第9話
不幸が訪れたのは、それから間もなくのことでした。
もともと、魔法使いが嫌いだった国王は、何かにつけてポット・タットに罰を与えました。
けれども、ポット・タットはめげずに仕事に励みました。
しかし、とうとう国王の策略にはめられてしまいました。
それはポット・タットがお城に来てから、半月もたたないある日の事でした・・・。
朝、ポット・タットは、いつものように国王の着替えを手伝っていました。
すると突然、国王が言いました。
「ポット・タットよ。お前はここ数日、わしの八つ当たりにもめげずによくぞ働いてくれた。わしはお前に褒美をやりたいと思う。今から言う場所に行って取ってきてはくれぬか?」
これこそが、国王の最大の策略だった・・・。
ポット・タットが王室から出て行くと、王様はすぐに家来に言いました。
「わしの大事な壺を盗もうとしている輩がおると聞いた。今、わしの寝室にどうやらいるらしいのだ。いって捕らえて来い!」
そうです。ポット・タットは王様にだまされてしまっていたのです。
もちろん、ポット・タットは捕らえられてしまいました。
「王様、これはどういうことでしょうか・・・。王様は私に取ってくるようにと申されたのに・・・。」
「なっ何を言うか!この泥棒め!!こんなヤツはさっさと死刑にしてしまえ!」
とうとうポット・タットは王様の罠にはまってしまいました・・・。
朝、広場の前には多くの村人が集まっていた。
ある一人の魔法使いの処刑をみるために。
ソレは、もちろんアリシアの耳にも届き、アリシアは急いで広場へと向かった。
人ごみの遠くに、処刑台が見えた。
やせ細った一人の男と、兵士が2人。
そして、裁判長と王様が立っていた。
裁判長が長々と罪状を読み上げる。
それは、悲しみにくれるアリシアの耳には届くわけがなかった・・・。
涙の遠くに、ポット・タットの視線を探す。
「タット!!」
ついにアリシアは叫んでしまった。
広場が騒然となる。
人目を気にせずに、アリシアは王様に告げた。
「王様!私はこのポット・タットを愛しております!どうか、最後の別れの時間を・・・。」
アリシアの想いは言葉にならなくても、涙が語っていた。
「よかろう!ただし、5分だけじゃぞ。」
アリシアは急いで処刑台の階段を駆け上がった。
「タット・・・。どうしてこんなことに・・・。」
泣き崩れるアリシア。
鎖に繋がれたまま、涙を落とすポット・タット。
そして広場までもが、泣き出した・・・。
「5分だ!!」
悲しみを裂くように、王様の声が響いた。
引き離される二人の心。
泣き叫ぶアリシアの目の前で、運命の刃は残酷にも振り下ろされた・・・。