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短編話 記憶と気付き

今回は短編な話を2つお送りします

【30年前……】


「今日は避難訓練があります」


 朝のホームルームで担任の先生が告げる。


「具体的には地震の想定での訓練だ」


「ところでお前らは阪神淡路大震災は知ってるか?」


 すると教室のあちらこちら、四人と俺も含めて手が上がる。


「ある程度の人は知っているようだな」


「まぁ簡単に言うと、戦後で一番大きいと言われた地震だ」


「実際、建物が倒れたり、駅が押しつぶされたりしたからな」


 先生は思い出すように言う。


「まぁ、と言う事だから覚えといてくれ」



 そして3時間目に訓練は行われた。


 と言っても一旦机の下に入って、校庭に避難するだけだったが、これがいざという時に役立つのだろう。


 そして帰った俺と四人はおじさんに当時のことを聞いてみた。


「もう30年も経ったんだな……」


「その地震の時、僕は自分の部屋に閉じ込められかけたんだ」


「「「「「えっ」」」」」


「もっと言うと本棚の下敷きにもなりかけたんだがな」


「「「「「ええっ」」」」」


「まぁ、机の下に入ったから本棚の直撃は免れたがな」


「「「「「ふぅ」」」」」


「ただドアは歪んで開かなくなってな、何とか開いた窓から外に出て、親父、四人からみればおじいちゃんに開けて貰って家に入れたんだ」


「まぁ、家中の家具が倒れていて、壁も一部剥がれてて、近くの駅もホームに押しつぶされていたんだがな」


「「「「「えええ」」」」」


 あまりに生々しく語られる当時の惨状に俺達は怖さを覚えていた。


「まぁ今日の訓練の事を忘れないようにする事が大事だな」


「「「「「分かりました」」」」」


 こうして俺と四人は改めて地震の怖さを知った。



【熱はツライ】


 居候生活も5ヶ月目に突入した土曜日、俺は朝からクラクラとしていた。


(熱でもあるのかな)


 そう思いながらも布団から出て立ち上がった。



「おはよう〜」


「おっはようございます!春馬さん!」


 有香里がいつものハイテンションで挨拶してくる。


「本当お前のその元気は朝でも健在なのか」


「でっへへ」


「って、春馬さん顔色悪いですけど大丈夫ですか?」


 有香里が心配そうに俺の顔を覗き込む。


「あぁ、ただ朝からしんどくてな」


 ゴホッゴホッ


 俺は口を手で塞ぎながら咳をする。


「熱測ってみますか?」


「あぁそうするよ」


 すると有香里はスタスタと体温計を取ってきたが……それを見て思わず苦笑した。


「水銀体温計っていつの時代だよ」


 有香里の手に握られていたのは、デジタル体温計が普及した今じゃ滅多と見かけない昭和臭漂う水銀体温計だった。(筆者も祖母の家でしか見たことは無いが……)


 おばあちゃんに使い方を聞いたことがあったので、俺は体温計を有香里から受け取ると水銀を35℃以下に下げていき、汗を拭いた脇に5分から10分挟み続ける。


~10分後~


 俺は体温計の示す体温に驚くより先に納得してしまった。


38.5


 これだけ熱があればしんどくもなるしクラクラもするだろう。


「熱はどうですか?」


有香里が様子を見に来る


「38度!?」


有香里が驚きの表情を見せる


「あぁ、今日は部屋で休ませてもらうよ」


「分かりました」



「おはよう」


「おはようございます」


私、仲川有香里は春馬さんが部屋に戻って数分、居間で座っていた。


その時多緖と花梨がまだ眠そうな目で入ってきた。


「おはよう」


私は少し静かめに言う


「どうかしましたか?有香里」


多緖が心配そうに聞いてくる


「春馬さんが熱で寝込んでるの」 


「え、本当なの!?」


「本当か」


多緖と花梨がスッカリ目が覚めた様子で聞いてくる


「うん」


私が返事をするのと同時に眠たそうな目を擦りながら紗月が入ってきた



~その頃春馬は~ 


ハークション!


まるで"大魔王"でも出てきそうなほど大きなクシャミをした。


「しんどい……」


風邪なんて何年ぶりだろうか


俺は再び氷枕に頭を乗せる


おでこには冷えピタが貼ってある


これらは全て有香里がしてくれたのだ


「こりゃ今日一日動けなさそうだ」



あれから時間は過ぎて午後2時を過ぎた頃、私のスマホが振動する


「有香里誰から?」


紗月が聞いてくる


「瑠花ちゃんからだ」


私はトークアプリを開く


『有香里ちゃん達は何してる?』


私は少し迷った後


『ゆっくりしてます、春馬さんが風邪引いちゃってて……』


『大丈夫なの?』


『うん、今は熱も下がってきてるし』


『良かったらお見舞いに行っても良いかな?』


『分かった』


私はスマホから顔を上げると三人に言う


「瑠花ちゃん、春馬さんの事かなり心配してて、今からお見舞いに来るって」


「今からですか?」


多緖が少し驚いたように言う。


「大丈夫みたい」



それから30分程で瑠花ちゃんは来た。


春馬さんの様子を見てから少し話した。



私、美河瑠花は春馬君が風邪を引いたと言うのでお見舞いに来ていた。


今は熱が落ち着いているようで寝ていた。


「じゃ、私そろそろ帰るね」


私は四人に告げる。


「分かりました」


多緖ちゃんがペコリと頭を下げる


実に丁寧な子だなと私は思う


「じゃ、私らもそろそろ部屋に戻るか」


花梨ちゃんも立ち上がる


私はドアを開けて部屋を出る。


後では四人が各自の部屋に戻っていく


その様子を見ながら階段を降りて靴を履き替え……ここで動きを止める


「もう少し会ってても良いかな?」


私は告白をして断られた


だけど絶交した訳でもないし、幼馴染として心配するのも可笑しくは無いだろう


再び階段を登り、部屋のドアを開ける


私は息を呑んだ


さっき戻ったはずの四人がまだ部屋に居たのだ


「みんな考えることは一緒だね」


有香里ちゃんがどこか嬉しそうに言う


事の経緯はこうだった



一番最後に部屋を出た私、仲川有香里が、自分の部屋の前で立ち止まった後、再び春馬さんの部屋に行く。


すると直ぐにドアが開いて多緖が入ってくる


「あ、有香里!?」


「多緖、なんで?」


「なんでって春馬さんの事が心配で」


ガチャン


再びドアが開いて、何の偶然か花梨と紗月が同時に入ってくる


「アンタたち2人が何でいるのよ」


「それはこっちのセリフだよ」


私は反論する


ガチャン


またドアが開いて今度は瑠花ちゃんが入ってきた



と言う経緯があったのだ



私はフット笑うと布団から出ていた春馬さんの手の親指を持つ


「おぉ」


意味を理解したのか有香里ちゃんが人差し指を握る


続けて花梨ちゃんが中指、紗月ちゃんが薬指、多緖ちゃんが小指を握る


「私達四人、それに瑠花ちゃんはあなたが元気になるのを待っています」


私達"5人"はお互いを見合う


みんな春馬君を想う気持ちは同じなのだ


うぐぐ


春馬が起きる


「お前らがうるさくて寝れねぇ」


「すまん」「ごっめん」「ごめん」「すみません」「ごめんね」


口々に謝る声は明るくうれしそうだった



それから私達はしばらく春馬君の様子を見てから部屋を出る事にした


最後に私、仲川有香里が出たあと、瑠花ちゃんが……こない?


私はみんなを引き止めて小さく開けたドアから室内を見る


すると瑠花ちゃんが体を春馬に近づけていく


チュッ


音こそ聞こえないもののキスしたのは明らかだった。


「「「「あああっ」」」」


私達四人は声にならない声を上げる


「私もあの四つ子に負けないように、春馬君に好きになってもらえるように頑張るから!」


瑠花の宣戦布告とも言える言葉に私達四人は同様する


「どうやら私達の敵は瑠花ちゃんのようね」


最後までお読み頂きありがとうございます

今回は1つの話としては投稿しずらい二本を一つにしてみました!今後も偶にはするかもです。

次回もお楽しみに!

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