気持ちを伝えるのって難しい
今回はついにみんなの気持ちが動き出すーー
私、仲川紗月は決意を決めると立ち上がる
「紗月どうしたの?」
有香里が不思議そうにこちらを見ている
「わ、私春馬の事が好き」
いつもの私からは考えられないくらい本気の声で言った
「さ、紗月……」
花梨が驚きの目で私を見ている
恥ずかしい。そんな気持ちがよぎる
だけど後悔は無かった
「私も春馬さんの事……」
有香里も立ち上がるも途中で言葉を濁す
「有香里……」
「私も春馬さんの事が好き」
「だけど……紗月とはライバルになるってことだよね」
私は有香里を見る
「ううん、ライバルじゃないよ」
「へ?」
「同じ人が好きなら"仲間"としてお互いで助け合って頑張ってたら良い。最終的に決めるのは春馬だから」
「少なくとも私はライバルだなんて思ってない」
同じ姉妹、同じ"四つ子"なんだから私はライバルと言うより同じ人が好きで、同じように頑張る仲間。私はそう思っていた。
「好き…か」
私、仲川花梨は三人が居なくなって、静かになった今で一人机に突っ伏していた
分かっていた事だったが、有香里と紗月も春馬の事が好き、と言う事は私もライバル、仲間となる
最初は私が春馬の事を好きだということ事を認めたくは無かった。だけど春馬が寝込んだあの夜、私は自分の恋心を実感した。
「はぁ」
私は深く溜息をつく
さっき、紗月と有香里が好きだと言った時に私は言えなかった。
まだ迷いがあるのかもしれない。このまま私は春馬を好きになってしまって良いのかと。
視界がぼやけてくる
眠たい。そろそろ部屋に戻ろうか
机に突っ伏したまま私は眠りに落ちた
俺、上条春馬はトイレに一階に降りていて、戻ろうとした時に居間の電気が付いている事に気付いた
小さく襖を開ける
すると居間の机で誰かが寝落ちしているようだった
何で誰かなのかと言うと紙を下ろしているから分からないのだ。
有香里ならうさみみリボン、花梨ならツインテールがあるがそれがないと本当に分からない
「仕方ないか」
俺は居間に入ると端にあったタオルをかけてあげる
すると小さく目を開けた
その瞬間、顔がカァーと赤くなる
「み、見るなー」
「か、花梨なのか?」
「そうに決まってるでしょ」
「いや髪を伸ばしてるから分からなくてな」
俺は言い訳じみた事言う
「アンタの前だと髪下ろしたこと無かったけ?」
「あぁ、お風呂後も全く合わないしな」
うーん、髪を下ろした花梨も意外に美人で可愛い………
「だから……こっちをジロジロ見るなー」
花梨が俺に拳を突き出してくる
「や、やめろ」
その時、花梨が空振りしてバランスを崩す
そのまま俺は花梨に押し倒されるような格好になる
(ち、近い)
目の前には花梨の真っ赤に染まった顔があり、唇もあと数センチでくっついてしまいそうだ。
物凄く心臓がバクバクしている
「離れろー」
俺は花梨の通算3度目くらいの腹パンで気絶した
「春馬、大丈夫か」
俺はゆっくりと目を開ける
目の前にはいつもの天井
ここはいつもの部屋のようだ
「気が付いたか?」
花梨がらしくもなく優しい声で言う
「運んできてくれたのか」
「あぁ、悪かったと思ってな」
花梨にしては珍しい
「にしても腹パンは無いだろ」
「悪い悪いつい恥ずかしくて……」
花梨が照れくさそうに笑いながら言う
にしても花梨は本当に力持ちだな
小柄とはいえ高校生男子一人を2階まで運ぶとは
まぁその力で何回気絶させられたか分かったもんじゃないが……何処かの"二女"みたいに"睡眠薬で眠られる"方がまだ痛みはないからマシな気がするが……
「なぁ、お前は気持ちとか、感じた事とかを言葉にするのって得意か?」
「いや、苦手だな」
「まず人と話すのが苦手だな」
俺は失笑する
「そういや家の前で会った時も、ビクビクしながら話してたな」
「その通りです……」
「まぁ、かく言う私も気持ちとかを言葉にするのは苦手だし、難しいからな」
花梨が吹っ切れたように笑いながら言う
「それじゃ、そろそろ寝るな」
花梨が立ち上がる
「おう」
「それと……」
花梨が俺の体をまたぐようにしゃがむと俺の唇にキスをする
「アンタの事が好き」
赤くなった顔でそう告げると花梨は部屋を出て行った
俺は一瞬何が起きたか分からなかった
襖の外では花梨が真っ赤な顔を両手で隠して立っていた
「い、言ってしまった……」
でも花梨に後悔は無かった
そして階段からひょっこりと紗月が顔を覗かせていて、悔しそうでそれでいて嬉しそうな顔をしていた
「で、何で瑠花が居るんだ?」
「お邪魔してます」
私、美河瑠花は幼馴染の上条春馬君の居候している家に来ていた
そして春馬君は予想通り、意味がわからないと言う顔をしている
「今日は春馬君を半日お借りしますね」
「は、はぁぁ」
こうして瑠花は春馬君と半日デートをする事になった
「それじゃ行ってきますね」
「「「「いってらっしゃい」」」」
私は春馬君の家庭教師だと言う四人に目配せをする
そう今日のお出かけは四人が勧めてくれたのだ。
私と春馬は家を出た
※具体的な内容は番外編として執筆予定です
私と春馬は色々周って最寄り駅に戻ってきた
「もう一箇所行っていいかな?」
「どこに行くんだ?」
「こっちこっち」
私と春馬は坂を登って、少し街外れな場所に向かう
「ここって」
「そうお寺、ここ前にも二人できた事あるでしょ」
「そうだな、確か街中を歩いてたらいつの間にかここまで来ちゃったんだよな」
「そう」
私と春馬はお寺の中に入っていった
俺は瑠花に連れられてお寺へとやってきていた
「何も咲いてないぞ」
「確かにあの時は紫陽花が綺麗に咲いてて、さすがあじさい寺って言われるだけある、って言ったよね」
「だけど紫陽花が咲いてなくても緑が綺麗だと思わない?」
「ちょっと話良いかな?」
瑠花から急に言われ驚きながら答える
「私さ、昔から感情とか気持ちを"言葉にするのが苦手"で」
「他の友達と話してても相槌したり、話すの話すのは話すんだけどね」
「でも春馬にだけはどんな事も話せたし、冗談だって言い合えた」
遠くを見ていた瑠花が正面に向き直る
「瑠花、春馬の事好きです」
「は、えええっ」
「あまり喋らなくて可愛い所とかいじりがいあるし、からかいがいある所も全部」
「まぁ今更言っても遅いのは分かってるけどね」
「瑠花……」
俺は何と返すべきか迷った
その時昨日の花梨の顔が思い浮かぶ
『まぁ、かく言う私も気持ちとかを言葉にするのは苦手だし、難しいからな』
『アンタの事が好き』
更に有香里や紗月、多緖の顔が思い浮かぶ
そして俺は一つの結論を出した
「瑠花、すまない」
「何故かアイツら四人の顔が思い浮かんだんだ」
「アイツらを守ってあげたい、幸せにしてやりたい」
「何故だか無性に思った。これが恋愛的な物なのか、ただのお人好しなのかは分からないが……」
「知ってたよ」
瑠花が少し寂しそうに言う
「春馬君があの四人の事を大切に思っていて……好きだって事」
「もっと瑠花が早く告白するべきだったんだろうけど……言葉にするのって難しいよ」
「だけどあの四人が後押ししてくりれたの」
「気持ちだけは伝えた方が良いって」
「今日のお出かけを考えてくれたのもあの四人なの」
「そうなのか」
俺は何となく最近読んだ漫画を思い出した
そいつも今の俺と同じで告白してきたやつを振った
今の俺と同じように"三姉妹"が思い浮かんだから
アイツもきっとこんな気持ちだったんだろうな
「でもその気持ちってさ、お人好しなんかじゃなくて恋なんじゃないの?」
「何でそんなの分かるんだよ」
「まぁ女の勘かな?」
「なんだよそれ」
俺と瑠花は同時に笑った
こうして俺と瑠花の半日お出かけが終わった
次の日
「今日は転校生を紹介する」
そしてその転校生は想像を絶する人だった
最後までお読み頂きありがとうございます
今回は予定を変更して先に更新しました
次回はロリ幼馴染を更新予定です。
理由は前回かなり中途半端に終わった為です
そして今回は花梨と瑠花が気持ちを伝えました!
さらに春馬自身も気持ちに気付く……
次回以降もよろしくお願いします
良かったと言う人はリアクションや感想も良ければ……
では次回!お楽しみに




