新学期!席替え!
今回からは三学期編です!
俺、上条春馬は制服のブレザーに袖を通す。
今日から三学期が始まる……のだが俺はすでに気が重かった。
どうせ今学期も去年みたいに有香里の机を無理やり掃除させたり、持ちすぎな多緖を手伝ったり……アイツら四人の世話を焼くことになるのだろう。
でも、なぜだか嫌な気はしなかった。
むしろそれが当たり前で、日常になっていた。アイツら四人と過ごす事が。
「行くか」
俺は部屋を出る。
下に降りると既に四人が玄関に居た。
四人とも二学期末と変わらず冬の制服だが、紗月だけタイツも履いていた。
後から有香里に聞いたが紗月は意外と寒がりでもあるらしい。
「春馬さん来たー」
「春馬、遅いじゃない」
「遅い」
「確かにちょっとギリギリな気がします」
「悪かったな」
俺は四人に代わる代わる言われ、苦笑しながら言う。
靴紐を直して立ち上がろうと上を向く。
すると不意に花梨と目が合った。
一瞬止まったが直ぐに目をそらす
(なんだか花梨の頰が赤かったような)
その時俺は昨日の夜の事を思い出す
~昨晩~
体調が悪かった俺は部屋で横になっていた。
かなりうとうとしていた時に花梨が突拍子もなく言い出す
「あの時、一つ嘘をついたの」
(えっ)
「一つって言ったけど、本当はもう一つあるの」
「お医者さんになりたい」
「まぁ、私なんかで務まるのか分からないけど」
「でも私と……私の家庭教師の生徒であり、私の好きな人みたいに病気で親を亡くして悲しむ子を少なくしたい」
俺は驚いき、そして共感した。
去年の春も終わりかけという頃、病院を転々としやっと手術をしてもらえた病院の医者が俺と親父に告げた。
「覚悟しといておいてください」
(嘘だろ……)
俺の心の中で悲しみと悔しみが溢れてくる
となりに座る親父も辛そうな顔をしていた。
そして医者の言った通り母さんは帰らぬ人となった。
(実話)
死因も姉と同じ足の癌だ。
親父から母さんの話を聞いた時、俺は思った。
母は自分がいつか、姉と同じ遺伝型の癌で死ぬことを分かっていたのでは無いか。
そう思った。
俺は回想から戻り部屋の少し古びた壁を見つめる
花梨の夢は俺も共感するし、出来ることならしたい事だった。
そんな事を思っていると、背中の方で花梨がこちらに体を向けた。
急いで目をつぶった俺の頰に柔らかな感触が伝わってくる
「好きよ」
(はっ……)
(マジかよ)
「もし私が、春馬さんの事が好きだって言ったら付き合ってくれまふか?」
この言葉と同時に有香里の顔が浮かぶ
俺は四人中、二人に告白されてしまったのだ。
(これ、もしかしたら本当に……)
もしも紗月と多緖にも告白されたら、本当に有香里から借りた漫画と同じ状況になってしまう。
("勉強ができない"わけでも"巫女"でも"兄弟"でも"許嫁"で……まぁ許嫁みたいなものだが)
(本当になっちまうのか)
俺は目を瞑りながらも寝れそうには無かった
そうこうしていると花梨は立ち上がって部屋を出て行った。
(絶対寝れねぇ)
そしていまに至る
(まぁ、取り敢えず新学期をまずは頑張るか)
ガラガラ
有香里がドアを開ける
「いってらっしゃい」
おじさんが手を振ってくれている
「「「「行ってきます」」」」
四人は同時に言うと歩き出す
「行ってきます」
俺も言うと四人を追いかける
こうして俺達の3学期が始まった
(ようやくいつもの光景だ)
前の席で有香里が突っ伏し、斜め後ろでは紗月が眼鏡をかけて読書に熱中し、花梨は友達としゃべり、多緖は静かに席で教科書を整理する
俺は一息ついて座っていると
ガタン
教室のドアが勢い良く開いて先生が入ってくる
「そろそろ挨拶するでー座れ」
普段家ではおじさんや四人が関西弁を使わないので忘れがちだがここは関西だ。先生や他の子は関西弁を使いまくっている
「「「おはようございます」」」
「着席」
教室の全員が座る
「んじゃあ、まぁ皆の顔をまた見れてよかったわ」
先生は周りを一瞥する
「よし。席替えしよか」
「「「えっ」」」
「席替えあるんですか」
教卓の前に座るツインサイドアップの子が言う
「まぁ、担任の自由だから無いクラスもあるけどうちはしよかなって」
「みんなもしたいやんな」
「「「はい」」」
教室の半数くらい生徒から声が上がる
「じゃあしよか」
そしてクラス全員でくじを引き、書かれた数字で席替えをした。
(俺は一つ隣に移動するだけか)
机と椅子を一つ横にずらすだけの簡単な作業をする
(主人公席は継続か)
窓から一つ離れただけで席から見える景色はさほど変わらない
はてさて隣は誰になるのだろうか
今までは休みがちな子でほぼ居ないと言っても過言では無かったが……
「隣失礼しまーす」
「はい。って有香里!?」
「うししし、春馬さん驚きましたか?」
有香里が悪戯な笑みを浮かべながら言う
「ああ、驚いたよ」
「でも有香里、隣の席になったからには机をぐちゃぐちゃにはさせないからな」
「そ、そこはお手柔らかに……」
有香里が><の表情になる
(参った、つい最近告白された女子が隣になるって……どんな顔してりゃ良いんだよ)
「よいしょ」
聞き覚えのある静かな声が聞こえて俺は振り返る
「後ろは紗月かよ」
なんと真後ろは紗月だったのだ
「私はここよ」
反対から声が聞こえ、俺は通路側に振り返る
「花梨もか」
花梨は元々紗月の席だった場所になったようだ
何と言う運だろうか
周りを知ってる女子に囲まれると言うのは
ちなみに多緖は俺より二つ前の席になったようだ。
まぁなんだかんだ四人とも席が近い場所になったようだ。
(うわー凄くドキドキするー)
私、仲川有香里は口では明るく振る舞っているが内心では物凄くドキドキしていた。
それもそのはず、隣なったのが告白的な事をした異性なのだから。
(まぁ、他の3人よりリード出来るかも……)
同じ頃紗月は平静を装って読書をしていたが、全く集中出来ないでいた。
(なぜ、こんなにドキドキするんでしょう)
読書をしながらも、視線は前にある彼の背中に向けられていた。
(やはり、そうなのでしょうか)
紗月は自分の気持ちと向き合おうとしていた。
通路を挟んで反対の花梨も考えていた
(ぐぬー隣とはいえ通路を挟むから有香里達の方が有利じゃない)
(いいわ。絶対に勝ってやるんだから)
こうして四つ子と春馬の三学期が始まった。
最後までお読み頂きありがとうございます
新学期と言えば席替え!と言う事でやってみました
はてさて学校が始まった事で春馬達の関係はどのように変わるのでしょうか?
次回は今作を2回連続更新の予定です。
次回もお楽しみに!




