紹介
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「…!…!!」
「なんか言ってよ…。」
シホは気恥ずかしそうに囁く。
「だって…」
マフの向かいに座るのはシホと初めて見る青年。
青年は照れながら俯いていて、シホと青年の間には甘酸っぱい空気が流れている。
こんな気まずい空気になった経緯。
遡るは5分前…
マフは駅前の小綺麗な喫茶店の前にひとりで立っていた。
シホが待ち合わせにえらんだ場所だ。
人がそこそこ入っていて、外観からして、おそらく新しい店だろう。
「ここが…喫茶トスニアかな?」
マフが、シホからのメッセージを確認しようと、スマホを開くとマフのスマホがブーっと振動する。
開いてみると、シホからのメッセージが来ていた。
『そろそろ着く?もう中で待ってるからねー』
マフは慌てて中に入った。
勢いよく。ドアを開けるとカランコロンと鈴が鳴った。
店内には軽やかな明るいBGMが響いていて、客の楽しそうな声と共にマフの耳に入ってくる。
慌ただしく入ってきたマフに小柄で綺麗な店員が優しく笑いかけながらと声をかける。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「えっと…先に来てた…ひ、柊って人の……」
声をかけられて驚き、マフは慌てて説明しようとする。
「あぁ!柊さまのお連れ様ですね。ご案内します!」
店員さんはそんなマフを優しく案内してくれる。
定員に連れられ、店の奥の方に進むと窓際の日光が差し込む席にシホが見えた。
しかし、見えたのはシホ一人ではなかった。
「あ!マフ!こっちこっち!」
「シホ…その人だれ?」
マフに手招きするシホの横に座っていたのは、見覚えのないピチッと制服を着た、細身で茶髪の好青年男子。
マフは戸惑いながらも、二人の向かいの席に座る。
「いや…紹介するか悩んだんだけど…マフには言っておこうかなー?って」
青年はマフに照れながらも会釈をする。
マフは小首を傾げる。
シホはそんなマフに向き直り、
「この人…私の彼氏!」
と発した。
一瞬。マフの世界が静まり返ったような気がする。
「…ぇぇえええ!?」
マフは大きな声を出してしまい、店中の視線を集める。
しかし、衝撃のあまり、マフはその視線にすら気づかなかった。
なにせ、シホは色恋ざたに、知り合ったころから全く興味がなかった子だからだ。
「えっえっ?お母さんとか…幼馴染には言ってるの?」
シホには小学校からの幼馴染がいるらしく、よく話は聞いている。
正直マフはその幼馴染を紹介されるのかと思って来ていた。
「あー…アイツには言ってない…親は多分言っても言わなくても変わんないし…」
「そうなんだ…」
マフがぽーかーんと目を白黒させていると、彼氏の方が気まずそうにおずおずと喋り出す。
「あの…話には聞いてます…マフさんですよね。僕、木枯イズミです。」
彼の声は高校生男子にしてはやや高く、よく響く落ち着いた声だ。
「あの…一応僕の通ってるとこマフさんと同じ学校なんです。」
「えっあっそうなんですか」
確かにそう言われると、彼の制服の胸元にマフの通う学校の紋章のワッペンが縫い付けられている。
そこで、マフは、ハッと思い出す。
「あっ…剣道部の…」
「そ、そうです!」
記憶を辿れば、彼とは一度、学校の全校朝会で顔を合わせた事があった。
あの時はたしか、マフは学力コンクールの、彼は男子剣道全国決勝の表彰だったはず。
「まぁ…そんな感じ…です。」
「そ、そう…よ、よかったね……お幸せに…」
マフはよくわからない事に巻き込まれている中、シホはこんな幸せな報告を抱えていたと知らされ、マフはシホの事を祝福しつつも、なんだか、取り残されたような、そんな気がしてしまった。
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