第2話
「ハァ・・・。」
カタンという小さな音と共に、スプーンを置いた。
鳥たちが花を運んできてから、もう何日目の朝だろう。
窓辺にずっと置かれていた花は、何日も前に枯れてしまっていた。
「ハァ・・・。」
もう一度、大きく深いため息をついた。
これが本当のたいくつなんだぁと、パンをかじりながらふと思った。
最近、あまり食欲がない。
食べかけた物たちをあとにして、少しの希望と共に窓辺へ向かった。
このところ、雨が続いている・・・。
ボヤっとした暗い空。
カタンッ。
静かな空間に鋭く小さな音が刺さった。
驚いて振り向くと、そこには慌てて食器片付けている、腰の曲がった老婆がいた。
「だれ?」
私が訪ねると、驚いて老婆はその場から飛びのいた。
「気づかれてしまったようだね・・・。」
蚊の泣くような細い声で、老婆が話し始めた。
「こんにちは、世間知らずのお嬢様。
私はね、この塔の主人に雇われていて、お前さんの身の回りの世話をするように命令されている者さ・・・。」
外の世界を知らない私にとっての、初めての会話だった。
それにしても、老婆の言っている意味がよくわからない。
「ねぇ、ヤトワレテルってなに?オセワってなに?」
外を知ろうと、私は夢中になってたずねた。
「おやまぁ。知らなくて当然だけれど・・・あまりに物を知らなさすぎだねぇ・・・。」
そう言いつつも、老婆は私の聞くこと全てに答えてくれた。
何時間ぐらい過ぎただろう・・・。
老婆は時計を見ながら私に言った。
「あらまぁ。早く帰らないとご主人様に怒られるわ。
さぁ、お話はこれぐらいにしましょう。」
そういって休めていた手を動かしてテキパキと食器を片付け始めた。
「お願いもっと私に教えて!!」
私は老婆に必死でたのんだ。
すると老婆は一冊の本を取り出して言った。
「後はコレに聞いておくれ・・・。」
そう言って老婆は、あるはずもなかった扉から部屋を出て行った。
いや、最初から扉はこの部屋に存在していた。
そう、それを扉だと認識していなかっただけ。
「あれって開くんだぁ・・・。」
独り言をつぶやきながら扉へ近づき、老婆がしていたのと同じようにノブを回した・・・。