羨ましい感情。
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薄暗い部屋にピピピピとスマホのアラームが鳴り響く。
布団から伸びた手がアラームをいつものように止める。
「マフー?朝だよー。なんかお友達からメールきてるよー?」
ゴンザレスの言葉にマフはのそのそと起き上がり、スマホの画面を覗き込んだ。
メールの送り主はシホで、開くと、『今日、紹介したい人がいるんだけど学校終わり時間ある?』というメッセージとともに、首を傾げる犬のキャラクターのスタンプが送られてきていた。
正直シホからのメールは珍しい。
たまに、オススメの小説のURLが送られてくるくらいだ。
「なんだろ…」
「この子昨日一緒に学校行った子だよねー?」
「うん…」
マフは短く、『あるよ』と書いて送信する。
メッセージにはすぐに既読がつき、『ありがとう!』と返ってきた。
マフはスマホの画面を見つめながら、学校へ行く支度をする。
今日はシホが部活で早くでるので、登校は一人だ。
「いってきます」
誰もいない家の中に向かって声をかける。
勿論もう返事なんてない。
否、マフがいってらっしゃいなんて言われたのはもう数年前だ。
元々なかった返事に期待などしてはいない。
マフはドアに鍵を閉めて、閉まっているか再度確認すると、毎日通っている通学路に沿って歩いていく。
笑いながら登校する、賑やかな小学生の声が聞こえてくる。
目の前には母親であろう女性に手を引かれ、しりとりをしながら歩いている女の子がいる。
マフはふと、自分が幼稚園児の頃を思い出す。
いつも母親とは手を繋ぎ、父親には頭を撫でてもらっていた事。
食卓には家族3人がいて、笑いながらご飯を食べていたこと。
今では二度と叶わないが、戻りたいともマフは思わなかった。
戻れども、また同じ事を繰り返すだけなのもマフはわかっている。
そう思っていても、やはり目の前の少女が少し羨ましいと思っているマフもいた。
きっとあの子は父親とも仲がよくて、家ではつくりたてのご飯を食べて、朝は優しく起こしてもらえるんだろう。
「お母さん!早く!"み"だよ!」
「えー?ちょっとまってよ」
楽しそうに笑う親子がマフの瞳には残酷に写った。
マフが俯いていると、何かを察したようにゴンザレスが、語りかけてくる。
「なに?羨ましいと思った??思い出して?君が願ったんだよ?母親、いなくなれ!って。それなのにいなくなったら恋しいよーってちょっと我儘だよ。君がこうなりたいって思ったんだろー?」
マフはゴンザレスの言葉に何も言えなくなる。
そんな事言ってないと言えばそうかもしれないが、心の何処かで母さえいなければと思っていたのも事実だ。
マフは親子から逃げるように早足で駅に向かった。
親子を追い越す際に、目があってしまった女の子のキョトンとした、純粋な目がなぜか、脳裏に焼きついてはなれなかった。
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