の動きに苦戦しつつジュリアスは、同じく操られているビーストの行動を封じている白銀に声を掛けた。
白銀は「チィッ!」と舌打ちし、双月をクルッと手の中で回し、そのままホルダーに収めるとジュリアスの援護に回る。
「目の前に集中しろ!」
私が向けた銃口の先、そこには深紅の髪を腰まで伸ばして黒い革製のボンテージを身につけた…ゾクリとする美人が立っていた。
「あら?勇ましいわ、あなた…あたしのタイプよ。でもごめんなさい…あたしは後ろのお嬢様に用事があるの。どいて頂戴な」
私は無言で美人の足元へ威嚇射撃をして、再び美人に向けて照準を合わせる。
なんかわかんないけど、コイツは危ないわ。
「アァン!勇ましいだけじゃないのね!あぁ!でもダメなの…ダメなのよぉ!あたしには仕事が!でもでも…!アァン!あたしはどうしたらいいの!!」
悶える美人を目の前に、私こそどうしたらいいのか悩みたくなった。
いっそ、土に還すか。
「アァン!!イク!!イッちゃうわぁ!!アァ…そんな目であたしを弄ばないでぇ!!」
ブツン…と、私の中の良心がぶった切られる。
ユグドラを車椅子から下ろし、私は軽くなった車椅子を持ち上げた。
「勝手に逝け」
悶える美人に車椅子をぶつけ沈黙させてから、私の頭はふっと冷静になった。
「ていうか…なにもの?この変態は?」
「黒羽さん…大変申し上げ難いんですけど、その人がレディ=スカーレットです」