第五話
書けました。
一日で書くのはこたえますね。
明日は頑張って二話書こうと思います。
やっと始まりの章が終われます。
明日は始まりの章のエピローグと第二章のプロローグを書けたら投稿します。
よろしくお願いします。
「早く行くんだ!」
隣の家に火がつき、父が叫ぶ。
もう助からないから自分を見捨てて行けと。
だが、幼い子供には理解できない。
いや、本当は心のどこかで理解していた。
ただ父と母を助けたくて、必死に家の下敷きになっている状態をどうにかしようとしていた。
「早く行きなさい! 母さん達は後で行くから!」
母が俺を逃がそうと叫ぶ。
周りはもう火の海、さらに同じ方向から津波が押し寄せてきていた。
だが、俺は動かない。
母が言ったことは嘘だとわかっていた。
そしてここから動くと、父と母がどこか遠くへ行く気がした。
だから、この場から去ることはできず、必死に動くはずのない家の残骸をどかそうとしていた。
「いやだ! 俺もここにいる母さんと父さん! 後で行くなんか言わないで一緒に行こうよ‼︎」
「「バカ言わないで(言うな)‼︎」」
今まで柔らかかった父と母の顔が険しい顔になる。
俺が今まで見たことのない顔だった。
「いい? 今すぐゆうくんはここから近くにある学校に行くの。いいわね」
母は優しく諭すように言うが、有無を言わせない力強さがあった。
「だって、そんなこと、そんなことしたら母さん達が死んじゃうよ。だから今すぐ助けるよ!」
譲れない。
大切なものを失うとわかっているから。
俺は正義の味方、ヒーローになるんだ。
テレビで観たんだ、悪いやつをいっぱい倒すヒーローに! そして、みんなを助けるんだ‼︎
「いやだ! いやなんだ! 俺は、母さん達を助けるんだ‼︎」
「馬鹿野郎! もう助からないんだ! 頼むお前だけは生きてくれ。こんな時にわがまま言うなよ‼︎」
父の顔が少しずつ、少しずつ緩んでいき、目の端が光って落ちる。
父が泣いているのを初めて見た。
俺は父を悲しますためにしているんじゃないのに!
「祐也、行くんだ。行け! 生きて世界の果てを旅してみろ! きっと俺たちより大切な人に会える! さぁ、俺たちにかまわず、行け‼︎」
父と母の悲しむ顔を見て、胸が苦しい。
俺はこんな顔をみたかったんじゃない。
父と母を助けたい。
だけど自分も生きたい、死にたくない。
小さいながらも思う。
今のままで苦しめるだけだ、父と母を楽にさせたい。
俺がここから去れば楽になってくれる。
なら行こう、行けば父と母が楽になれると信じて……。
だが、心の弱さが決断を鈍らせる
助けたい、助からない状況で、こんなのわがままだ! 父と母を困らせるな!
「わかった。行くよ」
出てこない言葉を喉の奥から絞り出す。
これでいいんだ、これで……。
「ありがとう、ゆうくん。辛くても必死に生きるのよ」
「かんばれよ、祐也! お前の側でいつも見守っているからな!」
俺は父と母に背を向ける。
「ゆうくん」
振り返らずに聞く。
「これだけは守って。これからの人生を自分のためだけに生きるって。」
「うん」
「そしてもう一つ、ヒーローになりたいんでしょう? だからって無理はしてはダメ! 大切なものを見つけて、大切なものだけを守りなさい。大切なものを失わないために。」
「わかった」
「祐也。大切なものを失わないために力をつけろ。強い力だ。だが、使い方には注意するんだ。自らの手で大切なものを傷つけるぞ。いいな、力は濫用するな。大切なものを守るために使うんだぞ? そのために努力もしろよ? いいな?」
「わかったよ、二人とも」
頷くと走り出した。
悲しみと絶望で押し潰されそうになる。
「「最後に、愛してるわよ(ぞ)」」
五メートルくらい進んだところで聞こえたので振り返った。
だが、家があった場所は火に包まれもう二人の姿は見えなかった。
ただその姿は、なにも振り返らずに行けと言っているようだった。
そこからは振り返らず、必死に駆け抜けた。
涙がでているが気にせず走った。
そこは地獄だった。
黒焦げた死体、家の下敷きになり必死に叫ぶ声、落ちてきたものに潰された死体。
そこには死の世界がひろがっていた。
死体を踏んで転けそうになりながらも走った。
助けを求める声を無視して走った。
自分はヒーローになる、その言葉が頭を駆け巡り、自己矛盾に食い潰され吐き気が襲う。
ただ生きるために、他を見捨てて走った。
なぜ、どうして、こんなにも苦しまなければならないのか。
なぜ自分は彼らを助けられないのか。
彼らを救う方法はなかったのか。
頭をずっと駆け巡っていた。
“本当に大切なものをだけを守りなさい”
もう遠くへ行ってしまった人の声を思い出す。
そうだ、これは俺の大切なものじゃない。
だから見捨てて行ける。
最低だが、俺は母の言葉で割り切れた。
多分、この言葉は優しい息子を生かすために送ったんだろう。
“ヒーローはね、助ける以前にいろんな人を見捨てているんだよ”
昔母が言ったことを思い出す。
全体を救うことは不可能だと。
母は大切なものを失って、関係のない他を助けるくらいなら、必死に大切なものを守れと言ったのだ。
今大切なものは父と母が託した言葉だ。
俺はそう思い、必死に生き延びた。
心が壊れようとも、体が朽ち果てようとも……
「おーい、起きなさい」
五月蝿いなぁ。
俺を邪魔するやつはいないはずだ。
俺は昔のことを思い出して不機嫌なんだ。もうちょっとねさせろ。
「ねぇ、起きてって!」
しつこいなぁ。俺はまだ寝てたいんだ。
「起きろなさいって言ってるでしょ‼︎」
「アウ‼︎」
ゴーン
下半身(一部)に強烈な痛みが襲い、一気に目がさめる。
誰だ! 寝込みに人の急所を攻撃する奴は‼︎
「ふふん♪ やっと起きた!」
黒髪の女が誇らしげに立っていた。
やばい、あいつの顔を無性に殴りたい。
「起きたのねじゃねーよ! なに見ず知らずの、寝てる人の股間思いっきり蹴る奴がいるんだよ‼︎」
「だって起こしても起きないからじゃない!それに見知らずじゃないわよ」
不機嫌に「まったく、私に起こされてありがたく思いなさい」なんて漏らしてやがる。
こいつ、もう我慢できねぇ! 俺は男女平等主義だ! 女でもかまわず殴ってやる‼︎
「そんな怖い顔しないでよ。これから祐也とあたしたちはパートナーなんだからさ」
「ん? どういうことだ?」
「この世界はよく分からないでしょ?だから勇者にはアクイエルと呼ばれる過去、未来、現在どの時間からでもこの世界の英雄などを呼び寄せ、勇者に契約させ、勇者の従者として支援させる者がいるの」
「てことはお前はアクイエルなのか?」
ええと女は胸を張る。
嘘だろ、俺はこんな奴と組まなければならないのか……。
「でも、詳しくはあたしたちだけどね」
「よろしく!」
黒髪の女の背後から艶のある白髪の女がでてきた。
多分銀髪と大差ないほど綺麗な
よく見たらこいつら、人神の横にいた奴らだ……
ツイッター始めました。
フォローのほうよろしくお願いします。
http://twitter.com/yutan8101