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第5話:白環の影、月光を裂く


 夕刻の薄光が森の梢を朱く染める頃、祈跡庵の空気はまたしても変質した。前触れもなく、東の樹海を貫いて白い光柱が伸びる。鈍い地鳴りが遅れて届き、灰輪の上に張られた静域の膜が微かに震えた。


 私は炉辺で朧環を両掌に包み、鏡の欠片を膝上に置いていた。静域はいまだ保たれているが、月の光は既に西の空へ傾き、蒼い余韻だけが木立の上で揺れている。


 ユレインが庵の入口に現れる。左腕に巻いた粗布には黒い血が滲み、呼吸は浅い。影写の反動で神経が焼けただれているのだと直感したが、彼の瞳は一点の迷いも映さない影写で封陣の破片を縫い留めた反動が遅れて来たのだ。


「本隊が来た 戦祷巫女六名 補助四名 完全式だ」


 彼は眼鏡の奥で光の柱を見据え、筆を握り直す。その声に震えはないが、血の色が袖を濃く染めていくのが見えた。


 巡礼者は灯を抱えたまま足場を組むように周囲の地面へ月輪の灰を撒いている。火の皿の炎は細り、それでも芯だけが橙を保つ。


「彼らが封印するのは異神ではなく 火と祈りそのもの」


 仮面の奥の声が低く籠もる。私が炉の火へ視線を落とすと、朧環が胸でひときわ強く脈を打った。


『火を抱き 灯を守れ』


 ツクヨミの囁きが薄く響く。鏡の表面に淡い銀波が走り、月相の欠片が瞬いた。


 外では梢が割ける音が連続して鳴る。光柱は枝葉を焦がしながら下降し、森土に触れたとたん、焦げ木と湿った土が混ざった鉄錆の匂いが押し寄せ、肺の奥を焼く蜘蛛の巣のような光素網を広げた。夕闇を裂く白銀の綱。その中心に、黒衣の影がゆらりと立つ。


 ミリアム 裁断剣ディスティスを肩に担ぎ 月明かりを映す赤銅の刃を傾けている


 彼女の背後で戦祷巫女たちが三角陣を組み、補助巫女が光律陣の印を空中へ重ねていく。無数の白い符が宙に浮かび、蜘蛛網と合流して巨大な結界球をく形成した。


 鼓膜を刺す鈴音が、いままでにない高音で庵を包む。灰輪の蒼が押し返され、静域の膜が波紋を広げた。炉の火が思わず揺らぎ、灯の皿から小さな火花が零れる。


 私は立ち上がり、左手で鏡を掲げ、右手で朧環を握る。冷たい銀面に夕陽の残光と自分の怯えた瞳が重なり、それでも鏡は静かに月相の輪を描いた。銀の光が二筋の軌跡を描き合い、胸の前に月相の輪を作った。


 恐怖はまだ身体の奥で冷たく残る。それでも足は土を踏み込み、一歩も退かない。


「──守る」


 声は自分でも驚くほど静かだった。莚の上で祈り手たちが歌い始め、幼い手が再び灰を撒く。


 火 灰 月 わたしたちの小さな結界が 白環の完全式と対峙して息を飲む


 夜の前 戦の幕が再び上がる。



 白い光素網が庵の上空で重なり合い、やがて一枚の巨大な天蓋となった。鈴音は高音から低音へと転調し、地鳴りを伴う重奏へ変わる。


 天蓋の中央が裂けるように開き、ミリアムが一歩踏み出す。黒衣の戦祷装束は光素に縁取りされ、短髪を撫でる風までも白い火花に変える。


「罪定めの時だ 灯守り」


 彼女の声は冷え切った水面のように澄み、しかし残響が耳朶を刺す。ディスティスの赤銅の刃が肩からゆっくりと滑り落ち、地面に尖端を触れさせた。


 瞬間、刃先から無数の鎖が噴き出す。鎖は白銀ではなく、罪条と刻まれた黒い符文を帯び、灰輪の縁を締め上げた。鈴音が途切れ、小さな悲鳴が火の周囲で上がる。


 鎖の重みが空気を圧し、灰輪がきしむ。私は鏡を胸元に構え、朧環の光を合わせる。銀の盾が鎖を受け止めるが、符文が光を蝕むように黒く滲んだ。


 刃を肩に担いだまま、ミリアムはゆっくりと歩み寄る。


「異端の祈り 白環に仇なす神秘 ここで断ち切る」


 ユレインが残った右腕で筆を振る。「封筆三節 影連」黒線が地面を走り、鎖の根元へ絡みつく。それでも鎖は止まらず、影写を破りながら灰輪を締め上げた。


 巡礼者が灯を掲げ、炎を自らの掌へ移す。火の芯が外套の袖口を焦がし、肌を赤く染める。それでも彼は鎖へ炎を投じ、符文を焼き切る。しかし一本を断つたびに二本が伸びる。


 鎖が肩口に食い込み、鏡を支える腕が震えた。鉄と血が混ざった匂いが喉を刺し、視界の端が赤く脈打つ。冷気の中で汗が背を伝い、朧環の光が淡く揺らぐ。


 ミリアムがディスティスを水平に構えた。


「断罪」


 刃から放たれた白い弧が灰輪を縦に割る。銀盾が軋みを上げ、鏡面に亀裂が走った。胸へ鈍痛が走り、吐息が霜のように白い。


 私は足を踏み込み、鏡と朧環を合わせた光を押し返す。


「ツクヨミ……!」


 だが囁きはまだ届かない。月は西へ沈み、銀の残光は弱い。鎖が再び襲いかかり、私は灰輪の内側へ膝をついた。


 炉の火がかすかに揺らぎ、橙の芯が蒼へと変わり始める。灰輪の底から浮かぶように、幼い歌声が響いた。少女が震える手で古歌を紡ぎ、老祈り手が低く唱和する。


 祈りの旋律が灰を震わせ、巡礼者の灯が橙を取り戻す。吹き上がった炎が鎖へ飛び散り、符文の一部を焼き払った。


 ユレインの眼鏡が砕け、光素の閃光が頬を裂く。彼は血の中で微笑み、筆を低く構えた。


「影写はまだ 終わらない」


 黒い霧が再び鎖を絡め取り、動きを鈍らせる。鎖の節々が火花を散らし、火薬のような焦げ臭が灰輪に滞留した。私は鏡を押し上げ、朧環の冷たい光を亀裂の奥から汲み上げた。


 鏡面に微かな白影。月読の輪郭が揺らぎ、大気が凍る音を立てる。ツクヨミが目覚めかけている——それでもまだ光は足りない。


 鎖が再び唸りを上げ、灰輪を締めつけた。刃の赤銅が夕闇を裂く。裁断の瞬間が近づく。


 私は牙を食いしばり、血の味を噛んだ。炉の火と月の欠片と祈りの歌、そのすべてを胸で結びながら、次の一歩を待つ。



 灰輪を締めつけていた鎖が一瞬だけ弛んだ。その隙を狙うように、炉の火が低く唸り、蒼い芯が白磁の光を孕む。灰の輪郭が揺らぎ、粉塵が立ち上るたび淡い星屑に変わった。


 巡礼者が灯を掲げた腕を震わせ、声を絞り出す。


「火の芯を……輪へ……」


 彼の袖口は炎で焼け、皮膚が紅く裂けている。焦げ布と脂の甘い匂いが鼻腔を刺し、吐き気が喉へ込み上げたそれでも灯火を手放さない姿に、胸の奥で何かがはじけた。


 私は鏡を地面に伏せ、両手で炉の火を掬うように包む。掌の皮が焼けてめくれ、鉄板の上に置かれたような痛みが神経を噛んだ熱は刃のように掌を裂き、皮膚の奥で血が泡立つ。それでも離さない。火は生き物のように伸び、朧環へ舌を絡めた。


 次の瞬間、胸に激しい脈動。朧環の亀裂が白光を漏らし、輪郭が砕ける寸前にまで広がった。鏡の欠片が呼応し、皹の間から月乳色の光が湧きあがる。


『ならば 誓いを』


 ツクヨミの声が低く脊髄を震わせる。灰輪の中心で火と月が重なり、冷たい銀と暖かな橙が溶け合った。


「守る」私は声を放つ。「灯も 祈りも ここにある命も」


 灰輪の周囲に立つ祈り手たちが歌声を高めた。少女は涙を拭い、割れた声で旋律をつなぐ。老祈り手の低唱がそれを包み込み、巡礼者の灯が火柱となって輪を舐める。


 鎖が再び唸りを上げて襲いかかる。だが灰輪へ触れた途端、符文が蒼白に焼け、鎖自体が砂鉄に崩れた。ツクヨミはまだ完全には顕れない。それでも祈りが火を昇華させ、鎖の呪を一瞬で塗り替えたのだ。


 ミリアムの眉がわずかに動く。赤銅の刃が月白の光を映し、再度振りかぶられた。


「裁断──」


 言葉が刃になるより早く、ユレインの影写が地面から黒い柱となり刃を受け止める。鉄と影が擦れ、火花が硝煙の臭気を撒いた。


 ユレインの膝が折れ、地に手を突く。右手の筆は血で滑り、影写の線に途切れが走る。それでも彼は顔を上げ、砕けた眼鏡の奥で笑う。


「ここは……灯守りの領分だ」


 巡礼者が灯を掲げ直し、自身の外套ごと炎に包んだ。赤橙の焔が仮面を照らし、木彫りの狐がわずかに微笑んだように見える。


「火よ 我が身を橋として輪へ還れ」


 炎は巡礼者の臂を這い、灰輪へ流れ込んだ。火と灰と祈りが臍を結び、朧環へ収束する。胸の輪はひび割れながらも輝きを増し、鏡面が水面のごとく揺れた。


 蒼白の静域が地面から湧き上がる。音が消え、鎖の唸りが遠のき、刃と筆と火花の声が凍りついた。ツクヨミが、あと一歩でこの場に降り立つ。


 私は灼ける掌で朧環を掲げる。「これが――灯守りの誓い」


 輪の亀裂が眩い光で塞がり、鏡と重なって完全な円を描いた。銀と橙が渦を巻き、灰輪の空に月弓の幻影を結ぶ。


 そして音が還る。裁断剣の刃が静域に弾かれ、ミリアムが半歩下がる。鎖の残響が消え、鈴音だけが遠くで震えた。


 祈り手の歌が最後の和音を迎え、巡礼者の灯が再び橙一点へ凝縮する。火はまだ消えていない。命の灯は守られた。


 しかし力を使い果たした朧環は白く蒸気を立て、鏡面も硬い沈黙を取り戻す。ツクヨミはまだ扉の向こうにいる。


 息を吐いた瞬間、遠雷のような鼓動が森を揺らした。白環の封陣はなお巨大で、ミリアムの瞳は決して折れていない。


 戦は、これから本当の頂点へ向かう。



 灰輪を押し返していた鎖が、ついに音を立てず崩れ落ちた。符文の黒い残影だけが宙を漂い、冷たい夜風に溶けていく。代わりに静域の蒼は深さを増し、地面から浮いたように空間の奥行きを奪った。


 音がない。火の爆ぜる音も、刃が鳴る金属音も消え、ただ脈動だけが骨に触れた。蒼と銀が溶け合う中心に、月影の割れ目がゆっくり開く。視界は指先まで痺れ、心臓の拍動が鼓膜を叩いた。そこから長い銀髪と夜衣をまとった人影が歩み出る。


 夜と静寂を纏い、瞳に淡い紫を宿す。ツクヨミ――神は、足下の灰輪に触れても一片の灰も動かさない。虚空に水面を歩くような步みで、炉の火と巡礼者の灯の間に立った。


 ミリアムが赤銅の剣を掲げる。


「異神、出現を確認 最終断罪を──」


 言葉より早く、ツクヨミの指が空を撫でる。音もなく、白い光素網が氷片のように崩れ落ち、粉雪のように舞った。鈴音が凍り付き、砕ける氷砂糖のように弾ける。


 ディスティスの刃が月白の光を浴び、鋭く震えた。ミリアムがにじり寄り、一閃。刃の軌跡が夜気を割くが、ツクヨミは袖を翻すだけで弾いた。蒼銀の月刃が生まれ、赤銅の刃と正面で噛み合う。


 衝撃波が灰輪を貫き、祈り手たちの歌が吹き飛ぶ。しかし火は消えなかった。ツクヨミが夜衣の裾を揺らし、月刃を二重に重ねてディスティスの根本へ圧をかける。赤銅が悲鳴を上げ、剣身に網目状の亀裂が走った。


 ミリアムの足が土を抉り、鎖の残骸が再び生えようと蠢く。ユレインが血の滲む指で影写を描き、黒い杭が鎖を釘付けにする。巡礼者は灯を高く掲げ、橙の火線を月刃へ送り込んだ。


 銀と橙が交差し、ディスティスの亀裂から白光が漏れる。まるで剣が内側から燃えているように、赤銅が赤熱し、ついに砕けた。破片が火花となり、音のない世界で散る。


 静域がふっと解け、音が還る。剣の崩れる音、鎖の断たれる音、胸を打つ鼓動。ツクヨミは砕けた赤銅片を袖で払うと、穏やかに視線を落とした。


「灯は守られた」


神の声は囁きよりも静かだ。それでも森全体が返事をするように葉を揺らす。


 ミリアムは膝を折り、赤銅の柄だけを握ったまま顔を上げる。


「異神が……なぜ、月が、ここまで……」


 ツクヨミは答えず、視線をコレットへ向ける。胸の朧環は、ひび割れを銀光で塞いだまま脈を刻んでいる。だが輪の温度は氷のように冷たかった。


 巡礼者が灯を下ろし、膝をつく。


「灯守りの誓いは果たされた 神よ 火を次へ運ぶ道を」


 ツクヨミは指を鳴らす。灰輪の中心で、火と灰と月光が収束し、橙の灯が皿から抜け出して細長い火柱となった。それは空気に線を描き、庵の屋根を抜け出し、森の夜空に微かな軌跡を残す。


「祈りは、まだ終わらない——そう語る声はひどく静かで、それなのに胸骨を貫くほど重かった」月読の声が静域の名残を震わせる。


「火を継ぎ、灯を抱き、祈りを運べ」


 その言葉とともに、ツクヨミの輪郭が月光に溶け始める。銀髪の一筋が風に消え、夜衣が淡い靄に変わった。完全顕現は長くは保たない。代償が、朧環の冷たさが物語っていた。


 私は膝をつき、鏡を胸に抱えた。衣の裾に血が滲む。熱も痛みも、ただ遠い。


 火柱が夜空へ昇り切ると同時に、ツクヨミは霧散した。夜が戻り、遠い鈴音だけが名残のように震えた。


 そして、深い静寂。森の闇に残ったのは、壊れた剣の破片と、橙の軌跡を追う祈りの余熱だけだった。



 静域が溶けたあとの闇は、灯を奪うほど濃かった。砕けた赤銅片が地面で燐光を放ち、湿った土に触れてひそやかな蒸気を上げる。焦げ木と鉄の匂いがまだ鼻を刺し続けるのに、耳には自分の心臓の鼓動しか届かない。


 私は膝をついたまま動けずにいた。朧環は氷のように冷え、指先の血が引いていく。鏡は無光の金属に戻り、亀裂だけが白く浮かんでいる。


 巡礼者が灯皿を掲げた。火柱はすでに夜空へ旅立ち、皿の中には橙の種火が一粒残るばかり。それでも彼は安堵の吐息を漏らし、仮面の奥で目を伏せた。


「火は 次へ渡った」


 ユレインが筆を支えに立ち上がり、片膝をついたミリアムを見降ろす。彼の右手は震え、袖口の血が滴る。それでも声は落ち着いていた。


「剣を失った君は もう封陣を維持できない」


 ミリアムは砕けた柄を握った拳を震わせ、眼差しだけで私たちを射抜く。「異端の灯は いずれ消える 塔の影は長い」声はかすれ、けれど執念は折れていない。


 彼女は立ち上がり、補助巫女へ退却の印を示した。光素網は残滓を散らし、森の闇へ吸い込まれていく。白い符が燃え残り、灰となって地へ落ちた。


 足音と鎧布の擦れる音が遠ざかる。鈴の余韻だけが木霊し、やがて禁苑は再び夜の沈黙へ沈んだ。


 その静けさに油断したのか、視界が揺れ、私は前のめりに倒れそうになる。朧環の縁で切れた掌が痛むはずなのに、感覚が遠い。世界が水底のように揺れ、音が遠ざかる。


 倒れる寸前でユレインが支えに入った。血だらけの右手で肩を支えると、ひどく熱い。彼自身の熱か、それとも血の温度か分からない。


「休め 灯守り 君はよくやった」


 私は首を振ろうとしたが、まぶたが重く、朧環の鼓動が耳鳴りに変わる。遠くで少女の泣き声と老祈り手の祈りが交互に揺れた。


 巡礼者が灯皿を新しい布で包む。


「この灯は 旅灯に変わる 火の行き先は――」


 その言葉を最後に、意識が暗い膜に覆われた。


  *  *  *


 気づけば、頬に冷たい風が触れていた。朧環は胸の上で沈黙し、鏡と輪は互いに硬い冷えを分け合っている。庵の屋根越しに黒い空が割れ、東の地平が淡い紅を差していた。


 焚き口の前に座す巡礼者が、小さな灯を皿に戻すところだった。灯は橙というより、夜明け色の淡金に燃えている。


 ユレインが私へ視線を向け、眼鏡の砕けたフレーム越しに細く笑う。


「夜が明ける 次の祈りへ旅立つときだ」


 私は身体を起こし、深く息を吸った。血と焦げの匂いの奥、草と湿土の香りが戻ってきている。火柱の軌跡はもう夜空になく、代わりに東雲の空へ細い光が伸びていた。


 ミリアムたちの足跡は森の闇へ消えたまま、灯は皿の中に新たな芽を守っている。祈り手たちは灰輪の内で互いの無事を確かめ、少女は私を見つけると笑って手を振った。


 胸の中で冷たい輪が弱い鼓動を打つ。ツクヨミの気配は薄い。それでも私の掌には、まだ火の余熱が残っていた。


 旅は続く。灯を抱き、祈りを運び、月の影を裂く旅が。夜明けの朱が広がる空を見上げ、私は立ち上がる。


「行こう 火が呼んでる」


 巡礼者が灯を懐に収め、ユレインが筆を杖代わりに歩き出す。禁苑の木々を朝の光が透かし、折れた剣片が赤金に光った。


 遠くで鳥の声が跳ね、森が目覚める。祈跡庵の夜は終わり、灯は次の祈りへ向かう。輪の鼓動は遅いが確かで、歩みは夜明けへ重なっていた。

 

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