母親からの頼み事
ーー春馬と四つ子の母親は同じ病で亡くなったーー
それが示す答えはーー
私、仲川花梨はいつものように夕飯を食べていた。だけど何だかイライラしていた。
それが何故だかは分からない。だけどちょっとずつ自分の変化に気付いていた。今までは話したいとは思いもしなかった。
だけど最近は話してみたいと思うようになっていた。
やはりキッカケはあの出来事だろう。
その日、春馬は何も言わずに家を出た。
私はいつものように気にしないでおこうと思い勉強を始めた。
だけどやはり手に付かず、私は他の三人も連れて春馬を追いかけた。
駅まで行くと春馬が入っていくのが見えた。
私達も気づかれないように入ると同じ電車に乗った。
そうして着いたのは少し古めの一軒家だった。表札も上条となっている。
私達は壁の裏から様子を見ていた。
「ここ、もしかしたら春馬さんの家かもね」
私は
「じゃあ何で帰ってきたのよ? 追い出されたって言ってたわよね」
するとずっと黙っていた多緒が言う。
「もしかしたらお父様に呼び出されたんじゃないでしょうか?」
ピーンポーンと音が聞こえ、私達は一斉に春馬の方を見る。春馬はインターホンを押したようだった。
するとそれから直ぐに「親父、俺だよ」と言う。やはり春馬の家のようだ。
とその時私は足を滑らせて壁からでてしまった。
「花梨!?」
「それに、有香里に紗月、多緒まで!?」
と春馬は心底驚いた顔をしている。私は
「そうよ。アンタが黙って何処かに行くから気になって付いてきたのよ」
といつものように言う。
「おぉ、その声は花梨か、来たのか」
急な声にその場の全員が止まる。
どうやらその声はインターホンから出ているようだ。
春馬はそのことに気付くと
「親父、花梨達のこと知ってるのか?」
春馬のお父さんは
「あぁ、今日はその事について話そうと思っていたんだ。
花梨達も居るなら入りなさい」
私達は言われた通りに春馬と共に家に入った。
そして私達と春馬は居間に通された。今からはテレビのある部屋やダイニング、廊下へと繋がっているようで三方向にドアがある。
そしてドアの内包の壁に仏壇が置かれていて、青や黄色の花の真ん中からまだ白い煙が立ち上っていた。
春馬のお父さんは私達と机を挟んで仏壇側に座ると口を開いた。
「俺の妻と君たちのお母さんはどちらも足の癌が原因で亡くなったのは知ってるね。」
すると多緒は
「は、はい。おじ、じゃなくて父から聞いてます」
と言う。
母の死因が足の癌である事は多緒の言う通りおじさんから聞いて知っていた。
「俺の妻と君たちのお母さんは"姉妹"だったんだ」
「「「え、えええ」」」
これには春馬含めて5人で同時に声が出た。
「俺の妻、沙也加が妹で君たちのお母さん、優花がお姉さんだった」
「そして君たちのお母さんが亡くなった時にお医者さんに言われてたんや」
「もしかしたら沙也加さんも発症するかもしれないとな」
私達は何も言えなかった。私達の母と春馬の母が姉妹だった事への驚きが私達には大きかった。
「そして死ぬ間際に優花さんが言ったんや」
その時の病室は妹である沙也加や沙也加達の両親も来ていたが異様なほど静かだった。
そんな静寂を破るように優花さんは言った。
「ねぇ、在真さん、もしあなたの息子さん春馬君の勉強で困ったことがあったら、卓也さんに連絡すると言いわ。私の四人の可愛い娘達が教えて上げれると思うから」
「それから5年ほど経った今年、ついに沙也加も発症し、亡くなった。」
「勉強が得意ではなかった私は優花さんの言う通り卓也さんに連絡した。」
「それで私達が春馬さんの家庭教師になったと言う事ですか」
多緒は静かにそれでいて納得したように言う。
「あぁ、だから春馬にこれからも勉強を教えてやってくれ」
「そして春馬、あの時は何も言わずに仲川さんの所に行かせて悪かった」
「とてもあの時には言える状態じゃなくてなぁ」
春馬は
「いや、別に良いよ。怒ってたわけでもないし」
といつものように言った。
あれからも色々話してから春馬の家を後にして、家の近くまで帰ってきていた。有香里と紗月、多緒が前で話している。私は春馬と共に後に居た。私は春馬に言う。
「春馬、今日から私が歴史と地理を教えて上げる」
春馬は驚いた様子でこちらを見ると言う
「え、花梨急にどうした?」
「お母さんに頼まれたからよ」
そう、私達四人が教えてくれるはず。すなわち私達四人に春馬に教えてあげてほしいと頼まれたような物なのだ。
春馬は納得した顔をすると
「なら、頼む」
と言う。私ははははと笑いながら
「よし、頼まれた!」
と元気よく返事した。
今回は春馬と四つ子の母親関係について描いてみました。まさかの姉妹関係です。ただ調べた所、姉妹だと癌などが遺伝する場合があるようです。なので死因が同じ癌だったのはこの伏線だったと言う事です。そして本作が合計700pvを突破しました!本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。次回は水曜日の予定です