第一話
俺は吸い込まれるように空間を移動している。
周りには所々歪んでいる場所があり、そこからはいろんなものが顔を覗かせている。
戦争、見たことのない景色、変な生物などどこかの世界を切り取ったような感じだ。
果てし無く、どこまでも、いつまでも続く、そう思うぐらい広い空間。
でも、ただここは居心地がいいと感じた。
このまま世界を見ていたい。全てが美しい。
命の輝きが眩しかったんだ俺には……。
色あせた世界に、もう一度色を与えたい。
勇者か……そんなことだけ言いやがって、また会いに来る? 冗談じゃない。俺はただの高校生だ。 そんなことやりたい奴だけやってろよ。
だがな、俺が知らないだけで案外楽しいかもしれないな。
そう思ってる間に、目的地に着いたのか一つの歪みの狭間に吸い込まれていった……
狭間を抜けると、大陸が見えた。
小さな町が見え、その中心の城に向かっているようだ。
突然、俺の身体は大きな衝撃を受け、地面に落下した。
あまりに落下速度が速く、俺の意識はそこで途切れた。
小さな陽だまりの中にいた。
幼い頃、俺のお気に入りだった小さな花畑、俺はそこにぽつんと立っていた。
この場所はある災害で今はもう流れてきたガラクタで山積みになって面影などないはず。
だが、かつてのの花畑に戻っていた。
意識が朦朧とする。
だから、多分今は夢を見ているのだろう。
意識がぼんやりするのはそのせいだろう。
そこには傷つきボロボロになった少女がいて、泣いている。
しばらくすると、そこに小さい頃の俺が来た。
俺はその子に気づき、声をかける。
「だいじょぶ?」
少女は俺を見て驚いた顔をした後、無理やり笑顔を作って聞いてきた。
「大丈夫よ。そんなことよりお願い、私の願いを聞いてくれる?」
「あたりまえだろ」
それが気に入らなかったのか、純真無垢にその少年が憧れていた英雄になったつもりなのか、あるいは両方か、
「おれはしょうらいヒーローになるおとこ。ヒーローはこまったひとをみのがさない。かならずだれかをすくうものなんだ!なんでもまかせろ!」
とか言いながら、シャキーンと仮面を被ったバイク乗りがしている決めポーズの真似をした。
少し可笑しかったのか、少女はクスクスと笑う。
「な、なんだよ」
俺は恥ずかしくて、それとも少女が笑った顔が可愛かったせいか、少し顔を赤くしながら言う。
それを見てまた少女が笑った。
「いや、かっこいいと思っただけよ、未来のヒーロー。」
俺はさらに顔が赤くなり、なにも言い返すことができなかった。
少女は大事そうに握っていたペンダントを見せて、
「ねぇ、これを受け取って。私の大事なペンダント。あなたは私の最後の望み。肌身離さず持っていて。今はそれだけよ。大きくなったら、私達を救ってね。約束ね。」
「うん、約束する。あたりまえだろ? おれはヒーローになるおとこだからな! 守れなかったら、どんなセキニンでもとってやる‼︎」
「うん、期待して待ってるね、ヒーロー。男に二言は許さないんだから!」
少年は頷きペンダントを受け取り、ペンダントを渡した少女は満足そうに微笑む。
そこ強いの風がふき、少年は目を瞑る。
花が風に揺られ、花びらが舞う。
目を開けるとそこには誰もいなく、ただ風の音が聞こえた。
意識が戻る。
だが目も開けられないほど狭い所に押し込まれているようだ。
必死に手足も動かそうとするが力がはいらない。
焦り、もがく。
何かに押さえつけられているように感じる。
必死に動くと、パキッと壁が割れた。
そこをはじめとしてどんどん壊れていき、俺は解放された。
周りを見渡すとただここに何もなく、広い草原が広がっているだけで、見えるのは遠くの山だけだ。
その光景が俺には絶望にしか映らなかった。
懐かしいことを思いだした気がしたが、それより今はこの現状だ。
男は俺に呼び出されたと言った。 ならなぜ、俺はこんな所にいるのだろう? 現状は最悪だ。
本当に何もない。
考えても仕方ないが食料、飲み物などの生活必要最低限の物が用意できない状況だ。
なんとかこの状況を打破する必要がある。
だったらこんな所でとどまっているわけにはいかない、生活必要最低限の物を優先的に確保しにいこう。
立ち上がろうとするとうまく身体に力が入らない。
不思議に思い手足を見ると、十七年間お世話になったものではなく鱗が生えた小さな手足になっていた。
なんだこれは?
不安と恐怖心が最高潮に達し、あまりのことに固まる。
そして、よく自分の身体を恐る恐る見てみると、羽が生えた小さな爬虫類になっていた。
さらに恐る恐る俺が出てきた場所を見てみる。
俺が出てきた場所には卵の殻が落ちていた。
もしかして俺はあの卵から出てきたのか?
卵から出てきたせいか身体はベタベタして臭う。
よくわからないが卵の殻を調べる。
底に俺の携帯があった。
不思議に思い携帯電話を取り出し見た瞬間.....
携帯電話が瞬く間に光り、目を瞑った俺は携帯電話に吸い込まれていった。
またかよ……
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