第6話
目覚めたのは、真夜中だった・・・。
タッグもグートもベッドの横で、すやすやと眠っていた。
夢の内容が反復するように、いったりきたりと心を揺らしていた・・・。
「私は・・・。誰・・・?」
次から次へと、涙が頬を伝った。
月の光に照らされて、涙がキラキラと光る。
青く・・・。黄色く・・・。赤く・・・。
「赤・・・。」
赤色と、炎が重なり合って、あの時の少女の言葉がよみがえる。
「不幸の女神・・・アリシア・・・。わ、私が・・・アリシア・・・?」
“アリシア”
その言葉を口にすると、老婆からもらったあの本が光りはじめた。
怖々ながら、手を伸ばす・・・。
胸騒ぎがした。
「手に取れば引き返せないよ。」
それは、グートの声だった。
「夢を見たんだろ?アノときの、お前が村を自らの手で焼き払った、アノときの夢を・・・。」
「わ、私が・・・アリシアなの・・・?」
グートは何を言わずに、首を縦に振った。
「どうして・・・。」
「それは、アリシア・・・。お前が一番よく知ってるはずだ。」
グートにそう言われ、一度心を落ち着けてみる。
「思い出してみる・・・。」
私はゆっくりと目を閉じた・・・。
30分・・・。
1時間・・・。
そして、夜明け・・・。
「やっぱり、解からないわ・・・。」
「そうか・・・。仕方ないな。」
「教えてはくれないの?」
必死の問いかけに、顔をそむけるグート。
「教えては・・・くれないのね・・・。」
「俺が・・・俺が話すことは出来ないんだ・・・。お願いだから思い出してくれ!そして・・・。」
「俺にかけられた呪いを解いてくれ?」
わって入ったのはタッグの声だった。
「寝たふりか・・・?」
鋭くグートがタッグを睨みつけた。
「おおっと、怒らないでくれよ。あまりにも二人だけで話を進めるもんだから、はいれなかったんだ・・・。それはそうと、徐々に目覚められているのですね、アリシア様。」
タッグはフワッと手元に飛んできて、手の甲にキスをした。
「どういうこと?」
タッグは顔を上げ、私の瞳を見つめながら言った。
「そのことについても、我々の口から申すことは出来ません。アリシア様がご自分で記憶を取り戻すほかに道はないのです・・・。」
それだけを言い残し、窓から飛び去っていった。
声をかけることなんて、出来るわけがなかった・・・。振り返ってグートを問い詰めた。
「タッグはどこへ行ったの?」
「アリシア様のことをご報告に・・・。」
「どこへ?」
「言えるわけがございません・・・。」
「あなたは、どうするの?」
グートは、ただただ首を横に振った。
「ただ言いえることは・・・。ここには長くいられないでしょう・・・。」
グートもタッグ同様に、それだけ言い残すと窓から飛び去っていった。
「私は・・・。私は、【私】を探さないと・・・。」
私はアノ本を手に取りすみずみまで読み始めた・・・。
その日私は、自分探しをはじめた・・・。