瓶の中の彼女
私は 彼女を 愛している
残酷に感じる表現があります。気をつけて閲覧ください。
ぽとり、と、手に持ったそれを瓶の中に落とす。鼻につく臭いが気になった時期もあったが、今となっては慣れたものだ。むしろ、今ではこの臭いが一番落ち着く。
コポコポコポ・・・
まるでまだ意思が残っているかのように気泡を発して沈んでいくそれ。柔らかい、握りつぶそうと思えば一瞬で握りつぶしてしまえる儚い存在。
美しい球体。
私は微笑む。やっと、私のものになった。
何とも強情だった。私に渡してくれれば・・・永遠に、美しいままでいられるというのに。
老いや欲に影響されることなく、何者かに傷つけられることもなく、人間が作り出す至高の美を維持できるというのに。
結局、彼女とは分かりあうことはできなかった。
しかし、これから分かりあうことはできるだろう。
沈んでいく、美しいそれ。
柔らかく光を反射する蒼、くるくると回って私を魅了する。
あぁ、なんて美しいのだろう。
ぐるりと部屋の中を見渡す。壁一面に巡らされた棚の中で、彼らも新しい仲間を喜んでいるようだ。
私も、とても嬉しい。
彼女も、喜んでくれているようだ。
ふふふ、と、抑えきれない笑いがこぼれる。
こんなに気分が高揚するのはいつぶりだろう。
そう、彼女は私の恋人だ。
私は彼女が入っている瓶を抱きしめる。愛しい、愛しい、彼女を。
瓶を目の高さまで持ち上げて、私は彼女と目を合わせる。
「これからは、ずうっと一緒にいような。」
彼女は、その美しい瞳を私に向けて、にこりと笑ったようだった。
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