第10話
ポット・タット処刑から2週間・・・。
アリシアは空白の時間を生きていた。
浮かんでは消える、あの日の風景。
涙が枯れるまで泣き続け、王を憎み続けた・・・。
許せるわけがなかった。
必死に感情を殺そうともしてみた。
けれど、愛がなくなったアリシアには抑えきることが出来なかった。
そしてその日の午後、今になっても思い出すのを恐れるぐらい怖ろしい惨劇が血の雨とともに始まってしまった・・・。
正午の鐘が鳴り響いた。
それと同時に、雨が降った・・・。
それは、アリシアが降らせた血の雨。
王様の、そして家来達の。
アリシアの暴走は、止まらなかった・・・。
優しかったアリシアは今はもう、どこにもいなかった。
城に火を放ち、民家までをも焼き払った。
冷たくなった瞳に涙を浮かべても、悲しみは、怒りは止まらなかった・・・。
そして、多くの人々が死んだ。
魔法使いも、たくさん死んでいった・・・。
それでも、アリシアは止まらなかった。
同じ頃、森の中で二人の妖精が誕生した。
それは、ポット・タットが最後に残した魔法。
寂しさにアリシアがつぶされてしまわないようにと・・・。
2匹はすぐにアリシアの元に飛んでいった。
けれど、そのときにはすでに遅かった。
火の海のなかにたたずむアリシア。
恐怖と恐れのまなざしでアリシアをみつめる人々。
グートがすぐにアリシアの記憶を奪い去った。
次の瞬間、恐怖の魔女アリシアは幼き少女へと替わった・・・。
「村の者達・・・。止まるのが遅くなってすまなかった。けれど、わかってほしいんだ!アリシアだって、こんなことしたくてしたんじゃない!!愛するものを亡くしたせいで、力をコントロールできなくなってしまったんだ・・・。」
しかし、いくら謝ったところで村人達の怒りは収まらなかった。
「村の人々まで、殺さなくても良かったじゃないか!!」
「そうだ!それに、いくら謝られても殺された者たちは帰っては来ない!!」
怒りは野次にかわり、中には石などを投げつけるものたちまで出できた。
今にもアリシアを殺そうと襲い掛かってくるものも出てきた。
「グート1人では、ダメだったか・・・。」
そういうと、タッグは物陰から出てきて叫んだ。
「人々は、生きている!!」