(1)動く夜の色
空の中で僕は、睡眠と覚醒を繰り返し、うつらうつらと日々を過ごしていた。
薄緑色のフラウロスはすっかり僕を溶かし込んでいて、常に自由に漂っていた。ただ、僕の思うことは大抵分かってくれるので、僕は時折フラウロスに声をかけて降下させ、下の街の様子を見に行った。睡眠にも飽きてしまうことがよくあったのである。
その世界は最初のうち真っ白で、白いワンピースを着た、長い髪の少女だけがそこに立っていた。ところがしばらくすると、どこからか背の高い大人が数人、色とりどりの服を着て現れて、彼女を迎えに来た。すると、そこにはあっという間に小さな一階建ての家が建ち、少女と大人たちはそこに入っていった。家は可愛い赤色の屋根をしていた。
それからまたしばらくすると、家の周囲には広い道が生まれ、小さな車が作られ、さらに家が建てられていった。道が伸びると、そこには更に高いビルが出来上がり、列車が走り始め、また道を増やした。
薄黄色の小学校に、水色の病院。立派なオフィスビルにテレビ塔。一旦は張り巡らされた電線は、あっという間に今度は地下に潜った。するするとビルが並び、かと思えば建て替えられていく。どれもこれも立派で、すべてが色に満ち溢れていた。
そうやって次々に広がり、大きくなっていったその世界は、確実にいつまでも触れられるものだった。
世界は固定的で、安定していて、今存在するものは別の何かが壊さない限り永遠に存在していた。