表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

3分異能バトル

作者: アメモリ

「もう昔のことなんだけどさ」

「その前置きから始まるお前の話が面白かった試しがないなあ」

「まあまあ、聞いてみなくちゃ分からないだろ? 今回は自信があるんだよ」

「へえ、そりゃ楽しみだな。続きを聞こうか」

「もう昔のことなんだけどさ……、『3分異能バトル』っていう番組があったんだ」

「テレビか? 聞いたことないけどなあ。いったいどんだけ昔の話なんだ?」

「さあ、詳しいことは僕も覚えてないよ。それでさ、とある日に僕はこれを初めて見たわけ」

「一体何をするんだ?」

「文字通りだよ。2人の異能力者が3分で戦って、どっちが強いか決めるんだ」

「ちょっと待てよ。その異能力者っていうのはなんだ?」

「ほら、人とは違う能力を持ってる人だよ。例えば口から火を吹いたり、相手の思考を読んだり」

「そんな人間がいたなんて初耳だけどな」

「僕もびっくりしたよ。でも実際に見てみると面白かった」

「確かに俺も見てみたいなあ。口から火じゃなくてコーラとか吹いたら面白そうだ」

「あんまり想像したくない絵面になりそうだけど。それでさ、僕が見たのはあれだったな。水鉄砲」

「水鉄砲? ちょっと待ってくれよ、それのどこが異能力なんだ? そもそも弱すぎるだろう。スピードが音速を超えるとかなら分かるが」

「スピードが音速を超えたりはしてなかったね。でも手から自在に水を発射できるんだ」

「なるほど、手が水鉄砲になるのか。水遊びで無双できそうじゃないか」

「まさにその通りなんだよ。水が苦手な人に対してなら最強の武器さ」

「それで、もう一人は? 戦うんだからもう一人の異能力者がいるんだろう?」

「それなんだよ。でもしばらく待ってももう一人は現れなかったんだ」

「棄権したのか? でもそれじゃ、番組的にダメじゃないか。視聴率が下がりそうだ」

「それがさ、僕もびっくりなんだけど。突然テレビが光り出したと思ったら中に吸い込まれてさ。気づいたら目の前に水鉄砲がいたってわけ」

「おいおい、夢でも見てたんじゃないか? もともとぶっ飛んでた話がさらに飛んだぞ。……いや、でももし本当だとしたら、それも何かの異能力なのかもしれないな」

「ホント、夢のようだったよ。けど戦場に出たからには本気でやろうと決意したんだ。でもさ、僕はその時気付いちゃったんだよ」

「何にだい? 本当に夢だった、っていう落ちはつまらないから許さないぞ」

「いやさ、そもそもこれは異能バトルなんだよ。出場者は各々の異能力で相手を倒すんだ。もう分かったんじゃない?」

「そんなことは知ってるさ。焦らさないで早く教えてくれよ」

「だからさ、僕も出場者なわけ。ということは実は僕も異能力者で、もしかしたら異能力が使えるんじゃないかってさ。そしたらあの水鉄砲を倒せるかもしれないって、ちょっとワクワクしたんだよね」

「ああ……、なるほどな。で、結局のところどうだったんだ? まさか本当に異能力者だったのか?」

「全然ダメ。水鉄砲野郎に散々びしょ濡れにされたよ。まったく酷いもんさ。僕は水が苦手なんだ」

「なんだよ、ちょっと期待したじゃないか。じゃあ結局のところ、何かの間違いで凡人のお前が呼ばれて、そのまま異能力者になすがままにされたってことか」

「なすがままとは失礼だなあ、僕も頑張ったんだけど。でもまあその通り。だから番組的にも大打撃さ。視聴者からのクレームが殺到、番組は僕が電撃出場した回が最終回になった」

「それは残念だな。聞いただけでも結構面白そうな番組だったのに。一回見てみたかったなあ。それで、どうなったんだ?」

「どうにも何もないよ。これで僕の話は終わり。面白かっただろう?」

「なんだ。まあ面白かったかと問われれば、久しぶりに面白い話だったよ」

「それは嬉しいなあ。きっとまた楽しい話を持ってくるよ」

「ありがとう。じゃあ俺はそろそろ寝るぞ」

「あ、待って。実はさ……、僕は一つ嘘をついたんだ」

「なんだよ? 最初から嘘のような話だったが」

「本当はさ、僕、異能力者なんだ」

「え?」

「驚くなかれ……、これは夢だったのさ」



 目が覚めた。


 俺は、異能力者ではない。

 だから俺の腰にはいつも水鉄砲がある。


 剣は危ないもんね。

 早く平和な世界にならないもんか……。


 この世界で3分異能バトルが開催されるのは、まだまだ先になりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ