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第11話

人々は一気に止まった。

「どういうことだ?」

「アリシアの・・・。優しかったときの記憶が、全ての傷ついた村人を癒すんだ。だから、アリシアを許して欲しい・・・。」

「そんなの、虫が良すぎる!!それに、アリシアの記憶が戻らないって保障もないだろ!」

野次は一層大きくなった。

「それならば、アリシアの記憶が戻ったなら・・・。もし、戻ってしまったなら今度は好きにすればいい!!」

その条件以外に、村人を静める方法はなかった・・・。

タッグの目にも、グートの目にも涙がたまっていた。

「しかし・・・。記憶が戻ってしまったら、お前達がどこかへ逃がしてしまうんじゃないか?」

この言葉に、妖精たちは戸惑った。

反論できなかったのだ。

もし記憶が戻ってしまったなら、そうするつもりだったから・・・。

「やっぱり、逃がすんだな!それならば、生かしてはおけない!!」

村人達は、今にもアリシアに襲いかかろうとした。

そのときだった。

一筋の光が、グートの胸を貫いたのは・・・。


グートの体は中に浮かび上がった。

そして、妖精から人へと姿を変えた。

「村のものよ、聞いてくれ・・・。」

そこに現れたのは、処刑されたはずのポット・タットだった。

「私は、このアリシアを心から愛していた。しかし、私はアリシアに貰った愛を返す前に王に殺されてしまった・・・。私は、アリシアに恩返しすらも、出来ぬままだった。だから、どうしても恩を返したい・・・。それを解かって欲しいのだ。記憶を抜き去れば、大丈夫だろう・・・。しかし、村のものが言ったとおりいつ記憶が戻ったもおかしくはない。だから、皆が見張れる場所にアリシアを閉じ込めてくれ。そこには、もちろんこの妖精たちを一緒に・・・。しかし、妖精たちだけでは、アリシアの記憶が戻ったときに逃がそうとするかも知れぬ。だから、村人の中からも監視役を出入りさせよう。それでは、いけないだろうか・・・。」

村人の中には、涙を流しながらポット・タットの話を聞くものもいた。

「それでも不安だというのなら、この妖精に術をかけておく。もしアリシアを逃がそうとしたら、村のものにそれが伝わるように・・・。」

「どういうことだ?」

話に聞き入っていた男が言った。

「もしも、アリシアが記憶を取り戻し始めたら、この村に夜を。完全に取り戻したら、朝を持ってこさせる。」

「けれど、完全な記憶を取り戻したアリシアに、我々村人が敵うわけが・・・。」

「俺は、アリシアの憎しみの心を妖精に封じさせようと思う・・・。だから、目覚めてもアリシアの心に憎しみはない。そのときは、アリシアに聞いてやってくれないだろうか?どう生きていくのか・・・。それとも、処刑されるのか・・・。」


彼女の記憶で癒された村人達は、すぐさまアリシアだった少女を村はずれの森にある高い塔の上に閉じ込めた・・・。

それは、以前アリシアが住んでいたところでもあった。


こうして、1人の少女は高い塔の上に閉じ込められた。

自由と記憶とを、取り除かれて・・・。

少女がいつ目を開けるのかも、いつ自分のことに気づくのかも、それは誰にもわからないことだった。


もしも、記憶を取り戻したとき、彼女が選ぶのは・・・?


冷たい視線の中で生きる【生】か・・・。

悲しみの果ての【死】か・・・。


それすらも、誰にもわからないことだった。

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