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うぐ…っ、その通りだから反論できない。
セバスチャンの指摘に白銀も頷いて納得している、…裏切り者だわ。
ちょっとはフォローとかしてくれたっていいのに、こういう時だけは意見が合うんだからこの二人は。
…ちらっと盗み見てみると、ジュリアスも頷いていた。
どうしてか、乙姫もコクコクと頷いている。
レディ=スカーレットに関しては、
……なんかクネクネしながらほざいてる。
「…その件に関してはもういいわ。それよりなにより気になっているのは、予定より若返りすぎているんじゃないのかしらってことよ」
私の質問にセバスチャンは小さく頷き、あくまで予測としてではあるが…と前置きをして話し出した。
「これまで抑えていたものを抑えなくしてしまったことで、この状態を生み出している可能性はあるし。若い世代の白銀やジュリアス…新種の乙姫とは違って、俺はまだビーストの血が濃い。それゆえに…そこで誤差が生まれても不思議ではないな」
深く知るにはそれ相応の検査は必要だろうと、セバスチャンは肩を竦めて笑う。
それがどんな検査なのかはわからないけれど、パパがちょっと不愉快な顔をいていたから、
きっとそれは気持ちの良いものではないのだとわかった。
まぁ、人間でも検査は気持ちの良いものではないけれど。
パパが目にしてきたものは私にはわからないから、そして今のビーストがどんな立場にいるのかも、私にはとても不確かなもので。
私にとって白銀もジュリアスも乙姫もセバスチャンも、この屋敷にいるビーストの皆は家族みたいなものだ。
そう思っている私と、世界はどれだけの違いがあるのだろう。
ふっと…そんなことを考えてみると、なんだか気が遠くなってくる。
同じ人間でも、少し何かが違っているだけで……ダメなのだ。
…ビーストはもっとダメなのだ。
ダメと決めるのは良くないと思っていても、ダメだと思う人間がいる。
だから、ダメなのだ。
ダメと決め付けなければ、ダメということはないのに。
「それで…ヒツジの坊やこれからどうするつもりなのかしらぁ?…色々とやりたいこともあるわよねん?」
私が思考の波に飲まれている最中、レディ=スカーレットはセバスチャンにそう問いかけていた。
『ヒツジの坊や』と茶化して呼ぶわりには、軽い感じの声ではない。
一旦、私は思考の波から浮上して、二人のやり取りに注目した。
「そのためにお前がいるのだろう?何のために黒羽お嬢様を主人としておるのだ。それ相応の働きはしてもらうぞ。その程度の覚悟は出来ているだろう?」




