平和大使ワタル
1 ギャラクシークラブへ
早く死んで楽になりたい。それが本音だ。
他人を痛めつけて喜びたがる蛆虫ばかり。
まともな人間が暮らせる世界じゃない。
狂犬病の犬の集団。それがワタルの住む地域。
核ミサイルで焼き払ったほうがいい。
チンピラ集団の無法地区。
「神様助けてくれ、もっと楽しく、
楽に暮らせる世界に連れて行ってくれ!」
ワタルは、そう願い続けていた。
ある日。
ぼんやり空を眺めていると。
周囲が緑色の光で覆われる。
「あれ?」空中に浮く。
背後の上空にUFO!
その中にワタルは吸い込まれた。
光るクラゲが浮かんでいた。「私は案内ロボット、クーです」
「あなたの思考を読み取りました。あなたを地球大使として
ギャラクシークラブに招待したいのですが、いかがでしょう?」
「それは有料なのか?ぶったくり店っぽい申し出だけど」
「いえ、無料、というかファーストコンタクトですから
普通に感激してもらって大丈夫です」
「怪しい、詐欺っぽい!でもOKだ!連れて行ってくれ!」ワタルは叫んだ。
「では出発・・・窓の映像を表示します」
全面がスクリーンに。地球上空からさらに上へ。宇宙空間に出る。
「ワープします」光の渦の中を飛んで。
「着きました。巨大宇宙船、ギャラクシークラブです」
「到着早い!」
2 ギャラクシークラブ
「コミュニケーションカードです」
クーはシールをワタルの胸に付ける。
「これは温度調節、重力調節、言葉翻訳、環境調節も兼ねています」
「万能すぎる科学力だ」
「承認されるには他の大使たちに面会して3人以上の賛成が必要です。
友好的な3人に連絡しておきました」
小型円盤の外へ。ワタルは小型バリアに包まれている。
カラフルな広い空間。さまざまな建物。
3人が近づいてくる。
金魚タイプのルーチェ、金属タイプのゴルド、植物タイプのソウジャ。
全員がバリヤで包まれている。個体保護。反重力で移動。
3人と会話。
自分の種族の言葉で会話してるように理解できる。
「君は善良、共存共栄で悪意が無い、平和志向。
メンバーとして合格。第一審査試験クリアだ」
金魚タイプのルーチェ
「ギャラクラを案内しましょう」
お椀を伏せたような半円形の建物の中へ。
「ここは開発エリア。コミュカードを作った場所」
「私はここで遊んでる。発明がしやすい」
「指示を出すだけで作ってくれるの。これに」
浮かんだ四角いロボット
「私は制作補助ロボット「キャンサー」です」
「彼、ワタル用の・・・楽な姿勢を取れる器具を作ってちょうだい」
光の帯が流れてきて幾つかの椅子を形成する。色指定。材質指定。
ワタル「これは・・・レゴブロックのナノマシン版か。素晴らしい!」
別の建物へ。
さまざまなタイプの椅子、デスク、コンソール(操作卓)。
金属タイプのゴルド
「ここはデータ室。図書館。私は普段、ここにいる」
金属板が近づいてくる。
「何か聞きたいことがあれば何でもお答えできます!」
ゴルド「これは専用の案内ロボットだ」
ワタル
「では地球に関するデータを」
立体映像で表示、音声で説明が始まる。
案内ロボット
「地球に関して現在調査中でデータは少ないですが」
ワタル
「これはウェキペディアって事か。宇宙規模の」
ゴルド「君はまだ正式な会員ではないから、
データ制限が掛かっている」
「では次はプレイランド、遊技場へ・・・」
3 脅迫者
ビービービー、サイレン。赤い光。
クーが警告。
「緊急事態!メリガ星のドランが乗り込んできた!」
「あの厄介者め」
「受付ロビーへ」
4人が青い皿に乗って移動。
戦闘用鎧の恐ろしげなロボットが受付の前で凄んでいる。
「俺がコミュニバースを支配する!
おまえたちの科学力があれば、このドラン様が全宇宙の支配者だ!」
受付
「ドラン、君は第一審査で失格だ。
君は破壊、支配、征服、他者をやっつけることしか考えていない、
ここにはふさわしくない、立ち去りたまえ」
ドラン
「強い者が勝って生き残る、それが宇宙の摂理だ、
文句があるなら戦え、それができない意気地なし共め!
会話は無意味、ならば力ずくだ、待っていろ!」
ゴオッ!
鎧の後部から炎を出して浮上、壁を突き破って去っていく。
ワタル「いったい何です、あの乱暴者は」
受付
「メリガ星の帝王ドラン。招待していない。自らの科学力で戦争を繰り返して
ギャラクラまで来た。厄介な奴だ。しょうがない、隠れるとしよう。
新規会員募集は中止。君には悪いが元の星に送ろう」
「科学力はこちらが上なんですよね、それでも戦わないと?」
「ギャラクラ第一審査の条件は、友好的、他者と共感できること、
相手の立場に立って考えられること、共存共栄。
戦争なんてしない。この宇宙船を別の時空ポイントに移動させて隠す。
ああいう戦闘種族は戦わずにおれない、同種族間でも。何百年か経過すれば滅びる。
それまではコミュニケーションは中止しよう、残念だが」
「そんな悠長な!誰かがあいつと話して攻撃を中止させるとか」
「誰って誰?」
「それは・・・私が」
「本当に?」
「もちろん」
4 交渉
小型宇宙船でドランの戦闘艦へ。
しかし鎧の部下をずらっと並べ、奴隷にした宇宙人たちの頭蓋骨を並べて威嚇、
捕虜を的に射撃しているのを見てワタルは批判する。
ドラン
「話にならん、こいつは戦士ではない、交渉など不可能、奴隷だ、牢屋へ!
いずれギャラクラ所属の連中の星は全部征服する。
その時の人質に使ってやる!」
鎧の一人に捕まって電磁牢屋へ放り込まれる。
「さてニンジャワン、いるかい?」
「来ているワン。この戦闘艦を調査したワン。
ドランの弱点がわかったワン」
ナノマシンで忍者ロボットたちを制作、迷彩で活動。
戦艦の掌握、調査を頼んだ。
「娘を可愛がっているワン。この船にも連れてきているワン」
「では案内を。行こうか」電磁牢は解除、通路を移動して別の部屋へ。
「あれ、君があいつの子供なのか。それにしても姿が。
まさかあいつも?」
そこにいたのは人間と同じ大きさのニワトリ。
胸元にコミュカードが貼られて会話可能に。
「ええ、私はドランの娘メルダ」
ニンジャワン
「ワタル、彼女は優しい心の持ち主。他のメリーガ人とは違う。
洗脳を受けていない」
「すると君は平和主義なのか?」
メリダ
「ええ、そうよ。強い者が偉い、弱い者を殺していい、
なんて父は異常よ。メリーガ人全体が狂ってる」
謁見の間へ。
ドランと部下たちが揃っている。
「娘を人質にとったからっていい気になるなよ、
貴様の星を破壊してやる!」
ワタル
「ナノマシン攻撃隊、作業開始!」
「鎧解除!」
バタバタバタ!
戦闘鎧のコクピッドが開く。
搭乗者のニワトリたちが驚いている。
ドランの鎧も開いてニワトリ姿が出てくる。
「く!残念だ。殺せ!」
「だからそういう流儀はないっていうのに」
「ではこちらの勝ちでいいのか?」
「そんなわけないだろ」
「話が通じていない」
「まったく」
ナノマシンをワープで転送、
メリーガ星の軍事力を、すべて破壊する。
5 審査結果
ルーチェ
「メルダ嬢はメリガ星出身なのに友好的、平和思考。
これなら第一審査は合格です」
ギャラクラに戻ってきた。
メルダ嬢と一緒に。
ルーチェ
「地球、そしてメリガ星は第2審査で失格です。
星の人間たちを観察して凶暴な連中が多い。
ギャラクラの登録惑星には成れません」
「でも95%の星が、そうなのです。
良い人間もいれば悪い人間もいる。
第一審査許可の大使には、なれます。
ワタル、メルダ」
「ギャラクラの科学力を自分の星に持っていくことはできません。
制限付きの交際、ということです」
手本はスザンヌ・フランシスの小説
「星つなぎのエリオ」(ディズニーアニメ)




